日本財団 図書館


6.3 FRP製船舶の防食
 FRP製船舶は、船体を構成するFRPが非金属の絶縁物であるため、船体自身は防食の対象にはならない。しかし、船体に付設されている金属部品が海水中で相互に影響しあって腐食を起こすので、それらの金属部品に対する防食が必要となる。
 海水中にある金属部品としては、舵、プロペラ、張り出し軸受、中間軸受、プロペラ軸などである。
 FRP製船舶の金属部品の防食は、亜鉛陽極やアルミニウム合金陽極を船体没水部に取付ける電気防食により行われる。使用される流電陽極の数量は、金属部品の材料、表面積により計算される。
 電気防食用流電陽極は、それぞれ防食しようとする金属にできるだけ近づけて取付ける必要がある。また、流電陽極から各金属部品に効果的に防食電流を流すために流電陽極と防食対象の金属部品を導線で接続し、さらにカーボンブラシでプロペラ軸に接続する必要がある。
 この接続例を図3.6.8に示す。
 
(拡大画面:19KB)
図3.6.8 FRP船における電気防食結線例
 
 この場合、接地銅板は他の没水金属と接続してはならない。これは、プロペラ軸とカーボンブラシとの間に接触不良が生じた場合、火花による有害ノイズが防食回路を通じて電子機器に悪影響を起こす恐れがあること、また接地銅板に防食電流が取られて、防食対象の金属部品が防食できなくなるためである。
 FRPの船体に流電陽極を取付ける際には、水漏れのないように十分な注意が必要である。
 FRPの船体の陽極取付け位置に取付けボルト寸法の穴を開け、ボルトを通し、隙間部をシール材で充槇する。流電陽極の取付け方法は、図3.6.9に示すように直接ボルトで取付ける方法と、台座を用いて取付ける方法がある。
 
(拡大画面:31KB)
図3.6.9 流電陽極の取付け例
 
 プロペラとプロペラ軸を防食するためには、プロペラ軸に銅製または銀合金板付スリップリングを取付け、銀または銅粉末入りカーボンブラシにより流電陽極と接続する方法が行われる。この場合、プロペラ軸に直接カーボンブラシを接触させると潤滑油やオイルミストなどが付着して半絶縁状態になり導通不良の原因となるので、スリップリングは必ず取付けることが必要である。カーボンブラシとスリップリングの接触抵抗が大きいと防食電流が流れにくくなり防食効果が得られなくなるおそれがあるので、接触抵抗は0.1Ω以下とすることが望ましい。ブラシの接触部はカーボン皮膜や油膜が付着するので、時々サンドペーパーなどで除去する必要がある。
 銅製または銀合金板付スリップリングの一例を図3.6.10に、カーボンブラシの取付け例を図3.6.11に示す。
 
(拡大画面:31KB)
図3.6.10 スリップリングの取付け例
 
(拡大画面:26KB)
図3.6.11 プロペラ軸のカーボンブラシ取付け例
 
 プロペラ軸の腐食対策については、下記の点についても考慮する必要がある。
(1)金属の表面に異物が付着しないようにする。
(2)すき間を作らないようにする。
(3)海水がよどむような場所におかないようにする。
(4)亜鉛陽極やアルミニウム合金陽極で電気防食を行う。
(5)軸受部分と接触する範囲のプロペラ軸の表面をセラミックやエポキシ樹脂などでコーティングする。
 プロペラ軸をカーボンブラシとスリップリングを使用せずに、プロペラ軸に直接リング状の流電陽極(亜鉛陽極の場合リングジンク陽極という)を取付けて防食する方法も行われている。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION