日本財団 図書館

共通ヘッダを読みとばす


Top > 技術 > 海洋工学.船舶工学.兵器 > 成果物情報

会報「中小型造船」 No.350

 事業名 基盤整備
 団体名 日本中小型造船工業会 注目度注目度5


海外事務所活動レポート
ジェトロ・ニューヨーク・センター船舶部 市川吉郎駐在員
 
1. 圧縮天然ガス(CNG)開発の動向
 
<現代重工、川崎汽船、EnerSea Transport社とCNG輸送船開発で提携>
 6月27日、ヒューストンのEnerSea Transport LLC社は韓国の現代重工と圧縮天然ガス(CNG)海上輸送船(VOTRANS)開発で戦略的パートナーシップを結んだことを発表した。当初は、EnerSea社のVOTRANS型船の設計の完成と「class approval in principle」取得を目標とし、これを達成した後に現代重工が第1船を建造することになっている。また、7月22日には、川崎汽船が船主としてVOTRANSプロジェクトに参画することを発表した。
 
<CNG輸送船開発プロジェクト>
 世界各地で、海洋油田の大水深掘削、生産技術が進み、パイプライン網へのアクセスのない遠隔海域において、浮体式生産施設とシャトルタンカーの組み合わせによる生産方式が浮上している。このような、遠隔海域における石油生産において、随伴ガスが算出した場合、大気放出・燃焼(フレアリング)処理を行うのが従来の方法であった。
 しかし、環境保護法や石油会社の社会的道義から、随伴ガスの燃焼処理という選択肢は消えつつある。この他の選択肢は、ガスの再注入と、鉱区放棄であるが、どちらもコストがかかり、随伴ガスの処理コストは急騰している。
 そのため、オフショア探鉱・生産業界は随伴ガスの商品化を検討している。北海のリグでは、随伴ガスを利用して発電を行い、海底ケーブルを通して陸に送電しているものもあるが、この方式を採用できる油田は限られている。
 もう一つの商品化構想は、随伴ガスをCNG(Compressed Natural Gas:圧縮天然ガス)やLNG、メタノール、合成原油のような海上輸送可能な製品に変えることである。その中でもCNG化は液化施設を必要としないこと、Stranded Gas(市場へのアクセスがない、またはほとんどない場所にある天然ガス。そのため大部分は25年以内に生産されないと考えられている)の開発、小規模市場へのスポット輸送に適していることから、CNG海上輸送技術開発の動きが活発化し始めている。
 
<VOTRANS(Volume Optimized Transport and Storage)CNGシステム開発プロジェクト>
 現代重工と川崎汽船の参画の発表により最近注目を集めているVOTRANSプロジェクトはテキサス州ヒューストンのEnerSea Transport社によるプロジェクトである。同社は有限責任会社(LLP)であるため、事業の詳細は明らかではないが、VOTRANSプロジェクトのために設立されたベンチャー企業とみられ、石油会社、投資会社等から資金集めを行っているようである。
 EnerSea Transport のプロジェクトチームはPaul Britton、Charles White、John Dunlopの3人のPE(石油技師)からなり、3人ともCONOCOに勤めた経歴がある。
VOTRANS開発プロジェクトの経過
2001年9月:VOTRANSの実用化計画を発表。
2001年11月:カナダのセントジョンのAMIオフショア社とVOTRANSの実用化支援のMOUに署名。
2002年6月:EnerSeaとAMIオフショア、VOTRANSのカナダ大西洋岸でのマーケティングのためにジョイント・ベンチャー、EnerSea Canada社、を創設。
2002年6月:VOTRAS初期設計で韓国の現代重工と提携。
2002年7月:川崎汽船が船主・オペレーターとしてプロジェクトに参画
 VOTRANSプロジェクトには現在、現代重工、川崎汽船、AMIオフショアの他、ABS(船級協会)、Lone Star,R.S.,Platou&Braemar Inc.(ブローカー)が戦略パートナーとして参画している。
 EnerSeaは、VOTRANS事業開発の過程で同じ技術を利用したCNG陸上貯蔵システムであるVOLANDを立ち上げている。こちらは、Duke Energy社(2001年年商600億ドル)と提携している。
VOTRANS CNG海上輸送システム
 VOTRANSは断熱構造の専用船で大口径の長いパイプをマニフォルドでつないで積み重ねたCNG貨物パッケージを輸送する、という構想である。長時間にわたって低温を維持するために、パイプ構造は窒素充填による断熱「Cold Box」内に収納される。当該技術については特許申請済みとされているが、詳細については不明である。
 VOTRANS船は最大5,664万m3のCNGを、最大約6,500kmの距離で、LNGより大幅に低コストで輸送する能力があるとされている。EnerSea社によれば、VOTRANSの設備投資コストはLNGよりも低く、ターミナル・コストは設備投資コストの15%(LNGの場合60%)、輸送・処理時のガスのロスは7%以下(LNGは20%近く)だとしている。第一船は現代重工で建造される予定であるが、EnerSeaは改造の可能性も検討しており、アフラマックス型で200〜500MMCF(5,664,000〜1,416,000m3)、スエズマックスが他で400〜700MMCF(16,992,000〜33,984,000m3)のキャパシティとなると考えられている。
 
