日本財団 図書館


3.9.2 重点研究テーマ
 コンバインドサイクル機関の重点研究テーマは以下のとおりである。
(1)コンテナ船等の貨物船を対象とした最適コンバインドサイクルの確立
 客船“Millennium”では、推進+船内サービスの総合効率用に48%である。また、陸上では熱効率50%を超えるものがある。
 一般に陸上、舶用とも大出力機関は高効率のコンバインドサイクルは実用化されているが、中・小出力機関では実用化されていないのが現状である。
 このことより、コンテナ船等の貨物船に必要とされる一般的な出力領域に対応できるコンバインド機関の研究開発は価値があると思われる。
 舶用では機器のクィックスタート、機器の最適な負荷分担システムは重要である。また、コンバインドサイクル機関では機器が複数台となることで運転が複雑となり自動化は重要である。
(1)研究開発テーマ名
・コンテナ船等の貨物船を対象とした最適コンバインドサイクルの確立
(2)研究の範囲
・一般的な貨物船の出力範囲に関して以下の研究を行う。
・開発中の新型ガスタービンの調査、最適ガスタービンの選定、コンバインドする相手機関の選定、推進システムの検討、総合熱効率評価、各船種適用に関する技術問題の解決
・コンバインドサイクル機関の自動化のシステム検討
(3)研究の効果
・省エネルギ、環境保全
(2)客船を対象とした最適コンバインドサイクルの確立
 客船では電気出力だけでなく熱(蒸気)も大量に必要とするので、前述の貨物船とは異なる仕様の要求がある。
 研究内容は基本的には、前述(1)の「コンテナ船等の貨物船を対象とした最適コンバインドサイクルの確立」と同じである。
(1)研究開発テーマ名
・客船を対象とした最適コンバインドサイクルの確立
(2)研究の範囲
・開発中の新型ガスタービンの調査、最適ガスタービンの選定、コンバインドする相手機関の選定、推進システムの検討、総合熱効率評価、客船への適用に関する技術問題の解決
・蒸気タービン機関の熱電比可変システムの試設計、模型製作、試験
・コンバインドサイクル機関の自動化システム検討
(3)研究の効果
・省エネルギ、環境保全
(3)LNG船を対象とした最適コンバインドサイクルの確立
 欧州では、LNG船ヘコンバインドサイクル機関を採用している。今後、LNG船の建造量が増加すると考えられ、現在の主流の蒸気タービン機関より高効率の機関の検討を行なう社会要請があり、LNGボイルオフガスを燃焼させるガスタービン機関と他機関を組み合わせたコンバインドサイクル機関の研究は価値があると考えられている。
 (1)、(2)と同様に最適な自動化の検討も行なう。
 LNG船に関するコンバインドサイクル機関の研究に関してはガスタービン機関に関する研究開発テーマとしても抽出されている。
(1)開発テーマ名
・LNG船を対象とした最適コンバインドサイクルの確立
(2)研究の範囲
・開発中の新型ガスタービンの調査、最適ガスタービンの選定、コンバインドする相手機関の選定、推進システムの検討、総合熱効率評価、各船種適用に関する技術問題の解決
・コンバインドサイクル機関の自動化のシステム検討
(3)研究の効果
・省エネルギ、環境保全
(4)小型蒸気タービンシステムの高効率化
 船舶でガスタービンと蒸気タービンのコンバインドサイクル機関を考えた場合、蒸気条件が悪いため(低温度、低圧力)、蒸気タービン効率が低く、全体の効率に影響することが想定される。
 そのため、コンバインドサイクルでは小型蒸気タービンシステムの高効率化は重要である。
(1)研究開発テーマ名
・5MW以下の小型蒸気タービンシステムの高効率化
(2)研究の範囲
・三次元翼等の高効率タービン技術に関するよる調査、小型蒸気タービンの試設計、模型製作、試験
(3)研究の効果
・省エネルギ、環境保全
 
3.10 推進器
3.10.1 重点研究テーマの選択に関して
(1)ポッド型電気推進装置
 環境問題および省エネ(駆動源の分散化)の観点から船内機器の電動化が進み、さらに舶用燃料電池機関の実用化により電気推進が最適システムになると予測される。
 特に近年、船体設計の自由度が増し、船型開発により推進効率が向上するなど盛んに研究されているポッド型電気推進装置は今後もメインテーマになるであろう。
 この推進装置の研究開発は、米国で実用実験されている高温超伝導モーターの実用化にも直ちに対応でき、米国企業が開発しているリム・ドライブ・プロペラなどの新しいプロペラの概念(電動機と一体となったプロペラ)にも容易に対応できる基礎技術を蓄積できるだけでなく、推進器メーカと電動機メーカにとって将来発展のための必須技術と言える。
 なお、リム・ドライブ・プロペラの特徴は以下のとおりである。
(1)リム・ドライブ・プロペラとは、電動機のステータコイルをダクトプロペラのダクト部に設置し、外周リング付きのプロペラの外周部(電動機ローター部)に永久磁石を設置する永久磁石型の電動機である。電動機であるので、ダクト部とリム部のクリアランスは最小(1−3mm)かつ一定に保つため、プロペラに接続されるプロペラ軸の後方に海水潤滑のスラストベアリングを介してステータが設置され、ステータがダクトとリムの位置決めをすることになる。
(2)リム・ドライブの主な利点
・ポッド内に電動機が無いため、プロペラシャフトを収めるポッドが非常に小さくなる。(長さで従来の1/3)したがって、旋回径が小さくなり、従来型ポッドより多数配置が可能である。
・船尾変動圧が小さいため、プロペラと船体とのクリアランスを小さくでき、プロペラの大径化、低回転化が可能である。さらに、キャビテーション性に優れるため、翼面積を小さくでき、ステータによるプロペラ後流の整流により推進効率が向上する。
(2)低摩擦プロペラ
 プロペラ効率を下げる三つの、(1)流体の加速に伴う運動量損失、(2)粘性抗力、粘性抵抗による損失、(3)後流の回転による損失がある。
 (1)流体の加速に伴う運動量損失に対して、低回転・大直径プロペラ化が解決策であり、(3)後流の回転による損失に対して、二重反転プロペラが解決策である。
 しかし、(2)粘性抗力、粘性抵抗による損失に対しての解決策は実用化されていない。
 地球温暖化ガス(CO2)削減に直接寄与する効率の向上要求は益々大きくなることから、最新の表面改質技術の適用による低摩擦プロペラの実用化を探求すべきである。
 
3.10.2 重点研究テーマ
 推進器に関する重点研究テーマは以下のとおりである。
(1)ポッド型電気推進システム
(1)研究開発テーマ名
・新形式ポッド型電気推進システムの調査研究
(2)研究範囲
・現在欧米で研究開発されているリム・ドライブ・プロペラの調査研究及び高温超伝導モーターの実用化・国産化・ポッドヘの応用の調査研究
・試設計し、性能試験用模型を製作し推進性能を確認する。実用化、採算性評価のための基礎資料作成。次期研究開発テーマの提案。
(3)研究効果
・推進システム技術開発の国産化の促進。舶用工業の進歩発展に寄与。
(2)低摩擦プロペラ
(1)研究開発テーマ名
・化学的表面処理技術のプロペラヘの応用の調査研究
(2)研究範囲
・金属表面処理において、摩擦抵抗低減になる処理について調査し評価する。有望なものについて、基準とする模型プロペラに適用しプロペラ単独性能試験を実施し検証する。
(3)研究効果
・低摩擦プロペラの表面処理技術の確立。
・新規性のあるプロペラの誕生。他機器、部品への応用。
・省エネルギ







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION