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Kyushu Transport Colloquium
第2回 九州運輸コロキアム
九州地域における
循環貢献型港湾の可能性・条件等について
(株)地域開発研究所 主任研究員 栃木 晃氏
 
日時・・・平成14年4月26日(金) 15時30分〜
場所・・・ホテルセントラーザ博多(福岡市博多区)
主催・・・(財)九州運輸振興センター
後援・・・九州運輸局、JR九州
 
循環型社会構築の流れ
 環境と経済社会というテーマについてですが、1970年代は、70年に「公害国会」があったように、公害間題というとらえ方であったと思います。その後、特に1990年代に入って、「地球環境問題」「循環型社会の形成」等をキーワードとして対応がとられ始め、2000年代に入り、国の施策でも民間のどの産業分野においても、あるいはどの地域においても、循環型社会の形成や環境を考えよという法的枠組み(図1)が出来上がりつつあります。
 基本法としての「環境基本法」は93年に施行され、さらに01年1月に「循環型社会形成推進基本法」という基本的枠組みができ、また従前からあった法の改正なども含めて同年4月に「廃棄物処理法」が改正され完全施行されました。
 そういった基本法、一般的な枠組みと同時に、具体的にリサイクルを促進させるために「資源有効利用促進法」が制定される。さらに、個別的・具体的なリサイクルの促進施策として「容器包装リサイクル法」、また、昨年春から順次「家電リサイクル法」、「食品リサイクル法」、「建設リサイクル法」が施行され、この後にも使用済み自動車、さらに蛍光管とか、電池とか、OA機器も法的な規制の対象になってくるであろうと思います。
 
図1 循環型社会形成の推進のための法体系
(拡大画面:231KB)
 
 恐らく今から5年か10年か経って現在を振り返った時に、「あの頃はまだ牧歌的なリサイクルだったな」と感じるでしょう。10年経たないうちに、生活・産業上のあらゆることに、まず「ごみを出さない」、出したものについては「リサイクル、あるいはリユースを必ず考える」というのが基本的なスタイルになる時代が来ることは確実です。
 よく「環境の時代」といわれるのですが私なりに理解するところでは、「民間であれ行政であれあらゆる分野、あらゆる地域、あらゆる局面において事業を進めるときに、環境のことを優先的に考える」というのが、その意味だと思います。
 例えば、お祭りがありますね。お祭りは、非日常的なエネルギーの爆発であり、ごみ云々よりも、お祭りの遂行に力が注がれてきました。これからもお祭りは非日常的なエネルギーは爆発であるけれど、ごみを出さない、分別する、ということが主催者や参加者にとり優先的、重要な事項になる、そのような時代になって行くと思います。
 
循環型社会における港湾に求められる役割
 そうした中で、循環型社会、もしくは環境の時代に港湾はどういう役割を果たすことが出来るのか、あるいはしなければならないのかということを考えました。まず、リサイクルにおける地域の評価(表1)にあるように、リサイクルやそのための輸送という点で、港湾(臨海部)、内陸部、山間部と比較した時に、港湾の特性がどこにあるのか整理しました。
 
表1 リサイクルにおける地域の評価
  臨海部 内陸部(平野) 内陸部(山間)
広大な土地の確保
土地の安さ
市街地からの遠隔性
物流インフラに近接/港湾
物流インフラに近接/道路
埋立用材としての活用
コア事業所の立地
注:
コア事業所とは、発電所、セメント工場、製鉄所等のリサイクルの核となる事業所
 
 ひとつには、港湾というのは内陸部の土地と比べて、非常に広い土地が確保できる点があげられます。
 また、土地の広さに加えて、港湾は市街地と比べれば安い土地だと言えます。
 市街地からの遠隔性では、港はもともと市街地から空間的に離れているという特性がある。
 さらに、物流という点からは、港湾は物を運ぶために整備されており、海上貨物を取り扱う岸壁と関連用地、さらに臨港道路と、それに続く内陸部へ向かうしっかりした道路が必ずついています。港湾と道路の両方のインフラが備わってるというのは港湾の特徴でしょう。
 リサイクルした時に、最後にどうしても残る残さがありますが、それについても港湾では、埋立用材として活用することもできる。
 最後に、リサイクル施設というのは作れば出来るというものもありますが、石炭、火力発電所とか、セメント工場とか、あるいは製鉄所、製紙工場など、従前より港湾に隣接して立地している工場があります。これらは、従来は公害を出すと言われた時代もありましたが、今は逆に、例えばセメント工場といったら、産業廃棄物を無害で最後まで処理してくれる極めて優秀なリサイクル工場で、千何百度の高温を使うので、原料として廃タイヤ、木屑等を処理できます。最近ですと、狂牛病の牛までセメント工場で処分するということが行われています。しかもダイオキシンは問題になりません。
 あるいは製鉄所では、最近、廃プラをNKKや新日鉄が有料で引き受けて、コークスの替わりに還元剤として廃プラを入れるという事業を展開しています。製紙では、いわゆる古紙リサイクルということで、新聞紙、その他の紙をリサイクルする。
 このように臨海部の工場が、リサイクルの核、つまりコア事業所になるという動きが出てきた。港、臨海部にはそういう工場が立地しているので、リサイクルがよりやりやすい空間として、活用できるポテンシャルがあります。
 事実、この間も政府の施策としてエコタウン事業があり、九州では北九州エコタウンが先進事業とし注目されているように、ほとんどは港、臨海部でやろうとしている。そういった形で、港がリサイクル、リユースに適した空間として注目されてきたと認識しています。
 ちなみに山間部も、ある程度土地が広かったり、安かったり、市街地から離れているとか、場所によっては道路もあります。しかし、人目に触れにくいことによる不法投棄の問題や水源汚染の問題から、出来れば山間部は避けたいというところです。
 これは山形県の酒田市の商工会議所の専務理事のキャッチフレーズですが、「ゴミを山で捨てるか、港で活かすか、そういう選択なんだ」と。港ではいろいろリサイクルもできるし、特に酒田は黒龍江省等に中古品を輸出している所があり、港でそういったリサイクル、リユースも出来ると強調されていました。
 
図2 リサイクルポートのイメージ
(拡大画面:45KB)
 
 ここに97年に作成した簡単な図(図2)を示します。まず、臨海工場エリアのコア事業所ということで、セメントとか、製鉄所とか、製紙とか、それらと他の事業所で、ゴミというか、まだ廃棄物と言っていいかどうか分からない、そういったものをお互いに原料、原材料として使いあう(国連大学の「ゼロエミッション」の考え方)、あるいはその横にリサイクル施設があったり、廃棄物処理施設がある。さらにリサイクル品については、港の中で一部活用したり、岸壁の埋め込み材等により一部活用しようということを表現しています。同時に、港は地域社会にありますから、地域社会の中で発生する廃棄物等のリサイクルや、必要なエネルギーのやり取りを港湾で引き受けるということを示しています。また、国内外に廃棄物などや、リサイクル品を船舶で海上輸送でしていこうじゃないか、ということを概念的に表現しています。現在、国土交通省で展開されている静脈物流拠点港湾(リサイクルポート)の施策も、ほぼこれに沿った形で展開されると思います。
 







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