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6.3 簡易計測法
6.3.1 一般
6.3.1.1  本項に規定される以下の簡易試験及び計測法は、必要な時に実施される船上での確認試験と定期検査と中間検査にのみ適用される。試験台上における全ての最初のエンジンに対する試験を、DM級の舶用ディーゼル燃料を使用し、第5章に規定されている方法に従い実施しなければならない。船舶は、NOx排出値の差を引き起こす、気温の高低、湿度の高低のある中を航行するため、5.12.3に従い、周囲雰囲気の温度と湿度に対する補正は必要不可欠である。
6.3.1.2  船上での確認試験と定期検査と中間検査で有意義な結果を得るために、最低限O2又はCO2及びCOと共に、NOxの排気ガス濃度を、該当するテストサイクルに従い計測しなければならない。計算に使用される、重み付け係数(WF)とモード番号(n)は、3.2に従うこと。
6.3.1.3  エンジントルクとエンジン回転数を計測しなければならないが、手順を簡易化するため、船上検証のためのエンジンに関係したパラメータの計測器に対する許容誤差(6.3.7参照)は、試験台上における試験法で許される計測器に対する許容誤差とは異なっている。トルクを直接計測することが困難な場合には、軸出力はエンジンメーカが推奨し、かつ、主管庁が認める他の方法により推定されてよい。
6.3.1.4  実際には、エンジンがいったん船に搭載されてしまうと、燃料消費量を計測することが不可能な場合が多い。船上での手順を簡易化するため、試験台上における予備認証試験の燃料消費量計測結果は受け入れられる。このような場合、特に重質油運転に関しては、推定誤差を考慮した推定を行うこと。計算に用いられる燃料流量(GFUEL)は、試験中に抜き取られたそれぞれの燃料サンプルによって決まる燃料消費量に関係するため、試験台上における試験によって得られたGFUELの数値を、試験台における燃料と試験燃料の間での実発熱量の違いにより補正しなければならない。最終排出値に関するこのような誤差の結果を、計算し、排出値計測結果と共に報告しなければならない。
6.3.1.5  別に述べられている場合を除き、本章で要求されている、全ての計測結果、試験データ又は計算結果を、5.10に従いエンジン試験報告書に記録しなければならない。
 
6.3.2 計測・記録しなければならないエンジンパラメータ
 Table6に船上で行われる確認試験時に計測・記録しなければならないエンジンのパラメータを示す。
 
Table6 計測・記録しなければならないエンジンパラメータ
記号 計測項目 単位
bx,i 燃料消費率:(可能ならば)(サイクルの第ithモードにおける値) kg/kWh
Ha 絶対湿度(乾き空気の重量に対するエンジン吸入空気が含む水分の重量) g/kg
nd,i エンジン回転数(サイクルの第ithモードにおける値) min-1
nturb,i ターボチャージャ回転数(該当する場合)(サイクルの第ithモードにおける値) min-1
PB 大気圧(ISO 3046−1,1995:px=Px=試験場所の大気圧力) kPa
Pbe,i 空気冷却器出口での給気圧力(サイクルの第ithモードにおける値) kPa
Pi 軸出力(サイクルの第ithモードにおける値) kW
Si 燃料ラック位置(各気筒毎、該当する場合)(サイクルの第ithモードにおける値)  
Ta 吸入空気温度(ISO 3046−1,1995:Tx=Ttx=試験場所の熱力学上の空気温度) K
Tba,i 空気冷却器出ロでの給気温度(サイクルの第ithモードにおける値) K
Tclin 冷却水入口温度 K
Tclout 冷却水出口温度 K
TExh,i サンプリングポイントの排気ガス温度(サイクルの第ithモードにおける値) K
TFuel 燃料油温度、エンジン入口前 K
Tsea 海水温度 K
Toil out/in 潤滑油温度、出ロ/入ロ K
 
6.3.3 軸出力
6.3.3.1  船上でのNOx試験中に必要なデータを得られるかどうかに関しては、特に軸出力に関係するものである。第5章にギヤボックスに直接連結されている場合が考慮されているが、エンジンは、多くの仕様において船上に搭載されることがあるので、適当な軸がなくトルク(特別に装備された歪みゲージにより得られる)の計測ができないように配置される場合がある。このようなグループの主要なものは発電機であるが、エンジンは、ポンプ、油圧装置、コンプレッサ等にも連結されることがある。
6.3.3.2  その様な装置を駆動するエンジンは、船上に搭載され、動力を消費するユニットに恒久的に連結される前に、製造段階で水動力計で試験されることが一般的である。発電機では、メーカーの公表している発電機効率とともに電圧と電流の計測値を用いれば、これは問題にはならないだろう。プロペラ則に従う装置では、公表された回転−出力曲線を、自由端の速度から、あるいは例えばカムシャフトの速度比からエンジン速度を計測する方法と共に用いてもよい。
 
6.3.4 テスト燃料
6.3.4.1  通常、全ての排ガス計測は、ISO 8217(1996)のDM級の舶用ディーゼル燃料を使用して実施されること。
6.3.4.2 船主の受け入れがたい負担を避けるために、確認試験あるいは再検査における計測では、エンジン製造者の推奨と主管庁の承認に基づき、ISO 8217(1996)のRM級の重質燃科の使用が許される。このような場合、燃料中の窒素分と燃料の着火性能は、エンジンのNOx排出物に影響する。
 
6.3.5 排出ガスの採取
6.3.5.1  5.9.3に記載される一般的な規定は、船上の計測にも適用される。
6.3.5.2  全てのエンジンの船上への搭載は、これらの試験が安全に実施でき、かつエンジンヘの干渉が最小になるよう行われること。排出ガス採取のための適切な準備と、必要なデータを得ることのできる設備が、船に備えられていること。全てのエンジンの煙道を標準的な採取ポイントに接近し易く配置しなければならない。
 
6.3.6 計測装置と計測しなければならないデータ
 汚染をもたらす排出ガスを、第5章に記載される方法により計測しなければならない。
 
6.3.7 エンジン関連パラメータとその他必要パラメータに関する計測器の許容誤差
 本コードの付録4の1.3.2にあるTable3とTable4に、船上の確認試験中にエンジン関連のパラメータとその他の必要なパラメータの計測に使用する計測器の許容誤差を示す。
 
6.3.8 ガス成分の決定
 第5章に記載される分析計測器と計測方法を使用すること。
 
6.3.9 テストサイクル
6.3.9.1  船上において使用されるテストサイクルは、3.2に規定される該当するテストサイクルに一致すること。
6.3.9.2  3.2に規定されたテストサイクルのもとでの船上におけるエンジンの運転は、常に可能であるとは限らないが、試験手順は、エンジン製造者の推奨と主管庁の承認に基づき、3.2に定義された手順にできるだけ近いものとすること。従って、計測値はテストサイクルに大きく依存するため、このような状態で計測された値を、試験台の結果と直接比較してはならない。
6.3.9.3  船上の計測点の数が、試験台上におけるものと異なる場合は、計測点と重み付け係数は、エンジン製造者の推奨に従い、主管庁に承認されなければならない。
 
6.3.10 排出ガスの計算
この簡易計測法の特別要件を考慮しつつ、第5章に規定された計算方法を適用すること。
 
6.3.11 許容差
6.3.11.1  船上において本章の簡易計測法を適用する時に発生し得る誤差のため、確認試験と定期検査と中間検査にのみ、該当する制限値の10%の許容が認められる。
6.3.11.2  エンジンのNOx排出値は、燃料の着火性と燃料中の窒素分により変化する。燃焼過程におけるNOx生成に対する着火性の影響、及びエンジンの効率にも依存する燃料中の窒素分の変換比に関する有効な十分な情報がない場合、RM 級燃料(ISO 8217、1996)を使用した船上での試験では、10%の許容が認められる。ただし、船上での予備認証試験ではこの許容は認められない。使用された燃料油は、その組成を炭素、水素、窒素、硫黄及び、ISO 8217(1996)に示される範囲で、燃料の仕様を明確にするために必要なそのほかの成分について分析されること。
6.3.11.3  船上の簡易計測法とISO 8217(1996)によるRM級の重質燃料の使用の両方についての合計の許容は、該当する制限値の15%を越えてはならない。







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