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2003/04/17 毎日新聞夕刊
イラク復興 ブッシュ米大統領、イラク制裁解除を提案−−石油輸出、復興活用狙う
 
 【ワシントン中島哲夫】ブッシュ米大統領は16日、ミズーリ州で演説し、「イラクが解放された以上、国連は経済制裁を解除すべきだ」と訴えた。制裁に伴う石油輸出制限を外し、巨額になることが見込まれる輸出代金をイラク復興に活用しようという狙いだ。しかし、大量破壊兵器の廃棄が制裁解除の条件になっているだけに、同兵器未発見のまま制裁を解除することを問題視する見方もある。(4面、社会面に関連記事)
 ブッシュ大統領の演説は、同州セントルイスにあるボーイング社の戦闘機製造工場で行われた。大統領はイラク戦争について「我々の任務は終了しておらず、難しい問題は残っているが、サダム・フセインの政権は歴史の中に消え去った」と指摘。フセイン政権打倒の意義を強調し、その結果として経済制裁を続ける必要はなくなったと主張した。
 この点に関してマクレラン大統領副報道官は同日、人道物資購入のための石油輸出だけをイラクに認めている国連の「石油・食料交換計画」から、通常の貿易体制へと速やかに移行すべきだと記者団に説明。経済制裁を解除するための国連安保理決議の採択を近く求める方針を示した。
 米国の狙いを妨げかねない要素の一つは、大量破壊兵器問題が制裁の根拠となっている点。既存の安保理決議に従えば、国連の査察官が「大量破壊兵器はイラクに存在しない」と認定しなければ制裁を解除できない。
 しかし大量破壊兵器が未発見の現時点で査察団がイラク入りし、この認定を行えば、もともと大量破壊兵器はなかったという話になり、米国がイラク攻撃に踏み切った大義名分は崩れてしまう。
 米国としては早期にイラク国内で生物・化学兵器などを発見し、これを査察官の監視のもとで破壊するか、既存の安保理決議を回避する特別扱いを求めるしかない。
 もう一つの重要な要素は、米国がイラクの石油資源を自由に扱うことへの国際的な反発だ。特に、これまでイラクに一定の権益を持っていたロシアやフランスが警戒を強めることが予想される。
 国連はイラクのクウェート侵攻(90年8月)に対して経済制裁を発動、原油を含む1次産品の輸出を禁じたが、95年以降、人道物資の購入費用調達などに限って原油輸出を認めている。
 
 
 
 
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