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セッションII
エイズおよび他の感染症 ―人類最大の脅威―
《議長》須永和男 外務省経済協力局調査計画課長
 
成功した国が率先してサポートを
アンジャリ・ナヤー 国際エイズワクチン構想インド代表
 HIV/AIDSが世界中でますます広がる中で、我々の経験を世界に広める重要性、特に南々協力においての重要性を感じている。先進国と途上国の連携の強化も欠かせない。その重要性を主張したい。
 HIV/AIDSに対する取り組みには、HIV/AIDS治療の技術とその移転、感染ルートの解明と感染予防、治療薬や予防薬へのアクセス向上、HIV/AIDSの感染予測、HIV/AIDSに関するあらゆるレベルの会議、ワークショップなどの開催による新たな情報の交換・人々の能力や技術の向上によるキャパシティビルディングなどが重要なポイントである。そしてHIV/AIDSに関する研究、そのメカニズムの解明も進んでいる。
 これからのHIV/AIDS対策には、途上国と先進国の連携のみならず、HIV/AIDS対策において成功しつつある国が率先して、他のHIV/AIDSに苦しんでいる国をサポートする体制を作っていくことを願う。
 
政治的な関与、サービスのメカニズム構築が必要
角井信弘 (財)ジョイセフ国際事業部シニア/プログラム・オフィサー
 ジョイセフのザンビアでのHIV/AIDS予防プログラムの活動を紹介したい。HIV/AIDSのプロジェクトでは、予防・治療・サポートが大きな柱である。重要なのは、そうしたサービスの存在を知ることである。
 HIV/AIDSに対する人々の行動を変えるために重要な点を挙げる。恒常的なメッセージを人々の受け入れやすい方法で流すこと、クリニックヘのサポートと治療活動、サービスのアクセスが容易なことと、人々のサービスの受け入れ可能な体制であることなどである。
 ジョイセフでも取り上げているIEC(Information Education communication)/BCC(Behavior Change Communication)のコミュニケーション方法は、ジョイセフの各国でのプロジェクト地域において成果を上げている。このIEC/BCCは、そのメッセージや教育により人々の行動を変えていくようなコミュニケーションを意味する。そしてHIV/AIDS予防のような行動を受け入れた人々から、行動をまだ変えていない人々と接することで、彼らもHIV/AIDSの予防行動をするようになる。
 HIV/AIDSに感染している人が、社会的、心理的、法的、経済的サポートを受け入れることのできる環境に身をおくことが重要である。こういったサポートを提供しうるのが、NGOや政府機関である。こうしたメカニズムがスムーズに機能することで、HIV/AIDS予防と治療に相乗効果をもたらすのである。
 HIV/AIDSは、その問題性が大きいだけに政治的な関与、サービス普及のメカニズムの構築、戦略的な計画、資源の流動性が重要となる。
 
予防に勝る解決法なし
ジョータム・ムシングジ ウガンダ財務・経済省人口局長
 ウガンダは、アフリカでもHIV/AIDS対策で成功した国である。ボツワナやジンバブエなどがHIV/AIDSの感染率が減少しない中で、ウガンダは大きく成果を出している。アフリカの平均寿命は、出生率がもともと高いことからHIV/AIDSの感染率が減少すれば、伸びるが、現実には感染率は上昇しているので、平均寿命が減少している国も少なくない。
 HIV/AIDSの蔓延に対処するための最も効果的な解決方法は、その予防である。その方策には、マスメディアを利用して、多くの人々にHIV/AIDS予防の重要性を呼びかける、避妊具を利用しやすい環境にする、予防等のサービスを向上させるなどがある。ウガンダはコンドームの使用普及率が五〇%前後である。若干、都市の方が農村よりもその率が高くなっている。上にあげたマスメディアに接しやすい環境であったり、その他の新しい情報に接しやすいのが原因であろう。
 また、コンドームなどの避妊具の使用についての教育が重要となる。避妊具の普及を効果的にさせるには、初等の教育、特に識字教育などが重要である。その意味で、中等教育よりも初等教育の普及は緊急を要するのである。
 
