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2・5 変圧器
2・5・1 試験項目
(1)形式試験
(2)受渡試験
(a)構造検査 (e)インピーダンス試験 (i)絶縁抵抗試験
(b)巻線抵抗試験 (f)無負荷試験 (j)耐電圧試験
(c)変圧比の測定 (g)特性算定 (k)誘導試験
(d)極性及び角変位試験 (h)温度試験  
(3)参考試験
(a)騒音試験
 
2・5・2 構造検査
 2・2・2で一般的な機械的点検事項として外観構造・寸法形状点検を示したが、変圧器内部及び外部構造・各部分の配置などを点検し、更に乾式にあっては防滴構造、油入式にては充てんされた油量・油洩れなどを点検する。これらは規定の動揺・傾斜に対しても油の流出など異常がないかを点検する。なお単相変圧器3台を同一箱内に納める場合は、各変圧器間に金属又は不燃性の仕切りを設け、かつV−V結線への切換えが容易にできるようにする。
2・5・3 巻線抵抗試験
 2・2・3で示したように測定は、直流を使った電圧降下法かブリッジ法(10Ω以下のときはダブルブリッジがよい)によりすべての巻線及びタップについて行う。
 巻線温度が周囲温度と一致している状態で測ることを要し、降下法の場合は直流による加熱を少くするため、定格値の15%以下の電流で測定する。乾式変圧器では周囲温度を、油入式の場合は油温度を基準として記録する。巻線のインダクタンスが高いと直流は徐々に増加するから一定に達してから読む。
2・5・4 変圧比の測定、極性及び角変位試験
(1)変圧比の測定
 変圧比とは、低圧側を基準にして表した二つの巻線の無負荷における端子電圧の比をいう。図2.45にその測定回路を示す。印加電圧の過飽和による誤差を避けるため電圧は10%以下にする。V1、υ1は切換えて同一計器を使った方がよい。VT1、VT2はやめて直接測定してもよい。三相変圧器の場合は接続前に単相で測定する方がよい。変圧比nは次の式による。
n=V1/υ1・・・(2.39)
 
図2・45 変圧比の測定回路
 
(2)単相変圧器の極性試験
(a)交流による方法
 図2.46にてV−υ間を接続し高圧側に低電圧V1を印加し、U−u間の電圧V2を測定する。
V1>V2のとき減極性
V1<V2のとき加極性
 
図2・46 極性試験回路
 
(b)直流による方法
 図2.47の結線にて高圧側に電池電圧を印加し、V1が正に振れるよう接続する。次に電圧計を低圧側にずらしSを投入した時、V2が正に振れると減極性、逆に振れると加極性である。
 
図2・47 極性試験回路(2)
 
(3)三相変圧器の極性・角変位試験
 三相の場合も単相変圧器と同様な方法で極性試験を行う。また、平衡三相電源を使って角変位を測定する。図2.48でU−u端子を接続し、U、V、W、に低い三相電圧を印加する。電圧V−υ、V−ω、W−υ、W−ωを測定し、ベクトル図を描けば一次と二次の関係ベクトルが得られ、角変位が求められる。
 Y−△、△−Y、△−△接続も同様に求められる。
 
図2・48 角変位の測定とベクトル図
 
2・5・5 インピーダンス試験
 短絡試験ともいい、変圧器の効率計算に必要な負荷損と電圧変動率の算定、並行運転に必要なインピーダンスの値を求めるのが目的である。負荷損は抵抗損、漏れ磁束によるうず電流損、漏れ磁束による鉄損よりなる。
(1)試験方法
 変圧器の一方の巻線を短絡し、他方の巻線に定格電流を流すにたる定格周波数の電圧を加え、図2.49の各計器で測定する。この時の電圧がインピーダンス電圧、入力をインピーダンスワットという。この時の力率は一般に低いので普通の電力計では誤差が伴いやすく、なるべく低力率電力計を使うほうがよい。
 なお注意事項として次に示す。
(a)巻線温度が上昇しないよう、速やかに測定する。
(b)いずれの端子で測定してもよいが、低圧側の接続電線の電圧降下に注意する。
(c)測定時の巻線温度を測定しておく。
(d)タップがあるものは、全タップを測定する。
 一般に船用変圧器のインピーダンス電圧は5%以下である。
 
図2・49 インピーダンス試験回路
 
(2)基準温度への補正
 得られた負荷損は基準温度に換算する。抵抗損は巻線の温度に比例し、抵抗損以外の損失(漂遊負荷損)温度に反比例するものとして次のように計算する。
 単相変圧器の場合
絶縁の耐熱クラスA・Bの時(75℃)
 
(拡大画面:11KB)
 
 ここに、W75、W115:それぞれ75℃、115℃に換算した負荷損
wt:測定で得られたt℃にての負荷損
I2Rt:t℃にての巻線の抵抗損
(3)低電流で測定する場合
 定格電流を流すことができない場合は、定格電流の50%以上で測定するのが望ましい。このときはインピーダンス電圧は電流に比例し、負荷損は電流の2乗に比例するとして、それぞれ定格電流に換算する。







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