<Coselle(Coiled Carouse)CNG貯蔵システム>
 1996年に創立されたカルガリーのエンジニアリング会社Cran&Stenning Technology Inc.は1990年代の半ばにJames CranとDavid Stenningが発明したCoselle技術を利用したCNGの海洋輸送システムの開発を行っている。
 Coselle技術は1990年代末に3件の米国特許を取得した。1996年にEnron Transportation Serviceが加圧輸送船舶全般のフィージビリティ研究の一貫として、Coselleコンセプトの初期エンジニアリングに出資した。EnronはインドのDahbol発電所プロジェクトでの利用を検討していたようだが、同プロジェクトでは最終的にLNGが採用された。
 1998年にエンロンはCran&Stenningに同コンセプトの使用権、ライセンシング権を与えた。1999−2000年に7ヵ月にわたり50万ドルを投じた業界合同プロジェクト(Joint Industry Project)が実施され、BG、Chevron、Conoco、Mobil、Shell、Fluor Daniel、MacDermott、BHP、Marathon社がこれに参加した。合同プロジェクトの研究では、第一船の船価は韓国建造で1億1,000万から1億2,000万ドルとなるという結論が出された。
 2001年に、Williams Energy社がCoselle技術を買収した。その後の開発状況は非公開となっているが、2002年5月現在、Coselleシステムのプロトタイプを製造中とされている。
 Coselleシステムは、大量生産されている標準的な直径6インチのスチール・パイプを直径13〜15m、高さ3〜4mのコイル状の束に巻き、これに加圧したガスを送り込むというものである。
 同システムは、LNG輸送とパイプライン輸送の間隙を狙い、市場からの距離が約3,200km以内で、LNG、パイプライン輸送では採算の取れない比較的小型の未開発ガス田、また石油生産に伴い発生する随伴ガスに焦点を当てている。
 基本シナリオでは、Coselle輸送船はパナマックス型を利用、108のCoselleシステムを6段に重ねて搭載する。この場合のガス輸送能力は3億3,00万立方フィート(9,345,600m3)、ガスの重量は7,700トンとされている。(ほぼ同型のLNG船ではガスの積載能力は7倍以上となる。)
また、小規模輸送手段としてタグ/バージヘの搭載も検討されている。
 
Coselle CNG貯蔵システム
(拡大画面:44KB)
(拡大画面:20KB)
(拡大画面:29KB)
米国特許番号6,003,460
(1999年12月21日)
 
<GTM(GAS TRANSPORT MODULES)>
 GTMは、北米の大手エネルギー会社であるTransCanada社がNCF Industries社とライセンス契約を結び開発している天然ガス輸送用複合材強化圧力容器によるCNG輸送構想である。TransCanadaによれば、容器の加圧時の圧力は3000psiとなり、トラック輸送では最大25万立法フィート、バージで3,000万立法フィート、船舶輸送では10億立法フィートのキャパシティを目標としている。
 詳細は明らかではないが、NCF Industries社の社長であるNomman C.Fawley氏は加圧ガス、液体用パイプラインの強化技術について複数の特許を保有しており、グラスファイバーと樹脂を使って強化した圧力容器が開発されている模様である。TransCanadaは、GTMは、鋼製のCNG輸送容器に比べ、容積あたり40%の重量減が可能であり、従来型のシリンダーよりも大型化することにより、バルブ、マニフォルドの必要数を少なくすることができるとしている。
 輸送方法は、同型のシリンダーモジュールを、トラック、貨車、バージ、船舶に積載するというものである。
 
<Oceanic CNG>
 Oceanic CNGはC−Natural GasによるCNG海洋輸送構想とされているが、詳細は不明である。C−Natural Gas社についても、実態は不明である。
 
<CNG海上輸送関連の特許取得状況>
 ここ数年、CNG海上輸送技術関連の特許申請/特許取得(米国特許庁)の事例をいくつか挙げる。
・Ship Based Gas Transport System(船型ガス輸送システム)
米国特許番号:5,839,383、特許取得日:1998年11月24日、申請日:1996年10月1日
発明者:David G.Stenning;James A.Cran(カナダ)
譲受人:Enron LNG Development Corp.,(テキサス州ヒューストン)
・Ship Based Gas Transport System(船型ガス輸送システム)
米国特許番号:6,003,460、特許取得日:1999年12月21日、申請日:1998年6月22日
発明者:David G.Stennig;James A.Cran(カナダ)
譲受人:Enron LNG Development Corp.,(テキサス州ヒューストン)
・Ship Based System For Compressed Natural Gas Transport(船型圧縮天然ガス輸送システム)
米国特許番号:5,803,005、特許取得日:1998年9月8日、申請日:1997年6月30日
発明者:David G.Stennig;James A.Cran(カナダ)
譲受人:Enron LNG Development Corp.,(テキサス州ヒューストン)
 上記の3つの特許は、先に概説したCoselle(Coiled Carouse)プロジェクトの基となっている技術およびシステムである。
・Submersible Apparatus For Transporting Compressed Gas(圧縮ガス輸送用没水式設備)
米国特許番号:US6,260,501 B1、特許取得日:2001年7月12日、申請日:2000年3月17日
発明者:Arthur Patrick Agnew(カナダ)
 比較的小口径のラインパイプを中心に穴のあいたスプールにまきつけ、シリンダー状のタンク内にスプールを並べるものである。タンクは係留制御装置を搭載し、圧縮ガスを動力源とするタグボートにより曳航される。タンクの浮力の調整メカニズム(バラスト室)により、タンクを水没させることにより圧縮ガスの温度の変化を最小限におさえ、またローディング、アンローディング時には浮上させることができる。開発状況は不明。
 
(拡大画面:43KB)
出典:米国特許番号US6,260,501
 
・Natural Gas Composition Transport System And Method(天然ガス合成物輸送システムと方法)
米国特許番号:US6339996 B1、特許取得日:2002年1月22日、申請日:2000年4月19日
発明者:Steven Cambell(カナダ)
譲受人:Steven Cambell(カナダ)
 TransCanadaのGTMシステムに最も近いと思われるシステムである。同システムは外気温でのCNG及びCNGL(Compressed Natural Gas Liquid)の輸送用に設計されている。
 Cambellは複合材圧力容器を使用することにより、鋼製容器に比べ大幅に軽量化となり、耐破断性も高まるとしている。さらに、同特許のクレームには、複数の圧力容器でガスと液体を同時に輸送する場合、船のバラストとの関係で、重心の不均衡が大きな問題とことの解決策として、複合材圧力容器を直立式に並べることによる重心の安定も含まれている。
 
FIG.1
FIG.2
米国特許番号 6,339,996
 
・Method And Apparatus For Compressed Gas(圧縮ガス向け方法と装置)
米国特許申請公示番号:US2002/0046547 A1、公示日:2002年4月25日、申請日:2001年8月31日
発明者:Willam M.Bishop、Charles N.White、David J.Pemberton(テキサス)
代理人:Conley Rose&Tayon, P.C.
 本特許は申請中のものであるが、その内容はVOTRANSシステムに最も近いと考えられる。(EnerSeaが申請中としている特許である可能性があるが、確認はとれない)。発明内容は、圧縮ガスの貯蔵・輸送を最適化するガス貯蔵システムであり、複数のパイプを水平に並べるものである。
 同発明は船舶による輸送を前提としたものであり、専用船の場合、船体構造にパイプ・サポートを組み込む、船体をコンパートメントに分けそれぞれに窒素を充填する、ガス温度の上昇を防ぐために船体を断熱する、とされている。また、ガス貯蔵パイプをハル部分に組み込んだコンクリート製船体に船首、船尾をとりつける設計が代替方法として提示されている。ガス貯蔵システムは、モジュラー・ユニットとして建造し、船舶の船体内に据付け、または甲板上に据え付けることもできる。







サイトに関するご意見・ご質問・お問合せ   サイトマップ   個人情報保護

日本財団会長笹川陽平ブログはこちら



ランキング
注目度とは?
成果物アクセスランキング
1,848位
(31,497成果物中)

成果物アクセス数
4,420

集計期間:成果物公開〜現在
更新日: 2019年10月12日

関連する他の成果物

1.会報「中小型造船」 No.349
2.会報「中小型造船」 No.351
3.会報「中小型造船」 No.352
4.会報「中小型造船」 No.348
5.Ship&Ocean Newsletter No.40?No.63
  [ 同じカテゴリの成果物 ]


アンケートにご協力
御願いします

この成果物は
お役に立ちましたか?


とても役に立った
まあまあ
普通
いまいち
全く役に立たなかった


この成果物をどのような
目的でご覧になりましたか?


レポート等の作成の
参考資料として
研究の一助として
関係者として参照した
興味があったので
間違って辿り着いただけ


ご意見・ご感想

ここで入力されたご質問・資料請求には、ご回答できません。






その他・お問い合わせ
ご質問は こちら から