セッションIII
新たな問題と新しい取り組み
《議長》広中和歌子 参議院議員
 
高齢化社会
介護問題や経済負担が社会問題になる
阿藤 誠 国立社会保障・人口問題研究所長
 世界レベルで高齢化が進んでいる。六十五歳以上の人口は、一九五〇年の一億三千万人から、二〇〇〇年には四億二千万人と三・五倍増加している。国連の最新の人口推定によると、二〇〇〇年の四億二千万人から二〇五〇年には十四億六千万人と増加し、割合も六・九%から一五・六%に増加するという。特に途上国の高齢化は、二十世紀の最後の二十五年で急速に進んだ。
 途上国では、アジアのNIEs諸国で高齢化がまず始まった。その後ラテンアメリカ、北アフリカ、南アジアが続いた。西アジアやサブ・サハラアフリカ諸国はかなり遠い将来に起こるであろう。高齢化は出生率の減少により始まる。アジアのNIEs諸国は、人口転換がすでに完了し、中国、台湾が続いた。ラテンアメリカやその他の東南アジア諸国は人口転換の中間の段階にある。西アジアやサブ・サハラアフリカ諸国はまだ始めの段階である。高齢化に伴い、高齢者の介護問題や経済的な負担は家族に重く圧し掛かり、大きな社会問題となる。平均的に女性のほうが男性よりも長生きする。平均寿命が伸びるに従い、女性の割合が増大する。そのため高齢化にともなう問題は、高齢者の女性に関する問題であるとも言える。
 高齢化に伴う問題に対する解決方法に、高齢者の雇用、所得の確保、独立した生活の確率、健康の維持、社会でのポジティブな意義を与える、など多様なアプローチが考えられる。
 
指導性と連帯
コミュニティレベルでリーダーシップを
弓削昭子 UNDP駐日代表
 WSSDでは具体的なアジェンダ21の実施のための具体的実施案を示した。環境問題は水、エネルギー、健康、生物多様性など多岐にわたるものである。環境問題だけでなく、貧困削減の解決には、国連、NGO、民間、地方自治体などが協同で参画できるシステムを構築し、パートナーシップを実現しなければならない。
 UNDPは人間開発をべースとした開発を訴えている。ミレニアム宣言の達成をするためにも、アフリカやアジアなど深刻な貧困の削減をしていかなければならい。貧困は地域的、国家的なレベル、そして地域レベルで貧困がはびこっている。しかしその解決には、最も下のレベルであるコミュニティレベルで、リーダーシップをとっていく必要がある。貧困削減と持続可能な開発は切っても切り離せない関係であるが、持続可能な開発手法を下から上へ吸い上げていくことが重要となる。現在、UNDPはGEF(Global Environmental Facility)のプログラムで、コミュニティレベルのNGOや民間など多くの主体の活動支援をしており、貧困削減と持続可能な開発において、数多くの成果を出している。
 
先端技術
情報コミュニケーション技術が大きな貢献
三好 皓一 国際協力事業団国際協力研修所国際協力専門員
 JICAでは、様々な形の南々協力を実施している。途上国によるトレーニングプログラム、日本と途上国の間での専門家間の技術移転協力、パートナーシッププログラム、職業訓練など多岐にわたる。ここでは自分が関わったプロジェクトを紹介したい。
 私はマヒドン大学のASEAN保健開発研究所の設立に関わった。その機関は、今マヒドン大学の一部として機能している。この成功は、先端技術を利用した典型的な南々協力の例としてあげることができる。そのASEAN保健開発研究所においては、情報コミュニケーション技術いわゆる、ICT(Information and Communication Technology)が大きな貢献をした。情報コミュニケーション技術は、時間・距離・場所を無視できる。このICTを利用することで遠距離学習システムのネットワークを構築することができた。このことは、これからも開発分野で重要な役割を果たすと考えている。
 ICTを利用して、今後はどのように南々協力に応用するか。ネットワークの連携、経験・情報・常識の共有化、新しい知識・経験の統合、南々協力のデータベース作成、などの側面を生かして、南々協力に生かせると考える。
 
民間組織
バングラデシュでは「気持ちのつながり」が成功を導く
木附 文化 (財)オイスカ事務局長次長
 オイスカでは、アジア太平洋各地で農業研修、植林活動を行っている。私は人材育成とプロジェクトの推進の側面から、バングラデシュ南東海岸沿いのマングローブ植林の事例を紹介したい。バングラデシュはサイクロンと洪水に悩まされている。マングローブ植林により防風林を作り、サイクロンを防ごうというものである。実際このプロジェクトは成功例と考えている。
 プロジェクトを成功に導く三つの要素があると感じた。(1)研修を受けた率先するリーダーが存在する、(2)村の人が植林の意義を理解している、(3)外から活動を支援する存在がある。この三つの要素の相乗効果が、このプロジェクトの成功を導いたものと感じている。オイスカの多くの国での成果は、これらに表れる相乗効果、つまり人々の「気持ちのつながり」からくると思っている。







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