日本財団 図書館


南南協力国際会議開く
ハイレベル政策担当者におけるシンポジウム:人口と開発に対する多角的なアプローチ
すべて“貧困解消”がカギ
途上国、エイズ・持続可能な開発問題
 
 「南々協力国際会議―ハイレベル政策担当者におるシンポジウム:人口と開発に対する多角的なアプローチ―」が九月十一日から三日間、NPO・二〇五〇、国連開発計画と人口開発パートナーズの主催で、国連大学5階会議場で開かれた。昨年の「ハイレベル政策担当者によるシンポジウム:戦略の選択」に引き続いて行われたものである。人口開発パートナーズ加盟国理事、世界銀行、国連関係機関、日本及びアジアの国会議員、政府職員、民間諸機関、学識経験者や一般との知識交流、南々協力の重要性と途上国の現状について広く理解を深め、同時に当会議の内容や提言等を参加国の政策に反映していくことを目的とするものである。
 会議は「貧困・環境・エンパワーメント―女性を中心として」、「エイズ及び他の感染症―人類最大の脅威」、「資金・医薬必需品・キャパシティビルディング」そして「新たな問題と新しい取り組み」について論議した。
 
真剣な論議が行われた会場
 
 基調講演で植竹繁雄氏(外務副大臣)は、グローバルの進展によって貧富の格差は拡大する傾向にあり、また感染症や環境問題が深刻化し、開発問題を巡る情勢は大きく変化しており、途上国における貧困の撲滅が持続可能な開発を進める上で最も重要なことであると述べた。
 今年はWSSD(持続可能な世界首脳サミット)を初め、開発と国際協力についての国際会議が多く開かれた。植竹氏は、小泉総理のWSSDに向けた包括的な途上国支援策の「小泉構想」を挙げ、「戦略・責任・経験と情報」の共有を柱とするグローバルシェアリングの重要性に触れ、人造り、開発及び環境の三つの重点分野が持続可能な開発における中心課題であると述べた。その際にNGO、民間、政府、国際機関が一体となった努力が必要であり、限られたODAでは「量より質」への転換が必要であると述べた。
 
セッションI
貧困・環境・エンパワーメント ―女性を中心として―
《議長》弓削 昭子 国連開発計画(UNDP)駐日代表
 
あらゆる立場の人々のパートナーシップが必要
A・K・チャウドリー LDC担当国連事務次長
 貧困・環境は一九九〇年代から議論され始めた。ICPD+5以降では、女性は生活の全ての側面において重要な役割を担い、女性が開発に貢献するということが特に認識され始めた。女性の権利は言うまでもなく人の権利であり、教育やリプロダクティブ・ヘルス・環境・ジェンダー問題に対し、途上国において特に大きな貢献をした。
 開発におけるオーナーシップという考えがでてきた。オーナーシップとは自分自身が、主体性を持って関わるというものである。それには教育が社会的進展と人間的な生活のための重要な鍵であると考える。特に少女の教育が貧困削減に貢献することが、一九九〇年代の機会平等化の結果、認識され始めた。
 リプロダクティブ・ヘルスはICPD+5以降、主要なテーマとなり、国会議員連盟の活動が活発化した。その動きの中で女性議員の参画をより促すことが開発と平和構築において重要である。
 ミレニアムサミットでは、二〇一五年までに貧困人口を半分に削減するという数値目標を掲げた。インドや中国では貧困削減は成功したと言えるが、その他の途上国はまだ大きく遅れている。これらの貧困削減の目標を達成するためには、資源の流動化、直接投資、直接支援、より深い支援、人権の重視、環境破壊の削減などが非常に重要である。貧困を作り出すあらゆる次元の要因を排除することが欠かせない。UNFPA事務局長トラヤ・オベイド氏は貧困削減には、あらゆる立場の人々のパートナーシップが必要となることを強く主張している。
 
画期的な養蚕業に成功
吉田昭彦 NPO・二〇五〇テクニカル・アドバイザー
 フィリピン・パラビン島のプロジェクトの話をしたい。このプロジェクトは新しい形の養蚕業である。これは従来からあるような養蚕業ではなく、カイコにクワを新たに与える必要はなく、どこにでもあるキャッサバやヒマの葉などでエリ蚕を飼育する。また糸は紡ぎ糸なので機械を使わず、手作業でできる。生糸を目的としないのは、既に中国が市場を独占しているからだ。
 この新しい養蚕業の特徴は(1)管理が容易(2)餌の原料のキャッサバやヒマの葉は熱帯地域には豊富に存在(3)使用する絹糸虫は休眠しないため1年間連続で飼育可能、それによる安定した就業機会の創出(4)産業の立ち上がりが早い、などであり途上国の開発プロジェクトとして非常に有効な方法である。
 フィリピンでは、闘鶏が盛んな地域があり、オスのシャモが高く売れる。そのシャモからの売上はマユの売上より遥かに大きかった。しかし闘鶏の盛んでない地域では適用することができない。そこで貴重なたんぱく源である虫に注目し、「昆虫の多目的利用」という考え方に至った。虫はトリやブタやウシと違って変温動物である。後者の動物がたんばく質を摂取しても、体温の維持のためにエネルギーを変換してしまう。しかし虫はそれが食べた餌が効率よくたんぱく質に変換される。地球の限られた資源の保全の意味でも昆虫の多目的利用は非常に有効な方法である。
 
小口金融の実施で成果あげる
カリッド・シャムズ グラミーン銀行副頭取
 グラミーン銀行では、これまで様々な貧困と環境、女性についての課題を扱ってきた。問題はどうやったら変えられるかである。
 グラミーン銀行は一九八三年に創立され、農村地域の村レベルで、女性のみを対象として小口金融を行っている。小口金融の実施、金融システムの構築、新たな収入機会の創出が大きな柱である。今では一、一七五の支部があり、全部で二百二十万人のスタッフがいる大きな組織である。グラミーン銀行での、返金率は非常に高く、九割以上に上る。グラミーン銀行の手法の特徴は、(1)貧困層のみ対象(2)小さなグループを作り連帯責任を課す(3)貧困層に適したプランの作成(4)彼ら自身がやり繰りできる方法の指導(5)開発ニーズに特化している(6)社会開発プログラムに焦点を当てる、である。
 こうした手法は貧困層を救い、国全体の貧困削減に貢献するだけはない。今やアジアやアフリカなどの多くの途上国で、グラミーン銀行の手法が適用され、大きな成果をもたらしている。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION