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内航海運の現状と方向
〜平成14年版「海事レポート」から〜
 前号の「造船業の現状と方向」、「次世代内航海運ビジョン」に引き続き、平成14年版「海事レポート(国土交通省海事局編・(財)日本海事広報協会発行)から「内航海運の現状と方向」を抜粋掲載します。
 
第1章 海上輸送の現状と方向
(3)内航海運の現状と方向
(1)内航海運の現状
イ)内航海運とは
 我が国と外国の間での航海を指す「外航」に対し、国内の港間における航海を「内航」といい、内航によって行われる輸送は、その輸送対象によって内航貨物輸送と内航旅客輸送に区分されるが、このうち内航貨物輸送を一般に「内航海運」と呼んでいる。
内航海運は国内貨物輸送の42%(平成12年度)を担っており、我が国経済・国民生活を支える産業基礎物質である鉄鋼、石油、セメント等についてはその約8割を輸送している(図表2−1−52、2−1−53参照)。
 
図表2−1−52 輪送機関別のシェア(平成12年度)
 
図表2−1−53 主要品目の輸送分担率(平成12年度トンキロベース)
 
図表2−1−54 輸送機関別輸送量の推移
年度
輸送トン数(百万トン)
輸送トン数(百万トン)
平均輸送距離(km)
内航
自動車
鉄道
内航
自動車
鉄道
内航
自動車
鉄道
昭和45 377
(7.2)
4626
(88.0)
250
(4.8)
5253
(100)
151
(43.2)
1359
(38.8)
630
(18.0)
3501
(100)
401 29 252
50 452
(9.0)
4393
(87.4)
181
(3.6)
5026
(100)
1836
(50.9)
1297
(36.0)
471
(13.1)
3604
(100)
406 30 261
55 500
(8.4)
5318
(88.9)
163
(2.7)
5981
(100)
2222
(50.7)
1789
(40.8)
374
(8.5)
4385
(100)
444 34 230
60 452
(8.1)
5048
(90.2)
96
(1.7)
5997
(100)
2058
(47.4)
2059
(47.5)
219
(5.1)
4336
(100)
455 41 227
平成2 575
(8.5)
6114
(90.2)
87
(1.3)
6775
(100)
2445
(44.8)
2742
(50.2)
272
(5.0)
5459
(100)
425 45 314
5 529
(8.2)
5822
(90.6)
79
(1.2)
6430
(100)
2335
(43.7)
2759
(51.6)
254
(4.7)
5348
(100)
442 47 321
6 556
(8.6)
5810
(90.1)
79
(1.2)
6445
(100)
2385
(43.9)
2806
(51.6)
245
(4.5)
5436
(100)
429 48 310
7 549
(8.3)
6017
(90.6)
77
(1.1)
6643
(100)
2383
(42.7)
2946
(52.8)
251
(4.5)
5580
(100)
434 49 326
8 547
(8.0)
6177
(90.9)
74
(1.1)
6798
(100)
2418
(42.2)
3055
(53.4)
250
(4.4)
5723
(100)
442 50 339
9 541
(8.1)
6065
(90.8)
69
(1.0)
6676
(100)
2370
(41.7)
3063
(53.9)
246
(4.3)
5679
(100)
438 51 356
10 517
(8.1)
5820
(91.0)
60
(1.0)
6397
(100)
2270
(41.2)
3007
(54.6)
229
(4.2)
5506
(100)
439 52 380
11 523
(8.1)
5863
(91.0)
59
(0.9)
6445
(100)
2294
(41.0)
3071
(54.9)
225
(4.0)
5590
(100)
439 52 384
12 537
(8.4)
5773
(90.6)
59
(0.9)
6939
(100)
2417
(41.9)
3131
(54.3)
221
(3.8)
5769
(100)
450 54 373
 
 また、内航海運は、単位当たりの二酸化炭素排出量(1トンの貨物を1km運ぶのに排出する二酸化炭素の比較)が営業用普通トラックと比較して5分の1であるとともに、輸送効率性も高く、環境保全の面で優れた輸送特性を有している(図表2−1−55、2−1−56参照)。なお、図表2−1−57、2−1−58を見てもわかるとおり、平成7年度と比べ、従業員(内航船員)1人当たりの輸送トンキロ(平成13年度)は3割増、1隻当たりの平均総トン数(平成12年度)は3割増となっており、輸送効率化は着実に進展している。
 その一方で、内航海運は、主要貨物が産業基礎物質であり、市況変動による生産調整等で輸送需要が変動するのに対し、供給面での機動性を欠くため、船腹需給ギャップが生じやすい構造となっている。
 
