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4. 得られた成果
 時代の要請に即した舶用推進システムの質的転換を図るとともに、国民生活の向上、地球規模での環境保全等の新たな視点を踏まえ、近未来にブレークスルーを必要とする技術課題を抽出するための調査・研究を平成13年度と14年度の2年間にわたって実施した。
 平成13年度は既存の舶用推進システムにおける現状の性能、特性等を調査し、課題を整理した。平成14年度はこれらのデータを基にして、2010〜2015年をめどに舶用推進システムの創造的展開を図るための技術課題を環境対応、信頼性および経済性等の視点に立って抽出し、各機種別に以下の重点研究テーマを提案することとした。
(1)低速ディーゼル機関については、今後とも粗悪燃料油の使用が続き、さらなる環境負荷低減および信頼性向上が求められるので、次のような課題があげられる。
(1)低質油の使用を考慮した舶用脱硝装置の研究開発
(2)信頼性向上のための船陸一体型管理システムの研究開発
(2)中速ディーゼル機関についても、さらなる性能向上や環境対応技術の開発、新燃料ヘの転換技術等が必要とされるので、次のような課題があげられる。
(1)中速ディーゼル機関を搭載した船舶の燃料消費量の低減化
(2)環境対応技術(低速ディーゼルと同じ)
(3)LNG船への中速ディーゼル機関の採用
(4)新燃料(GTL、DME)の採用に関する研究
(5)信頼性・保守性の向上(低速ディーゼルと同じ)
(3)蒸気タービンについては、暖気システムに関して熟練オペレータの経験を自動化・システム化する必要があり、次の課題があげられる。
(1)舶用蒸気タービン主機関の自動暖気システムの研究開発
(4)ガスタービンについては、高温材料の開発などにより今後性能向上が期待されるが、その特徴を生かすには他機関との複合化が必要であり、(6)のコンバインドサイクルにまとめて提案している。
(5)燃料電池については、今後の開発が期待される重要な研究課題であり、次の研究テーマがあげられる。
(1)船舶への燃料電池・ガスタービンのコンバインドサイクルの適用研究
(6)コンバインドサイクル機関については、今後ますます重要な舶用推進機関となることが予想される。そのために船種ごとに検討すべき技術課題がある。また、舶用推進プラントにおけるコンバインドサイクル成否の鍵は小出力蒸気タービンの熱効率向上にかかっている。そこで、次の課題があげられる。
(1)コンテナ船等の貨物船を対象とした最適コンバインドサイクルの確立
(2)客船を対象とした最適コンバインドサイクルの確立
(3)LNG船を対象とした最適コンバインドサイクルの確立
(4)5MW以下の小型蒸気タービンシステムの高効率化
(7)推進システムについては、電気推進化が進み、船型形状の最適化にも及ぶ重要な課題があること、また、粘性摩擦の低減が重要となることから、次の課題があげられる。
(1)新形式ポッド型電気推進システムの調査研究
(2)化学的表面処理技術のプロペラヘの応用の調査研究
 なお、高速ディーゼル機関についても「新燃料(GTL、DME)の採用に関する研究」が提案されているが、(2)の中速ディーゼル機関のところで取り上げられているので省略した。また、メタノール機関とスターリング機関については舶用推進機関への適用は実用上考えられないので、重点研究テーマとしては提案しないこととした。
 
 平成13年、14年の2年間で調査研究を行ってきたが、近未来の2010〜2015年をめどに舶用推進システムの創造的展開を図るための重点研究テーマを抽出し、提案できたと考える。
 
5. 成果の活用等
 本研究結果から、従来のディーゼル機関や蒸気タービンについては熱効率のさらなる向上は非常に困難で、環境対応技術、信頼性向上技術、保守の自動化等について地道な研究を継続していく必要がある。
 熱効率のさらなる向上を実現するには、単体の機関では不可能で、ガスタービンを中心としたコンバインドサイクルとする必要があり、蒸気タービンとのコンバインドおよび燃料電池とのコンバインドが重要な研究課題となる。蒸気タービンとのコンバンドでは小出力蒸気タービンの熱効率向上がキーポイントとなる。
 また、推進システムについてはポッド型電気推進システムの調査研究は早急に進める必要がある。
 最後に、本研究の実施にあたりましては、日本財団より多大なご支援をいただいたことに対し深く御礼を申し上げるとともに、終始積極的に研究に取り組んでいただいた委員各位に感謝する次第である。







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