日本財団 図書館


16.4 サーフェスフォースのメカニズムとプロペラ直上の船底外板の変動圧力分布
 
 船体に働くサーフェスフォースのメカニズムヲモデル的に図示すると下図左のようになる。船底外板パネルは各翼が通過する度に吸い出され、押入れられる。
 又、プロペラ直上の船底外板に加わる変動水圧分布は下図右の通りで、プロペラ中心部でピークとなるが変動圧全体の分布範囲は小さく、プロペラ中心から前後左右方向にプロペラ半径程度離れると消滅する。従って船底外板の補強・増厚もその範囲以上に行う必要はない。
 
船体に働くサーフェスフォースのメカニズム
 
船底の変動圧力分布
 
16.5 プロペラ翼数と起振力
 
 奇数翼、偶数翼による起振力発生メカニズムの違いを右図に示す。奇数翼では偶数翼に較ベスラスト変動及びトルク変動は小さいが、逆に水平起振力が大きく、偶数翼はその反対の傾向にある。
 
プロペラ翼数と起振力
 
奇数翼
合力=F1+F2
合偶力=(F1-F2)・ε/2=0
 
偶数翼
合力=F1-F2=0
合偶力=(F1+F2)・ε/2
 
16.6 翼先端と船体との間隙とサーフェスフォースの関係
 
 右図に示すように、翼先端と船体との間隙(ティップクリアランス)が大きい程、又同一出力の場合、同一間隙比でも翼数が増える程圧力振幅係数、従って変動水圧が減少することが判る。
 本図から見ても、C/Dpは0.2以上が望ましい(Cはティップクリアランス)。
 
翼先端と船体との間隙とサーフェスフォース
 
16.7 プロペラ起振力のよる損傷
 
1)船体振動には共振と強制振動の2つがあるが、適正設計の船体では共振を起こすことは殆どなく、例えばプロペラ直上の外板やタンク等の損傷の大部分は強制振動によって生じることが多い。
 
2)パネル等部材の固有振動数がプロペラ回転数×翼数と合致すると共振を起こす。小型高速漁船ではブロペラ回転数は1,000以下、翼数も4翼以下が殆どであるから、固有振動数が4,000cpm以下となると共振を起こす可能性が大きくなる。(Fig.15−1参照)
 
3)固有振動数は四辺の固着条件や接水条件で変わる。大凡の見当としては次のようになる。
支持では固定の約1/2、片面接水では空中の約1/3、両面接水では片面の約2/3
 
4)3翼では4翼より水平力が大きくなるから、シューピースにかかる舵の反力及び旋回時の水抵抗とも合わせ、船尾材の船体固着部には大きな繰り返し曲げモーメントが働き、この部の強度が不足すると疲労破壊を生じる。遺物衝突等によりプロペラ翼が曲/折損したばあいには条件は更に厳しくなる。
 
5)3翼では4翼より水平力の変動が大きいから、軸及び軸受に対する影響は4翼よりも厳しい。3翼CPPでは軸受の損傷が4翼より多いこともこの理由からであろう。
 逆に4翼は3翼に較ベトルク変動が大きいので、軸のねじり振動に対する影響は3翼より大きい。従って主機のトルク変動成分の位相とプロペラのそれが一致しないよう、クランク軸とプロペラの取付角に注意しなければならない。
 
6)強制振動による損傷は殆ど疲労破壊である。これを防ぐには以下のことが必要である。
 
●プロペラティップ間隙を大きくしてプロペラ起振力を小さくする。※
●強度・剛性の連続性を保ち、ウイークポイントを作らない。
●ハードスポットや過度の残留応力部を作らない。
●変動水圧部は増厚し、また過大なフレームスペースとしない。
●骨材端部は肘板固着とし、スニップエンドは避ける。肘板のトゥー部はソフトにする。
●要所に倒れ止めを設ける。
●スロット部にはカラープレート又はフイラープレートを付ける。
●船底、船側(下部)の隅肉溶接は連続とする。
●コーナーRを大きくする。
●剛な部材と柔な部材の取合い部は特にソフト化に留意する。
●工作精度を守り、無理な取付、目違いは避ける。
●工作欠陥(ノッチ、切傷、不良ビード、仮付けビード等)は必ず手直しする。
●キャビテーション防止策
△キャビテーションの生じ難い船型の採用
△スキュードプロペラの採用
△船尾材やスケグ後縁のフェア化
△プロペラヘの空気吸込み防止
 
16.8 プロペラーティツプクリアランス標準
 
(拡大画面:54KB)
 

関東造機研究会では、C/DPは0.10〜0.18を標準としているが、これは主として低速船対象であり、高速船ではこれ以上とするのが望ましい。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION