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(2)内航海運の活性化に向けた取組み
 
イ)次世代内航海運ビジョンの具体化に向けて
 前述のとおり、「次世代内航海運ビジョン(平成14年4月策定、2ページ参照)」は、内航海運業法等の見直し、次世代内航船(スーパーエコシップ)等の技術開発・普及の推進、船舶・船員に係る社会的規制の見直し等を行う内容となっており、現在、本ビジョンで提示された各個別施策の具体的制度設計を行っているところである。
 このうち、内航海運業法等事業規制及び船舶・船員安全規制に係るものについては、「内航海運制度検討会(平成14年5月発足)」において検討を行っており、内航海運業法等事業規制に係るものについては具体的制度設計終了後、所要の法令改正を実施し、平成16年度以降速やかに措置する予定である。
 また、船員の乗組み体制に係るものについては「内航船乗組み制度検討会(平成14年4月発足)」において総合的な検討を行っており、平成15年度内を目途に総合的な検討を終了し、結論の得られたものから措置する予定である。
 なお、その他の施策についても、本ビジョンで明確化されたスケジュールに沿って措置する予定である。
ロ)内航海運暫定措置事業の円滑かつ着実な実施
 内航海運については、昭和41年から船腹過剰対策として実施してきたスクラップ・アンド・ビルド方式による船腹調整事業を解消し、平成10年5月、内航海運の活性化を図るため、暫定措置事業を導入した。
 この暫定措置事業は、競争制限的との批判が強かった船腹調整事業の解消により、事実上の経済的価値を有していた引当資格が無価値化する経済的影響を考慮したソフトランディング策であるとともに、内航海運の構造改革の推進の観点から、船腹需給の適正化と競争的市場環境の整備を図るための事業である。(制度の概要は図表2−1−68参照)なお、国土交通省としては、政府保証の下に運輸施設整備事業団が調達した資金を内航海運総連へ融資する制度を設けている。
 
図表2−1−68
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 一方、内航海運の構造改革を推進し、高度で安全な内航海運輸送システムを構築する観点から、「シンデレラ・プロジェクト」(平成15年4月以降、船齢15年を超える船舶は交付金交付の対象としないこととするもの)を円滑かつ着実に実施するため、平成13年度補正予算において政府保証枠を210億円から290億円(借入資金総枠700億円から800億円)へ、平成14年度予算において政府保証枠をさらに370億円(借入資金総枠をさらに900億円)へそれぞれ拡大したところである。
 なお、実施状況については、交付金が1,236隻(135万対象トン)に対する957億円、納付金が240隻(60万対象トン)からの221億円となっている(平成14年3月現在認定ベース)。
 
(3)運輸施設整備事業団の取組み
 
 国内旅客船業や内航海運業を営む事業者には経営基盤が脆弱な中小零細事業者が多く、多額の資金を必要とする船舶の建造については、十分な担保がなく民間金融機関からの資金調達は困難である。
 このため、運輸施設整備事業団(事業団)では、共有建造方式※1により、船舶の近代化を推進するとともに、離島航路の維持・確保、モーダルシフト船※2等による環境対策、バリアフリー化船による少子高齢化対策、船舶の高度化等による物流効率化・高度化を図っている。
 平成13年度においては、厳しい経済状況の下、内航海運の活性化を図るため、地球温暖化対策・物流効率化に資する環境負荷低減船※3に対する手数料の軽減等の共有業務の弾力化の措置を講じた。また、平成12年度に引き続き、内航総連に対して内航海運暫定措置事業に要する資金の融資を行った。
 平成14年度については、共有建造業務において事業の対象を政策課題に合致したものに重点化する制度改正を実施し、その中で環境対策に資する船舶(モーダルシフト船、e−シップ※4)等の建造促進を図っていく。 また、現下の景気状況を踏まえ、平成13年度に引き続き環境負荷低減船の代替建造促進を図るため、手数料の軽減措置を講じるとともに、内航総連への資金の融資を引き続き行っていく。
※1 共有建造方式
船舶を事業者と事業団が費用を分担して建造し、竣工後も事業団と事業者の共有としつつ、事業者に船舶を使用管理させる方式。この方式により、事業団が分担した費用については事業者は担保も要しないため、資金の調達能力に乏しい事業者であっても船舶の建造が容易となり、また、船舶の建造の技術支援が受けられることから、質の高い近代的な船舶を整備することが可能となる。
※2 モーダルシフト船
 長・中距離フェリー、RORO船、コンテナ船、自動車専用船等。
※3 環境負荷低減船
 船型、機関、推進機などを省エネ仕様に改良するなどの工夫により、エネルギー消費効率が優れている船舶及びコンテナ船、RORO船等トラック輸送から海上輸送への転換を効率的に推進する船舶。
※4 e−シップ
 航行によるCO2排出量が事業団の定める量と比べて10%以上下回る船舶、または二重船体構造を有する油送船又は特殊タンク船。
 
図表2−1−69 平成14年度事業計面
区分 総トン数 事業団予算額
船舶建造計画 G/T 百万円
旅客船の建造 24,000 12,100
貨物船の建造 94,000 28,000
○国土交通省海事局調べ
 
○内航海運暫定措置事業に関する資金の貸付け
平成14年度事業計画 37,000百万円
*日本内航海運組合総連合会に対し、内航海運暫定措置事業を円滑に実施するために必要な資金の貸付けを行う。
 
図表2−1−70 運輪施設整備事業団の船舶建造実績の推移
(単位:百万円)
  貨物船 旅客船
年度 隻数 総トン数 事業団
分担楽
隻数 総トン数 事業団
分担額
3 92 96,713 51,009 20 60,498 31,140
4 140 176,776 90,324 28 67,837 49,374
5 128 116,924 70,171 20 36,142 22,194
6 107 106,630 60,167 25 48,474 25,987
7 82 101,345 46,459 19 44,720 16,155
8 72 78,606 41,600 27 52,307 24,036
9 35 51,628 22,719 11 7,581 5,551
10 28 76,587 29,833 10 34,437 17,617
11 16 53,730 18,504 7 7,700 5,456
12 26 79,151 25,969 7 25,882 11,123
13 26 79,789 25,801 6 27,319 12,259
○国土交通省海事局調べ
(注)13年度は建造契約決定ベース。







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