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第6章 船上におけるNOx排出規制の適合確認の手順
 
6.1 一般
 予備認証されたエンジンを船内に搭載した後、すべての舶用エンジンは2.1.1.2から2.1.1.4で示される船上における確認検査を行い、附属書VIの第13規則に含まれるNOx排出制限値に継続して適合することを確認しなければならない。この確認は次のいずれかの方法を用いて行わなければならない。
.1 エンジン構成部品、設定値、運転値がテクニカルファイルで決められた値から外れていないかどうかを検証するための6.2に基づくエンジンパラメータチェック法。
.2 6.3に基づく簡易計測法。
.3 2.3.4、2.3.5、2.3.7、2.3.8、2.3.11、2.4.4及び5.5に基づく直接計測及び監視法。
 
6.2 エンジンパラメータチェック法
6.2.1 一般
6.2.1.1  以下の状態にあるエンジンには、エンジンパラメータチェック法が適している。
.1 試験台上の試験で予備証書(EIAPP証書)を受有しているエンジン、及び初回検査により証書(IAPP証書)を受有しているエンジン。
.2 前回検査されてから指定されたエンジン構成部品や調整可能箇所に対して改造又は調整がなされているエンジン。
6.2.1.2  6.2.1.1にいうエンジンに対して、NOx排出レベルに影響を与える構成部品及び調整可能な部分の変更があった場合においては、エンジンパラメータチェック法を行わなければならない。この方法はNOx排出制限値に適合することを確認するために用いられる。船に搭載されたエンジンは、NOx排出レベルに影響を与えるエンジン構成部品、調整可能な部分、エンジンパラメータのチェックが容易に行えるように予め設計されていなければならない。
6.2.1.3  また、ディーゼルエンジンが規定されたNOx排出制限値内で運転されるように設計されている場合は、そのエンジンが船舶に搭載されている間は、NOx排出制限値を維持できると見なせる。しかしながら、エンジンの調整や改造により規定されたNOx排出制限値を逸脱することがある。そのため、エンジンパラメータチェック法は、エンジンが規定されたNOx排出制限値内に維持されているかどうかを確認するために用いられる。
6.2.1.4  設定値やエンジンの運転値のチェックを含めたエンジン構成部品のチェックは、エンジンの調整又は改造が全くないか、あるいはわずかにあったとしても、適用されるNOx排出制限値に適合することを検証する目的で、エンジンの排気ガス特性を推定する簡便な方法として用いられる。
6.2.1.5  このチェックの目的は、エンジンが製造者仕様書に基づき正しく調整され、附属書VIの第13規則に適合しているという主管庁による初回認証に整合する調整状態が維持されていることを確認する事前の準備された手段を与えることである。
6.2.1.6  エンジンの電子制御装置を採用している場合、製造時の制限値内で適当なパラメータが作動していることを確認するために、初期設定に比較して評価しなければならない。
6.2.1.7  附属書VI第13規則への適合を評価する目的のためには、後処理装置が装備されないエンジンがNOx排出制限値に適合していることを確認するために必ずしも常にNOxレベルを計測する必要はない。初回認証時における、特定された構成部品、計測又はパラメータ調整の状態に対応する現在のエンジンの状態を知ることで十分である。エンジンパラメータチェック法によりエンジンがNOx排出制限値に適合していることが判った場合、エンジンは直接NOx計測によらずとも再認証される。
6.2.1.8  後処理装置が装備されるエンジンについては、パラメータチェックの一部として後処理装置の作動をチェックする必要がある。
 
6.2.2 エンジンパラメータチェック法の手順
6.2.2.1  エンジンパラメータチェック法は次の2つの手順によって実行されること。
.1 エンジンパラメータの書類審査を他の検査に加えて実施すること。それはエンジンパラメータを含む記録簿の調査と、エンジンパラメータがテクニカルファイルで特定された許容範囲内にあることの検証を含むこと。そして
.2 必要に応じて書類審査に加えて、エンジン構成部品と調整可能な部分の現場の検査を実施すること。書類審査の結果を参照しながら、エンジンの調整可能な部分が、テクニカルファイルで特定された許容範囲内であることを確認すること。
6.2.2.2  サーベイヤーは、調整又は改造が全くないかあるいは僅かにあったとしても、エンジンが適用される排出制限値に適合することを確認するため、また、通用する仕様の構成部品のみが用いられていることを確認するため、ひとつあるいは全ての構成部品、設定値又は運転値をチェックする権利を有する。仕様書中の調整又は改造がテクニカルファイルで参照されている場合、それらの値は製造者によって推奨され、主管庁により承認された範囲内になければならない。
 