図表2−1−55 輸送機関別単位あたり二酸化炭素排出量の割合(平成11年度)
(拡大画面:32KB)
 
図表2−1−56 内航海運の輸送効率性(平成11年度)
(拡大画面:60KB)
 
図表2−1−57 従業員1人当たりの輸送トンキロ
(拡大画面:76KB)
 
図表2−1−58 1隻当たりの平均総トン数の推移(内航貨物船)
(拡大画面:46KB)
 
ロ)内航海運事業者の現状
 平成13年3月末現在、内航海運許可事業者は3,699事業者となっている。内航海運事業者には、荷主の要請に応じて貨物を運送するオペレーター(運送事業者)と船舶をオペレーターに貸渡し実際の運航を担うオーナー(貸渡事業者)とがあるが、許可・届出の別に応じてそれぞれ許可オペレーターが721事業者、許可オーナーが2,978事業者となっている。なお、届出オペレーター・オーナーは1,574事業者となっている。
 一方、内航海運事業者は、その99.3%が中小企業(資本金3億円以下または従業員300人以下の企業)であり、代表的オペレーター会社20事業者(許可運送事業者総数の3%)で、総売上高の20%、総船腹量の30%を占めているのが現状である。このようなことからもわかるように、内航海運の市場構造は、特定荷主の系列化、多重的な取引関係等荷主企業を頂点とするピラミッド型となっており、安定・安全輸送の確保、オペレーターの経営安定などに寄与している面がある一方で、内航海運市場の閉鎖性を高め、新規参入、規模拡大等事業者の多様な事業展開による市場の活性化や競争の促進の障害となっている面がある。
 
図表2−1−59 内航海運事業者数
(単位:億円)
区分 平成元年3月31日 平成14年3月31日
許可事業者 届出事業者 許可事業者 届出事業者
運送事業者 755 1,386 2141 721 1196 1917
貸渡事業者 4,205 690 4895 2978 378 3356
4,960 2,076 7036 3699 1574 5273
○国土交通省海事局調べ
(注)1. 「許可運送事業者」=許可運送業のみ、又は許可貸渡業、届出運送業、届出貸渡業のいずれかも併せ持っている者。
2. 「許可貸渡事業者」=許可貸渡業のみ、又は届出運送業、届出貸渡業のいずれかも併せ持っている者。
3. 「届出運送事業者」=許可運送業及び許可貸渡業を持たず、届出運送業のみ、又は届出貸渡業も併せ持っている者。
4. 「届出賃渡事業者」=届出貸渡業のみを持っている者。
 
 なお、内航海運事業者の財務状況を見ると、(1)資産に占める固定資産の割合は、オペレーターが56%、オーナーが75%であり、船舶等に依存した資産構成となっていること、(2)自己資本比率は、オペレーターが21%、オーナーが6%であり、特にオーナーについては脆弱な経営基盤となっていることがわかる(図表2−1−60参照)。
 
図表2−1−60 内航海運の財務状況
(拡大画面:35KB)
(拡大画面:39KB)
 
ハ)輸送動向・市況
 平成13年度の内航貨物輸送量は、景気が低迷する中で、トンベースでは前年度比4.8%減少している。主要品目別で石油製品が前年度比5.5%減、鉄鋼が前年度比14.3%減、石灰石が前年度比14.5%増となっている。
 また最近の内航主要品目別の輸送量の推移を見ると、石油製品は年々減少傾向であり、その他の貨物については石灰石を除いて概ね横ばいとなっている。(図表2−1−61参照)
 一方、内航海運のサービス価格は、図表2−1−62のとおり国内景気の停滞、船腹過剰等により近年低下傾向にあったが、平成13年度後半頃から、油送船についてはやや上昇に転じる等下げ止まりつつある。
 
図表2−1−61 内航主要晶目別輸送量の推移
(拡大画面:34KB)
 
図表2−1−62 サービス価格推移
(拡大画面:102KB)
 
