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港湾における取り組み状況
 そうした中で、港湾におけるリサイクル拠点の形成は、全国で様々な取り組みが行われようとしています。
 ひとつは港湾には限定していませんが、地域におけるリサイクル拠点の形成施策としてエコタウン事業があります。九州では、北九州港響灘地区の北九州エコタウンが全国的に先進的な取り組みを行っており、国内的にも、世界的にも注目を集めていくと思われます。
 エコタウン事業は経済産業省の施策です。図3に全国のエコタウンの取り組み状況が出ています。九州では北九州エコタウンが5つのリサイクル施設で承認され、他に大牟田でRDF(ごみ固形化燃料)発電施設、水俣でびんのリユースが出てきているといった形です。
 
図3 エコタウン事業の承認地域マップ
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 ふたつ目には、これは国土交通省港湾局の静脈物流拠点整備計画に対して、昨年8月の時点で手を挙げている港湾で、この時点では、全国で31箇所あります。
 3つ目は、離島における廃棄物等の処理の問題があります。離島における廃棄物への対応というのは、現状では後回しになっており、極論を言えば、日本の離島は廃棄物で年々埋もれつつあるという状態になっています。これは非常に深刻な事態だと思います。
 離島における廃棄物等の処理、リサイクル、輸送の問題については、新潟の佐渡(資料1)のほか、東京都が伊豆七島で検討しています。
 
資料1 佐渡での取り組み
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 島嶼(しょ)県である沖縄の場合も深刻で、主要な対象は使用済み自動車ですが、国が8割補助、県が1割補助で、1割ぐらいが地元負担といった仕組みで、まず本島に船舶で持ってくるということを昨年度に実施しています。ただ、これも今回単発で、今後もずっとそうするということではありません。また、長崎県の離島でも、今年から研究を始めようというところです。
 それとEMMT(エコマテリアル海上輸送)研究会というのがあり、これは、鶴丸海運、崎永海運など、九州からも参加されており、非常に熱心です。神戸が中心で内航海運、その他関係の方々を集めて、最初は主に廃家電の海上輸送ということで、九州も含めて全国的にいろんなところで実証実験をやられたということを聞いています。始められて3年経とうかというところですが、事業化するにはきついという話を聞いております。
 
九州地域港湾の「リサイクルポート」としてのポテンシャル
 以上が全国的な動向ですが、私どもは、全国の港でのリサイクル、海上輸送ということをお手伝いさせて頂いており、そういう目から見て、九州での可能性を見てみますと、九州は港でのリサイクルや海上輸送という点で大きなポテンシャルがあるなというのが基本的な認識です。
 これはひとつには北九州エコタウンという、確かに先駆的な取り組みが展開されていることが理由です。エコタウン事業は全国的にいろいろな取り組みがありますが、ペットボトル、家電、OA、自動車、蛍光管といったような品目の多様さ、あるいは行政のリードと民間の積極的な動き、また研究機能も集積させようとしている。そういった総合性で北九州エコタウンというのは先進的ですし、今後の広がりも期待できると思います。
 また、港湾関係企業の積極性という点もあります。以前本省でやったアンケート調査でも、西日本の港湾関係企業の方が熱心な回答をされています。もともと歴史的に港が発達し、内航海運も東北や北海道と比べると非常に発達しているため、港湾関係企業、内航海運業者が、今後求められることとして、あるいはビジネスとしてリサイクル資源や廃棄物等の取扱いに強い関心をもち、実際、取り組みを始められているのだと思います。
 
表2 船舶輸送による廃家電等の輸送の可能性
資料:(財)港湾空間高度化環境研究センター
 
 私ども98年に鹿児島県と宮崎県を対象に、九州南部から北九州や大阪に、例えば廃家電を持っていく可能性があるか、あるいは離島ではどうかと、料金その他の面を調査をさせていただきました。
 当時別の調査で、100km離れていれば海上輸送は可能だというのがありましたが、そう楽観的な結論ではありませんでした(表2)。距離で言って、トラックとJR貨物で概ね300km、船ならだいたい500kmが必要な距離です。トラックやJR貨物と競争して海上輸送をするためには、幾つかの促進策が必要とのことでした。ただし、離島の場合はいやでも船を使わなければならないし、九州には離島が長崎、鹿児島、沖縄と控えていますので、離島ならばリサイクルに関わる海上輸送の可能性があるというのがこの時の結論です。
 
資料2 博多港でのオークション
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 この調査の際に、幾つかの港湾関係企業、内航海運業者の方々に直接お会いしましたが、非常に熱心でした。これからの港運の事業として廃棄物輸送に取り組みたい、あるいはどうやって取り組むんだと、非常に熱心、前向きであり、関係者の方々の積極性も九州での可能性の一端を示していると思います。
 次に、港湾での中古機械の展示・商談、海上輸送(輸出)があります(資料2)。
 すでに、多くの港で輸出コンテナ貨物の中身をみれば、中古タイヤ、中古の機械や部品があります。我々、実は港でこういった中古機械の集積と出荷の拠点を作ろうということを随分前から提案しております。実際、名古屋とか神戸港でも一部実施されていますし、博多港でもクレーン等の建設機械をオークションをして、商談成立と同時に港から出荷する。このような取り組みが行われています。これなどまさに港の空間、役割を活用した上でのリサイクル、リユースのビジネスということで、今後、注目される分野だと思います。







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