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まえがき
 
財団法人 日本船舶標準協会
 (財)日本船舶標準協会では、日本財団の平成14年度助成事業の一環として、「ISO/TC8幹事国業務」を実施しております。
 最近、ISO/TC8(ISO船舶及び海洋技術)では、戦略的な展開を図るために「ビジネスプラン」を策定し、今後の活動の活性化を図っております。
 
 特に、この「ビジネスプラン」の中で、TC8の戦略的な展開の一環として、TC8とIMO(国際海事機構)との密接な協力関係が盛り込まれており、このため新規開発規格の多くはIMOの規則類と関連を持ち、IMOで要求される要件(Requirement)を技術的な観点から国際規格に変換し、設計・製造・検査及び流通・取引の合理化を配慮するという相互協力体制が築かれつつあります。
 
 これらの動向にTC8として対応して行くためには、まずIMOで要求される要件に関する資料(IMO会議資料のみならず規則の元となる参考資料も含む)の収集及び収集した資料の解析(国際規格に変換するための要点を把握するため)を行い、関係する専門分科会(Subcommittees)の新規国際規格テーマ又は改正テーマになり得るか検討する必要があります。また、安全や環境など多岐にわたるIMO資料の収集・解析には、多大の時間と労力が必要となります。
 
 本会では、上記事情を配慮し、TC8幹事国としてIMO資料の中で、今後国際規格と関連を持つと思われる20項目について、IMO資料の内容解析、国際規格の提案内容、必要性、希望優先度などについて基礎調査を実施致しましたので、その成果を報告致します。なお、添付資料は、原則として省略致します。
以上
 
 
添付資料−1
提案予定国際規格の調査・分析結果
項目タイトル IMO規則又は議題
巨大旅客船の安全(COMSAR関連)
IMO−LINK−No. 
又は審議報告
ISO/TC8提案規格名:
海上からの人員の回収手段
規格の種類:製品規格、救助方法ガイドライン等
審議番号又は
担当部会
TC8/SC1
IMO規則内容
又は審議事項
 巨大旅客船の安全についてMSC75(2002年5月)において包括的な審議により、新たな作業目標等が設定され、今後、各小委員会で検討されることになっている。
 様々な分野に渡る広範囲な問題点が挙げられているが、現在の救命設備の改良や新しい概念の導入が必要とされるものの一つに、海上からの人員の回収問題がある。救助・回収を担当するCOMSARコレポングループの報告によれば(COMSAR7/10/1)、遭難者揚収装置(Mean of rescue)、ヘリコプター、救助船の横付け等、様々な手段を検討してみたが、海上で救助を待つ数千人の人員を迅速に回収することは、現在の体制では不可能に近いとしている。また、この問題は、SAR活動だけではなく、救命設備の構造等も関係するとして、DE小委員会における検討も要請している。
ISO規格内容
又は提案事項
1. 国際規格の必要性
  救助システムの見直し、回収用機器の要件等についてはIMOの場で今後、審議されると思われるが、審議に合わせて、機器やシステムそのものの開発や、現状の設備の見直し等が必要になってくると考える。関連する製造者を中心として、ISO/TC8の場で回収方法等について審議・検討するとともに、新たな機器に対する規格の提案ができる可能性がある。

2. 市場適合性
  今後のIMOにおける審議状況により、どういう方向に進むかまだ不明な点もあるが、例えば、滑り台式シューター(我が国では、シューターは垂直の吊り下げ式が主流)を改造して、海上のプラットフォームから滑り台を何らかの方法利用して遭難者を船上に回収するシステムMERS(Marine Evacuation and Rescue System)、救命艇や救命いかだからヘリコプターで人員を回収する際に救助し易くする工夫(天幕が上方に開放可能等)等が提案されている。これらについては、救命設備メーカーが中心となって、TC8の場で審議検討が可能と考える。

3. 国際規格の内容(例えば)
3.1 MERS(Marine Evacuation and Rescue System)の製品規格
3.2 生存艇に対する人員の回収しやすい構造規格
3.3 海上の遭難者救出ガイドライン

4. 優先順位
IMOにおける審議状況を見ながら、具体化していく必要がある。 (急がない)
関連資料 1. MSC75/WP.12:Large passenger safety- Report of the working group
2. COMSAR7/10:Large passenger safety- Outcome of MSC 75 by Secretariat
3. COMSAR7/10/1:Large passenger safety- Report of the Correspondence Group
4. COMSAR7/INF.4:Annexes to the report of the Correspondence Group
5. COMSAR7/INF.5:Annexes to the report of the Correspondence Group
関連国際規格として提案すべき項目と恩恵:


その他意見:

備考:

 
海上からの人員の回収手段関連添付資料の概要
1. COMSAR7/10
 巨大旅客船の安全テーマについてMSC75における審議結果を説明し、今後COMSAR小委員会で審議すべき内容を確認
 
