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私はこう考える【イラク戦争について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2003/03/21 読売新聞朝刊
イラク戦争開始 その時、政府は・・・ 小泉首相、懸命の「米国支持」説明
 
 米国がイラクへの武力攻撃を開始した二十日、日本政府は小泉首相の支持表明=写真=、国内安全策などの対処方針決定と、準備した段取りに従って対応した。ただ、米国からの事前通報が開戦間近で、しかも外務省内に「開戦は二十日夜以降」との予測もあったため、開戦直後は慌ただしい動きが目立った。
◆「自分の言葉」こだわり
 午前十一時半ごろ、首相官邸五階の首相執務室。小泉首相と対座し、協議していた竹内外務次官の携帯電話が鳴った。
 「今から数分後に攻撃する。小泉首相にそう伝えてほしい」
 電話の相手はアーミテージ米国務副長官だった。
 小泉首相は、誰に語るともなくつぶやいた。
 「この連絡を国民にきちんと伝えないと」
 イラクへの査察継続をめぐり米英と仏独露の対立が顕在化して以降、首相や首相周辺は国内世論対策に気を使った。今月十日には、飯島勲首相秘書官が官僚の用意した開戦直後の段取りにクレームをつけた。当初案は「安全保障会議→臨時閣議→首相記者会見」という流れとなっていたが、飯島氏は順番を入れ替えた。
 「開戦後すぐに首相の記者会見だ。安保会議や閣議の発表は官房長官にやらせればいい」
 首相自身も、「自分の言葉」にこだわった。首相は開戦以前に外交ブレーンの岡本行夫内閣官房参与にこう打ち明けた。
 「難しい決断を国民にわかってもらうためには、こざかしい論理や手続き論をかざすのではなく、自分の信念を正直に自分の言葉で語りかけるしかない」
 開戦前夜の十九日夜、首相は、記者会見や国会報告の草案について、首相秘書官の一人に「記者会見で話す内容はポイントだけ渡してくれればいい。あとは自分で考えたい」と伝えた。攻撃開始を伝えるブッシュ米大統領の演説を執務室のテレビで見た後も、草案の手直しを続けた。
 「日本を攻撃しようと思ういかなる国に対しても、(日米同盟が)大きな抑止力になっていることを日本国民は忘れてはならない」
 「米国が大きな犠牲を払おうとしている時、わが国が可能な限りの支援を行うことは、わが国の責務であり、当然のことだ」
 首相の記者会見や国会報告は、官僚が用意したものよりも日米同盟の重要さや北朝鮮の脅威に対する表現が格段に強まっていた。
◆防衛庁、独自に情報収集
 アーミテージ氏が攻撃を事前連絡しようと最初に電話したのは外務省の川口外相だった。が、外相は不在で、旧知の竹内次官にかけたのだった。ワシントンの加藤良三駐米大使に、ケリー米国務次官補から通報があったのもほぼ同じ時刻。
 首相官邸の動きは慌ただしかった。正午過ぎ、首相は、通常の報道各社へのインタビューを中止、福田官房長官、川口外相らと緊急協議に入った。
 外務省幹部らは、「戦闘開始は早ければ日本時間で二十日夜、おそらく二十一日未明になる」と見ていた。米軍がトルコ上空を通過する許可は日本時間の午後六時ごろに下りるうえ、その時間では米国が明け方で、大統領の国民向けの開戦宣言をしにくい、と分析していたからだ。
 だが、防衛庁は、午前中の攻撃開始の可能性が高いと考えていた。
 実際、午前八時過ぎ、守屋武昌・防衛庁防衛局長は東京・丸の内のパレスホテルで「今聞いた情報では、英国の基地から米軍の長距離爆撃機B52が飛び立った。日本時間の午前九時過ぎには戦闘が始まるのではないか」と語っている。
 防衛庁が独自に情報収集に力を入れていたのは、自衛隊が対テロ戦争の後方支援としてインド洋で艦船への補給活動に従事しており、武力攻撃の展開によっては、海外で活動する自衛隊員の安全にも影響しかねないからだった。
◆与党、支持大勢に 批判強める野党
 自民党の山崎幹事長は開戦直後の記者会見で、「米英の苦渋の決断はやむを得ないと考え、支持する」と述べた。公明党の神崎代表も「日本政府の決断を理解し、やむを得ないと考える。公明党も同じ立場に立つ」と歩調を合わせた。保守新党の熊谷代表も、「国連至上主義は理想としては分かるが、現実は難しい」と、野党の姿勢を批判した。
 経済政策では首相をこきおろす江藤隆美・元総務庁長官もこの日は違った。江藤・亀井派緊急総会で「非常時に対する我々の責任を厳粛に考えるべきだ。私どもはよく理解し、支持する立場で提言、協力する必要がある」と賛同を求めた。
 夕方の自民党「イラク問題緊急対策本部」初会合では、「フセイン大統領の国外追放失敗は遺憾だ。北朝鮮問題の解決も金正日総書記を国外追放するしかない」(坂本剛二衆院議員)との発言も飛び出した。
 一方、野党各党は批判のトーンを強めた。
 民主党の菅代表は首相の国会報告を切って捨てた。
 「胸に迫ってくる言葉は何一つ感じなかった」
 民主党は攻撃開始後、緊急拡大役員会などを開き、武力行使に反対する方針を改めて確認。午後には伊藤英成氏らが米英両国の大使館で抗議文を手渡した。
 夕方、民主党に加え共産、社民両党も党首クラスが街頭に出て政府を批判した。野党側には、四月の統一地方選を控えて「世論に政府の説明不足を訴えるのが得策」との思惑もある。
<<米国のイラク攻撃に関する20日の動き>>
11:30  小泉首相と会談中の竹内行夫外務次官に米国務副長官から電話で事前通告
40  イラク攻撃開始
12:10  与党3党幹事長会談
15  ブッシュ米大統領テレビ演説
20  民主党拡大役員会
28  志位共産党委員長が記者会見
38  自民党緊急役員会
13:00  土井社民党首が記者会見
05  山崎自民党幹事長が党声明発表
15  小泉首相が記者会見
45  神崎公明党代表が記者会見
47  政府の安全保障会議
14:03   臨時閣議
21  政府のイラク問題対策本部初会合
30  小沢自由党首が記者会見
50  与党イラク・北朝鮮問題連絡協議会
15:21  福田官房長官が記者会見
33  首相、衆参両院本会議で報告
16:00  志位委員長がJR新宿駅で街頭演説
23  熊谷保守新党代表が記者会見
31  自民党イラク問題緊急対策本部初会合
35  菅民主党代表が記者会見
45  川口外相が記者会見
17:00  菅代表がJR新橋駅街頭演説
18:30  共産党がイラク攻撃反対集会
21:32  衆院本会議でイラク攻撃関連質疑
23:36  参院本会議でも関連質疑、21日午前1時10分終了
 
 
 
 
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