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漢拏/三湖
企業再編手続きに基づく便益
 漢拏重工は韓国の財閥であった漢拏グループの一員であったが、1997年12月6日に同社は裁判所による破産手続を申請した。
 
 その後、同グループはコンサルティング会社であるロスチャイルド社と再建コンサルティング契約を結んだ。ロスチャイルド社は漢拏の株式価値と解散価値を評価した後、漢拏の資産と負債の総残高を引き継ぐために「RH Engineering & Heavy Industries Ltd.(RHHI)」社を設立することを提案した。債権放棄並びに金利免除を含む負債再編後に、負債残高全てが、ロスチャイルド社がアレンジする予定のつなぎ融資を通じて返済される計画となった。
 
 裁判所は債権者の同意により1998年11月16日にこの計画を承認した。1997年12月31日時点での漢拏重工の主要銀行である債権者の中には政府が大量の株式を保有するものがあり、そのうち1行は1997年の経済危機後に韓国政府に資金援助されていた。
 
 しかしながら、ロスチャイルド社が提案したつなぎ融資による負債再編は海外あるいは国内の投資家を見つけることができなかった。その結果、裁判所が指名した管財人は修正再建計画を作成した。この計画は再建条件の調整を定めたもので、1999年8月16日に裁判所に承認された。再建条件の調整は当初の計画による債務免除と未払い利息の免除に加え、主として1000億ウォンの出資転換72、元本返済の延長、現代重工経営陣の漢拏重工への派遣、及び現代重工による保証の提供を含むものであった。
 
 計画に従って、RHHI社が漢拏重工から造船事業と建設機械事業を1999年9月18日に取得した。
 
 1999年10月27日に出資転換が行われ、同日、RHHI社は三湖重工に社名変更した。1999年12月31日現在の三湖重工の主要株主は以下のとおりであった。73
 
株主名 保有比率
韓国資産管理公社* 19.10%
韓国外換銀行* 15.00%
朝興銀行* 15.00%
韓国産業銀行* 10.61%
韓国輸出入銀行 9.47%
その他 30.82%
合計 100%
*は韓国政府が株式を保有する金融機関。
 
 株式名を見ると、三湖重工が現在、事実上韓国の金融機関によって所有されていることがわかる。筆頭株主である韓国資産管理公社は政府が100%所有する公社である。他の金融機関のほとんども政府が所有するか、支配力を持っている。74
 
 最終的に修正計画の規定に従って、三湖は1999年10月29日に現代重工と委託契約を結んだ。この契約に基づいて、現代重工は営業利益の10%に実際に発生した費用を上乗せした報酬を受け取ることで経営サービスを提供している。この点に関して、現代重工は三湖の銀行借入約1兆1830億ウォンを債務保証している。倒産前の収益性に低さを考えると、この債務保証は現代重工にとって多大なリスクであるとみなしうる。但し、三湖はこの保証に対してその資産、工場及び機械のかなりの部分を担保として提供している。
 
便益の概要
 調査期間中に計画と債務再編に従って三湖に与えられた便益総額は2兆630億ウォン(15億7500万米ドル75)であると推定され、以下のようにまとめることができる。
 
― 債務免除
― 1000億ウォンの出資転換
― 金利免除
― 短期債務の長期債務への転換

72 三湖重工1999年度監査済財務報告書による。
73 三湖重工1999年度監査済財務報告書による。
74 2000年12月31日現在、韓国政府の保有比率は韓国外換銀行で43.17%、朝興銀行の場合で80%である。
75 2001年3月26日現在の為替レート1米ドル=1310ウォンに基づく。







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