2. COMSAR7/10/1、COMSAR7/INF.4及びINF.5
 巨大旅客船の安全に関するCOMSARメンパーによるコレスポンデンスグループからの報告(コーディネーターは英国)で、COMSARとして検討すべき課題について、船会社、FSA専門家、捜索・救助専門家等、幅広い人たちにアンケート調査を行い、捜索・救助及び無線通信の観点からの問題点をまとめ、また、今後の作業についての提案を行っている。
 
添付資料−1
提案予定国際規格の調査・分析結果
項目タイトル IMO規則又は議題
バルクキャリアーの安全
(フロートフリー機構を持つ自由降下式救命艇)
IMO−LINK−No.
又は審議報告
ISO/TC8提案規格名:
自由降下式救命艇のフロートフリー進水機構 規格の種類:製品規格、試験手順
審議番号又は
担当部会
TC8/SC1
IMO規則内容
又は審議事項
 バルクキャリアーの安全問題の中でFSAの結果としてフロートフリー進水(沈没時に自動的に浮上する進水機構)も可能な自由降下式救命艇が安全向上に有効との提案がノルウェー及びICFTUよりなされている(MSC74/5/5)。
 MSC76(2002年12月)において、自由降下式救命艇の搭載についての審議が行われ、我が国等の反対にもかかわらず、新造船バルクキャリアーについては、フロートフリー機構を備えた自由降下式救命艇を強制搭載するとの合意がなされ、関連するSOLAS III章及びLSAコードの改正案等が今後DE小委員会で審議されることになった。
ISO規格内容
又は提案事項
1. 国際規格の必要性
  フロートフリー進水機構の性能要件及び試験基準等は、今後DE小委員会で検討される予定であるが、それに対応する具体的な製品規格、試験手順等についてISO規格として整備することが機器の信頼性向上及び船員の安全のために必要と考える。

2. 市場適合性
  バルクキャリアーに搭載が義務付けられることにより、今後、我が国でも自由降下式救命艇の開発・製造が増加すると考えられる。 フロートフリー機構については、今までに救命いかだやEPIRB用等のものが開発されている(ISO 15734参照)が、救命艇ほどの大きさ及び質量を持ったものに対しては、新たな機構が必要になると考える。それら機器の信頼性、操作性を確保するためには、国際的に統一された規格が必要である。

3. 国際規格の内容
3.1 フロートフリー機構の製品規格
3.2 フロートフリー機構の試験方法
3.3 フロートフリー機構の整備ガイドライン

4. 優先順位
  今後のDE小委員会等の審議状況に合わせる必要がある。
  (あまり急がない。)
関連資料 1. MSC74/5/5:Formal safety assessment of life saving appliances for Bulk Carriers by Norway and ICFTU
2. MSC76/5/15:Life saving appliances by Japan
3. MSC76/23、5.48:Report of MSC76
4. ISO 15734:Ships and marine technology-Hydrostatic release units
5. 総会決議A.662(16) Performance standards for Float-Free release and activation arrangements for emergency radio equipment
関連国際規格として提案すべき項目と恩恵:
ダビット式救命艇の場合、離脱フックの誤作動に関連した検査、点検時等の事故が多発し、安全な整備方法、離脱装置の構造見直し等の作業が必要になっている。自由降下式救命艇の場合も、点検整備方法に関するISO規格が必要かもしれない。
その他意見:
ダビット式救命艇の進水装置に関するISO規格が作成作業中(DIS15516)であるが、上記、事故防止の観点から、操作方法等を含めた内容の見直し及び追加が今後必要と考える。
備考:

 
添付資料概要
1. MSC74/5/5(Norway and ICFTU)
 バルクキャリアーに関する事故事例(1991〜1998年)を基に、様々な救命設備を使用した場合の事故発生時の生存確率をFSA(Formal Safety Assessment)手法により計算し、生存確率を高めるRCO(Risk Control Option)として、以下の2点が有効であると提案。
a. フロートフリー機構を備えた自由降下式救命艇の搭載。
b. 乗員全員分のイマーションスーツを備える。
 
2. MSC76/5/15(日本)
 自由降下式救命艇は、進水準備作業が迅速にでき、また荒天時に進水可能等の長所もあるが、MSC74/5/5におけるFSAの結果からみると、現状からの生存確率の向上はわずかであり、自由降下式救命艇に変えることによるコスト増加に見合ったものでないとして、強制化に反対している。
 
3. ISO15734:2001 Ships and marine technology-Hydrostatic release units
 膨脹式救命いかだ及びGMDSS無線機器のEPIRB等に対するフロートフリー機構に使用される水圧離脱装置に閑して構造、表示、整備、試験方法等を規定したもの。
 
4. 総会決議A.662(16)Performance standards for Float-Free release and activation arrangements for emergency radio equipment、1989/10/19
 GMDSS機器として使用されるEPIRB等のフロートフリー搭載に対する基本的な要件を規定したもの。







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