図表2−1−63 内航貨物輪送量の推移
年度 輸送量(千トン) 輸送活動量(億トンキロ)
  対45年度比 対前年度比   対45年度比 対前年度比
昭和45 376,647 100.0 1,512 100.0
50 452,054 120.0 112.6 1,836 121.4 95.4
55 500,258 132.8 97.2 2,222 147.0 98.4
56 479,097 127.2 95.8 2,118 140.1 95.3
57 437,584 116.2 91.3 1,981 131.0 93.5
58 438,038 116.3 100.1 2,007 132.7 101.3
59 450,278 119.5 102.8 2,101 139.0 104.7
60 452,385 120.1 100.5 2,058 136.1 98.0
61 440,677 117.0 97.4 1,980 131.0 96.2
62 462,546 122.8 105.0 2,014 133.2 101.7
63 493,000 130.9 106.6 2,126 140.6 105.6
平成元 538,029 142.8 109.1 2,247 148.6 105.7
2 575,199 152.7 106.9 2,445 161.7 108.8
3 571,891 151.8 99.4 2,482 164.2 101.5
4 540,410 143.5 94.5 2,480 164.0 99.9
5 528,841 140.4 97.9 2,335 154.4 94.2
6 555,764 147.6 105.1 2,385 157.7 102.1
7 548,542 145.6 98.7 2,383 157.6 99.9
8 546,909 145.2 99.7 2,418 159.9 101.4
9 541,437 143.8 99.0 2,370 156.7 98.0
10 516,648 137.2 95.4 2,270 150.1 95.8
11 522,602 138.8 101.2 2,294 151.7 101.1
12 537,021 142.6 102.8 2,417 159.9 105.4
13 511,268 135.7 95.2 2,425 160.4 100.3
○国土交通省「内航船舶輸送統計年報」等による
(注)調査方法が昭和49年度から変更になったため、45年度の輪送実績は、これとの接続を考慮して算出した推計値である。
 
ニ)内航船と船腹需給の現状
 内航海運業者の所有する船舶(営業船)の状況は、平成14年3月31日現在合計7,018隻(前年度比1%減)、3,955千総トン(前年度比6%増)となっている。
 船型別にみると、500トン未満の船舶は隻数ベースでは全体の81%を占めているが、総トン数ベースでは全体の30%となっている。一方、1,000トン以上の船舶は隻数ベースでは全体の10%と少数であるが、総トン数ベースでは全体の57%と半数を占めている。
 船種別にみると、全船種とも大型化しているが、特に自動車専用船は10年前と比べると一隻当たりの総トン数で45%増となっており、大型化が著しい(図表2−1−65参照)。
 船齢別にみると、総トン数で約3割弱を老朽船が占めており、この10年間で徐々に減少傾向にある(図表2−1−66参照)。
 
図表2−1−64 内航船の船型別船腹量
船形(総トン) 平成元年3月31日 平成14年3月31日
隻数 総トン数 隻数 総トン数
100トン未満
2,574(27)
100,947(3)
2,078(30) 65,718(2)
100トン以上200トン未満
3,179(34) 558,586(15) 1,647(24) 288,311(7)
200〃 300〃 421(4) 110,869(3) 302(4) 78,689(2)
300〃 400〃
319(3) 112,144(3) 287(4) 101,197(3)
400〃 500〃 1,598(17) 770,619(21) 1,349(19) 652,677(17)
500〃 700〃 622(7) 418,612(11) 397(6) 265,115(7)
700〃 1,000〃 243(3) 232,580(6) 274(4) 232,843(6)
1,000〃 2,000〃 242(3) 355,044(10) 234(3) 349,084(9)
2,000〃 3,000〃 120(1) 313,768(9) 161(2) 436,132(11)
3,000〃 4,500〃 94(1) 338,618(9) 160(2) 583,607(15)
4,500〃 6,500〃 43(−) 233,554(6) 77(1) 402,782(10)
6,500トン以上 13(−) 124,295(3) 52(1) 498,384(13)
合計 9,468(100) 3,669,636(100) 7,018(100) 3,954,540(100)
平均総トン数 388 563
○国土交通省海事局調べ
(注)1. 内外航併用船及び港運併用船を含み、塩の二次輸送船、原油の二次輪送船及び沖縄復帰に係る石油製品用許認可船は含まない。
2.( )は構成比(%)である。
 
