日本財団 図書館


2・5・8 温度試験(2・2・8参照)
 温度試験は定格負荷ないしその近くの負荷をとり試験するとよいが、できなければ等価的に負荷されたのと同様な状態で試験を行い、各部の温度上昇が規格内にあるかどうかを確かめる。
(1)温度上昇限度
 NK規則によると変圧器の温度上昇限度は、表2・15のとおりである。船舶設備規程では上昇限度値が異るので注意すること。
(2)乾式変圧器の温度試験
 原則として鉄心を常規磁束密度に励磁した状態で行う。負荷電流は定格の90%以上とし、できるだけ定格電流に近い値とする。定格電流に対する補正は、得られた温度上昇値に次の係数を乗ずる。
 
 
(3)温度試験の負荷方法
 一般に、負荷方法は、次の二つが採用される。
(a)実負荷法:定格負荷状態で行う。
(b)等価負荷法:損失を供給して温度上昇を求め、全負荷状態に換算する。
 (a)は結果に対しなんら補正を要しない。ここでは、実負荷法以外の通常行われている方法を述べる。なお図の記号は次のとおりである。
 
T1、T2、T3:供試変圧器 AG:試験用可変電源 A:電流計
TT:試験用変圧器 V:電圧計 W:電力計
 
i)単相変圧器
(イ)短絡法 図2・51に示すように、インピーダンス試験の回路で、無負荷損と75℃に換算した負荷損との和に等しい損失を供給して最高油上昇を測定し、また平均油温上昇(θm0)を求める。次に入力を減じ電流を定格値に合わせ、1時間通電後、抵抗法により巻線温度(θc)を測定する。この時の平均油温度上昇(θ′m0)を求める。これより定格状態の巻線温度上昇(θ)は次の式で求める。
θ=θm0+(θC−θ′m0)・・・(2・44)
 
図2・51 短絡法
 
(ロ)相等しい変圧器が3台ある場合
 高圧・低圧両巻線を△−△に接続し、定格周波数・定格電圧の三相電源から図2・52のように鉄損を供給すると共に、いずれかの巻線の接続回路に、供試器のインピーダンス電圧の3倍の電圧の単相電源AG2を挿入して定格電流を流し、負荷損を供給する。この場合はタップ電圧の差を利用することができる。
 
図2・52 単相変圧器3台の場合
 
図2・53 三相変圧器2台の場合(V、A2の指示を定格に合わせる)
 
ii)三相変圧器
 三相変圧器1台の場合は短絡法の他に前(i)項の単相変圧器3台の場合と全く同様に試験できる。ただし内鉄形三相変圧器では漂遊負荷損が増加するので、入力を必ず測定し、全負荷と同じ損失を供給しなければならない。Y−Yの相等しい2台の変圧器の場合の試験回路を図2・53に示す。
 測定は、各巻線と大地間及び各巻線について、一般に500Vメガーで行う。絶縁抵抗は測定時の温度に大きく左右されるので、測定時の温度を記録する。通常、温度試験前と試験後に行う。
 充電部分と大地間又は充電部分相互間の絶縁の強度を検証するための試験で、周波数50Hz又は60Hzの正弦波電圧を1分間印加して行う。電圧値は適用する規格によって相違するがNK規則適用の場合は、巻線相互間及び巻線と大地間に、
線間最高電圧の2倍に1000Vを加えた電圧
試験電圧の最低値:1500V
 となっている。なお油入式の場合は油中の気泡が除去された状態、すなわち温度試験の後に実施するのが望ましい。
2・5・11 誘導試験
 各巻線間・巻線層間・ターン間及び端子間の絶縁強度を検証するために行う。
 100〜500Hzの周波数で被試験巻線の常規誘起電圧の2倍の電圧を次の式から求められる時間加えて試験する。
 ただし、最長は60秒間、最短は15秒間とする。
 
 
 周波数が高い程誘電体損が増加し、絶縁物には過酷になるので周波数により試験時間を規定している。
 この試験はおもに変圧器の巻線の層間の絶縁に異常がないかどうかを調べる。
2・5・12 その他の試験
(1)騒音試験
 一般事項は2・2・16を参照のこと。変圧器の騒音は、無負荷で定格電圧を印加した状態で測定を行うが、周波数・波形により幾分異なる場合がある。
 変圧器のJIS C 1502−90(普通騒音計)及びJIS Z 8731−99(環境騒音の表示・測定方法)で規定されたA特性で測定する。
 測定位置は次による。
 
(a)高さ 外箱が2.5m以内のもの:1/2の高さ
(b)周囲 面からの距離(自然冷却):30cm
  間隔:いずれも1mおき、最小6点以上(小さな変圧器は、1m以下の間隔でもよい。)
 
 以上の測定を算術平均して、変圧器の騒音とする。
(2)短絡時における熱的及び機械的強度
 インピーダンス電圧が4パーセント以上の変圧器は、次に掲げる時間中支障なく短絡電流に耐えるものでなければならない。
 
インピーダンス電圧(パーセント) 4以上5未満 5以上6未満 6以上7未満 7以上
試験時間(秒) 2 3 4 5
 
 インピーダンス電圧が4パーセント未満の変圧器は、定格電流の25倍の電流に2秒間支障なく耐えるものでなければならない。(船舶設備規程)
 
2・5・13 復習問題(6)
(1)変圧器の変圧比の測定方法について述べよ。
(2)変圧器のインピーダンス試験とはどんな試験か。
(3)変圧器の効率の算定方法について述べよ。
(4)変圧器の誘導試験について述べよ。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION