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16. プロペラの起振力
16.1 ベアリングフォースとサーフェスフォース
 
 プロペラの起振力はベアリングフォースとサーフェスフォースの2つに分けられる。
 
●ベアリングフォース
 
 不均一流中のプロペラ翼に加わる流体力の変化が軸系及び軸受を通して船体に伝えられる起振力。
 
 下図のように6成分の力及び偶力に分けられる。
 
プロペラの起振力
 
●サーフェスフォース
 
 プロペラの回転に伴って、付近の船体表面に加わる水圧変動を表面積について積分して得られる起振力。
 
 上下、左右の2種類がある。(後述)
 
16.2 翼の周りの圧力分布とキャビテーション/エロージョン
 
 プロペラが水流中を高速で回転すると、背面の流速は正面(圧力面)より速くなり、圧力面は正圧、背面は負圧となり、翼面に揚力が発生する。
 (揚力の約70%は背面の負圧による)
 
 背面の流速が非常に速くなると、更に背面の圧力が低下し、常温でも水が蒸発して気泡(キャビティ)を生じるようになる。この現象をキャビテーションと云う。
 
 気泡は圧力の高くなる翼の後縁近くに移り、そこで崩壊する。
この圧壊衝撃圧により翼の表面が荒らされてザラザラになる現象をエロージョンと云う。
 
翼断面周りの圧力分布
 
キャビテーションとエロージョン
 
16.3 不均一流内を回転するプロペラ翼
 
 水には粘性があるため、船が走ると外板に極めて近い水の部分は船に引きずられて船と同じ方向に進む。また船尾材等の後縁形状が適切でないとそこに渦を生じ、その部の水も船体にひきずられて進む。
 この、船に引きずられ、船を追いかける水の流れを伴流(wake)と云う。
 この伴流は船尾で最も大きく、特に1軸船ではプロペラ近傍の船尾材上端部で最大となり、下方及び舷側方向に行くにつれて小さくなる。
 
 今、船の速度をVS、伴流の速度をVW、プロペラの対水速度(プロペラに流れ込む水の速度)をVAとすれば、
 
VW=VS−VA
 
また、伴流係数をw=VW/VSとすれば、
 
w=(VS−VA)/VS=1−VA/VS
 
 右上部に1軸漁船の伴流係数w分布の例を示す。この例では、プロペラに入る流速は、プロペラ上部では船速の20%程度、軸心位置の両側で100%、船体中心線下方で60%程度になることが判る。
 
 即ち、ブロペラの翼1枚は流入速度の異なる不均一流の中を1回転することになる。
 
 プロペラヘの流入速度が変化すれば、下図のように入射角(流入角)が変化するから、当然翼により発生する揚力(推力)も変化する。
 
 即ち、プロペラの各翼は1回転中に不均一流内を横切るため揚力(推力)の変動を生じ、これが船体振動や船体・軸系損傷の一因となる。
 
船尾プロペラ位置での伴流分布例
(伴流係数w,1軸漁船)
 
流速と入射角







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