6.2.3 エンジンパラメータチェック法に関する書類
6.2.3.1  全ての舶用ディーゼルエンジンは、排気ガス性状に影響を与え、かつ適合への確認のためにチェックしなければならないエンジン構成部品、設定値、運転値について特定する2.3.6に要求されるテクニカルファイルを持たなければならない。
6.2.3.2  エンジンパラメータチェック法の実施が要求されるディーゼルエンジンを備えた船舶の船主又は責任者は、船上におけるNOx検証方法に関して、以下の書類を船に備え付けなければならない。
.1 エンジン構成部品、設定値に関する全ての変更点を記録するためのエンジンパラメータ記録簿。
.2 エンジン製造者により提出され主管庁から承認された、エンジンに指定された構成部品及び設定値についてのエンジンパラメータリスト、又はエンジンの負荷特性による運転値に関する書類。
.3 指定されたエンジン構成部品に変更が加えられた場合は、その構成部品の変更に関する技術書類。
 
6.2.3.3 エンジンパラメータ記録簿
 エンジンの調整、構成部品の交換や改造を含む、指定されたエンジンパラメータに影響を及ぼす変更に関する記述を、エンジンパラメータ記録簿に日付順に記録しなければならない。これらの記述を、エンジンのNOxレベルを評価する為に必要な他の適切なデータで補足しなければならない。
 
6.2.3.4 船上で変更されうるNOxに影響を及ぼすパラメータのリスト
6.2.3.4.1  特定のエンジンの個有の設計によって、NOxに影響を及ぼす改造や調整は異なる可能性があり、また、これが通常である。これらは以下のエンジンパラメータを含んでいる。
.1 噴射タイミング
.2 噴射ノズル
.3 噴射ポンプ
.4 燃料カム
.5 コモンレイル方式における噴射圧
.6 燃焼室
.7 圧縮比
.8 過給機型式及び構造
.9 空気冷却器、空気予熱器
.10 バルブタイミング
.11 NOx低減装置“水噴射”
.12 NOx低減装置“エマルジョン燃料(水エマルジョン燃料)”
.13 NOx低減装置“排ガス再循環(EGR)”
.14 NOx低減装置“選択接触還元法を用いた脱硝装置”
.15 主管庁が指定するその他のパラメータ
6.2.3.4.2  エンジン製造者の推奨及び主管庁の承認に基づく、実際のエンジンテクニカルファイルには、特定のエンジン及び固有の設計によっては、上記の構成部品及びパラメータの全てを含む必要はない。
 
6.2.3.5 エンジンパラメータチェック法のチェックリスト
 パラメータによっては、異なる検査の可能性がある。エンジン製造者から支援された運航者は、主管庁から承認を受けた場合、どの方法が適用可能かどうか選択できる。本コードの付録7に挙げられているどの方法あるいはどの組み合わせでも適合性を示すのに十分である。
 
6.2.3.6 エンジンの構成部品の改造に関する技術書類
 エンジンのテクニカルファイルに含まれる技術書類は、改造の詳細及びそのNOx排出値への影響を含まなければならない。またそれは改造が行われる際に供給されなければならない。後で製作されたエンジンの試験台上におけるデータは、そのエンジンがエンジングループ概念の適用範囲内であれば容認される場合がある。
 
6.2.3.7 エンジン構成部品、調整可能な部分及びパラメータの初期条件
 エンジンのテクニカルファイルには、どちらが先であったとしても予備認証(EIAPP証書)時、又は、初回認証(IAPP証書)時の、指定されたエンジン構成部品、調整可能な部分及びパラメータについての、エンジンのNOx排出特性に関する全ての該当する情報を含まなければならない。







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