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刊行によせて
 当財団では、我が国の造船関係事業の振興に資するために、「造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業」を実施しております。その一環としてジェトロ船舶関係海外事務所を拠点として海外の海事関係の情報収集を実施し、収集した情報の有効活用を図るため各種報告書を作成しています。
 
 本書は、日本船舶輸出組合及び日本貿易振興会が共同で運営しているジャパン・シップ・センター船舶部のご協力を得て実施した「海運・造船における電子商取引の現状と展望」の調査結果をとりまとめたものです。
 関係各位に有効にご活用いただければ幸いです。
 
2003年3月
(財)シップ・アンド・オーシャン財団
 
はじめに
 電子商取引(“Eコマース”)とは、事業の運営方法に関する、広汎に及ぶ抜本的転換の一端をなすものである。情報技術において現在進行中の急速な進歩は、世界的規模においても歴然としている。
 特に、1960年初頭に「冷戦時代に軍用通信を確実にする手段」として米国・国務省により開発されたインターネットは、1990年代半ばから職場・家庭におけるPCの普及も伴って、1993年には600サイト程度であったウェッブ・サイトが2001年末には3,630万サイトヘと驚異的な伸びを示した。
 インターネットは、コミュニケーションと流通に要する時間という点で、正に世界を小さくし、各国、各堆域の市場間の関係を緊密化した。またその過程において、経済活動や事業活動の「グローバル化」に寄与した。海運や貿易はこれらの変化の最前線にあるといえる。
 インターネット利用の最大の利点は、(1)情報伝達の高速化、(2)低コスト、(3)地域・時間を超えたグローバルプレゼンスにある。インターネットを利用したオンラインサービスの進歩は、サービス産業や製造業の別を問わず、世界貿易のあらゆる分野に影響を及ぼし、世界中のどこにいても、1日24時間、週7日間、無休で稼動する「電子商取引のバーチャル市場」は、エコノミストのいう「完全な市場」の概念に世界を近づけていると云える。
 しかし、一時のネットバブルに見られるように革命的でいいアイデアであっても、目的と手段のアプローチ如何では、失敗した例も数多く経験してきている。また、オープンなプラットフォームであるが故に、セキュリティや信頼性といった問題を常に抱えている。ここ数年乱立していたオンライン・ビジネスも既に淘汰・統合され、ビジネスとして確立できるサイトとそうでないものの傾向がつかめるようになってきた。
 取引に於ける「脱仲介化」を目指し、いわゆるダイレクトなB to C(企業対消費者取引)やB to B(企業対企業取引)ビジネスは、必ずしも電子化だけで成功するものではない。今までの成功例を見ると、電子商取引の成功の鍵は、「徹底したマーケティングによる採算が取れる取引量の確保」と「単なる情報交換に終わらない付加価値の追加」等であり、これをマネージメントしていくアナログ的な創造的発想が重要と思われる。
 本調査報告書は、以上のような現状を踏まえ、海運・造船における情報技術(IT)のこれまでの取組みと今後の展望について最新情報を取りまとめた。基礎資料として、関係各位にご活用いただければ幸甚である。
 
ジャパン・シップ・センター(JETRO)
船舶部 加藤 光一
内山 昇







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