図表2−1−65 内航船の船種別船腹量
船種 平成元年3月31日 平成14年3月31日
隻数 総トン数 隻数 総トン数
貨物船 5472 1576146
(274)
4110 1555867
(379)
土・砂利・石材専用船 1079 424554
(393)
998 774316
(746)
セメント専用船 186 376556
(2024)
185 446150
(2412)
自動車専用船 60 148004
(2467)
53 207540
(3916)
油送船 1811 862495
(476)
1251 778551
(622)
特殊タンク船 590 281881
(478)
421 222116
(528)
合計 9468 3669636
(388)
7018 3954540
(563)
○国土交通省海事局調べ
(注)1. 内外航併用船及び港運併用船を含み、塩の二次輸送船、原油の二次輸送船及び沖縄復帰に係る石油製品用許認可船は含まない。
2.( )は平均総トン数である。
 
図表2−1−66 内航船の船齢別船腹量
船齢区分 平成元年3月31日 平成14年3月31日
隻数 総トン数(千トン) 隻数 総トン数(千トン)
合計 9,228(100) 3,652(100) 6,859(100) 3,936(100)
7年未満 2,118(23) 1,176(92)
[555]
1,180(17) 1,190(30)
[1026]
7年以上14年未満 2,204(24) 1,125(31)
[510]
2,477(36) 1,688(43)
[681]
14年以上 4,906(53) 1,351(37)
[275]
3,222(47) 1,059(27)
[329]
○国土交通省海事局調べ
(注)塩の二次輸送船、原油の二次輸送於及び沖縄復帰に係る石油製品用許認可船を除く。
3. 〔 〕は平均総トン数であり( )は構成比(%)である。
 
 平成14年3月に策定した平成13年度〜17年度の適正船腹量は図表2−1−67のとおりである。その際の考え方は次のとおりである。13年度の我が国の経済は、景気の低迷が続いており、それにより全般的に国内貨物の輸送需要が低迷している。貨物船について、12年度は船腹需要が概ね均衡状態にあると考えていたが、13年度は鉄鋼、石灰石をはじめとする貨物船の主要貨物が不況の影響により大幅に減少する見込みであることから、大幅な船腹過剰になるものと考えられる。油送船について、内航海運暫定措置事業の進展による解撤効果等もあり、12年度と比べて、船腹過剰量は一定程度減少するものの、依然として船腹過剰状態となっている。
 また、14年度以降については、関空2期、中部国際空港及び神戸空港の埋立工事が平成14年度を境にピークを過ぎるため、土・砂利・石材専用船の需要がそれ以降に急減するほかは、概ね13年度の数値でほぼ横ばい基調に推移するものと考えられる。
 
図表2−1−67 平成13〜17年度内航適正船腹量
船種 現有船腹量
(平成13年6月30日現在)
適正船腹量
13年度 14年度 15年度 16年度 17年度
貨物船 1,608 1,546
(62)
1,531
(77)
1,528
(80)
1,531
(77)
1,534
(74)
2,826 2,718
(108)
2,690
(136)
2,686
(140)
2,691
(135)
2,696
(130)
セメント専用船 446 431
(15)
431
(15)
431
(15)
431
(15)
431
(15)
725 700
(25)
700
(25)
700
(25)
700
(25)
700
(25)
自動車専用船 161 159
(2)
158
(3)
158
(3)
158
(3)
158
(3)
130 128
(2)
128
(2)
128
(2)
128
(2)
128
(2)
土・砂利・石材専用船 638 635
(3)
633
(5)
606
(32)
589
(49)
537
(101)
1,220 1,215
(5)
1,211
(9)
1,159
(61)
1,127
(93)
1,027
(193
油送船 779 726
(53)
717
(62)
721
(58)
718
(61)
712
(67)
1,726 1,608
(118)
1,590
(136)
1,597
(129)
15,901
(136)
1,577
(149)
特殊タンク船 222 222
(3)
222
(3)
222
(3)
222
(3)
222
(3)
356 352
(4)
352
(4)
352
(4)
352
(4)
352
(4)
○平成14年国土交通省告示第265号(平成14年3月29日)による。
(注)1. ( )内は、平成13月6月30日現在の船腹量に対する過剰船腹量である。
2. 内外航併用船を含み、塩の二次輪送船、原油の二次輸送船及び沖縄複帰に係る石油製品用許認可船は含まない。







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