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2・5・6 無負荷試験
 無負荷状態に生ずる損失及び無負荷電流を測定する。
 無負荷損及び無負荷電流は、一つの巻線に定格周波数で、基準タップで測定を行う場合は基準タップ電圧を、基準タップ以外で行う場合はそのタップ電圧を加え、他の巻線をすべて開路として測定する。
 三相変圧器の場合、三脚に対してできるだけ対称な正弦波電圧を加えるように巻線を選定し、試験電源へ接続する。
 電圧の読みは、平均値電圧計による。ただし、この平均値電圧計は同一平均値の正弦波実効値で目盛られたものを使用する。この平均値電圧計の読みをU′とし、同時に実効値電圧計を平均値電圧計と並列に接続し、その指示値をUとする。
 
図2・50無負荷試験回路図
 
 三相変圧器の場合の電圧測定は、中性点引出しのY結線及び千鳥結線の巻線を励磁する場合、線路端子と中性点端子間で行う。電圧波形はU′とUの読みの差が3%以内であれば問題ないが差が3%以上のときは注文者と製造者の協議事項とする。
 電圧計の読みに顕著な差がなければ換算損失P0は、次式により算出する。
P0=Pm×(1+d)・・・(2.41)
 Pm:無負荷損測定値
 
d=(U′−U)/U′(通常、負値)
 
 無負荷電流実効値を無負荷損と同時に測定する。三相変圧器の場合、三相の読みの平均値をとる。
2・5・7 特性の算定
(1)電圧変動率の計算(NK検査要領)
 
(拡大画面:26KB)
 
 なお、上記の算式において、P75は絶縁の耐熱クラスA、E及びBのものに適用し、P115は絶縁の耐熱クラスF及びHのものに適用する。
(2)効率の算定
 無負荷試験から求めた無負荷損と、インピーダンス試験から求めた基準温度に換算した負荷損とにより効率算定を行う。規約効率算定式を参照のこと。
 
 
(3)裕度
 裕度とは、規定値と試験結果の差異の許容できる範囲をいう。
 船用乾式変圧器JEM 1273−90の裕度を示すと次のとおりである。
変圧比(N):50kVA以下は指定変圧比の±1/200
50kVAを超えるものは指定変圧比の±1/100
インピーダンス電圧(E2):保証値の±1/10
 他にも規定はあるが船舶用として関連性が薄いので省略する。
(4)実測例
 参考のため船舶用乾式自冷単相変圧器の特性実測の一例を表2・14に示す。
 
表2・14 乾式単相変圧器特性の一例(絶縁の耐熱クラスB、440/110V)
定格出力
(kVA)
電圧/巻数1回
(V)
抵抗損
(W)
鉄損
(W)
効率
(%)
抵抗電圧
(%)
リアクタンス電圧
(%)
インピーダンス電圧
(%)
電圧変動率
(%)
3 1.92 80 80 94.5 2.8 0.8 2.9 2.8
5 2.39 95 105 96.13 1.9 0.85 2.08 1.91
7.5 2.88 130 140 96.52 1.73 0.97 1.99 1.74
10 3.38 160 170 96.8 1.63 0.63 1.75 1.64
15 4.11 215 230 97.13 1.44 0.66 1.59 1.45
20 4.42 285 280 97.2 1.43 0.57 1.54 1.44
25 5.23 380 310 97.23 1.52 1.15 1.90 1.53
30 5.77 455 350 97.4 1.52 1.22 1.95 1.53
35 6.0 530 400 97.4 1.51 1.35 2.0 1.52
40 6.35 600 450 97.45 1.50 1.40 2.06 1.51
50 6.35 790 490 97.50 1.58 1.48 2.17 1.59
 
表2・15 変圧器の温度上昇限度(NK規則)(基準周囲温度の限度45℃)
部分 温度上昇限度(℃)
測定方法 A種絶縁 E種絶縁 B種絶縁 F種絶縁 H種絶縁
巻線 乾式変圧器 抵抗法 55 70 75 95 120
油入変圧器 抵抗法 60
温度計法 45
鉄心表面 温度計法 絶縁物を損傷しない温度







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