6 沿岸輸送の今後の可能性
この費用モデルは、Microsoft Excel 2000(c)の変数を利用したスプレッドシートのモデルである。これは、前述の5.3項で述べた6つの航路において貨物専用のRO−RO船の運航を行った場合の費用と総収入を示す。
このモデルは、RO−RO船の運航に必要な運賃を試算し、これを市場価格と比較してその競争力を検証するものである。ここでは、この運賃がユーザにとって運送費の節約になると仮定している。また、往路に関してある程度の積載量があると仮定している。すべての輸送モードを合算したドライ貨物の流通量が多い方向を往路とした。このことは必ずしも、荷主の意志決定プロセスを表すものではない。荷主の意思決定プロセスを調査するためには、大規模な現地調査が必要であり、現在の調査に対する予算及び時間的制限のもとで完成させることは不可能である。しかし本調査では、輸送事業を成立するために最低限必要な物量と、各輪送航路と総輸送貨物量を比較することにより、本報告書の提案が合理的であるかどうかを判断するための基準を提供する。これは 表16(航路別達成可能な市場シェア)に示された予測と「タイ国におけるモーダルシフトに伴う新規造船需要に関する調査」(2001年6月発行)の「表11.3.3−2:航路別達成可能な最大市場占拠率」予測とで比較することができる。
期間
分析要素 |
予測期間 |
ビジネス計画 |
25年 |
船の耐用年数 |
30年 |
課税期間 |
10年 |
|
分析に使用された期間を表19に示す。分析期間は25年としたが、これは新造船の予測耐用年数と同じである。
分析の中には市場で購入された中古船も含んでいるものもある。この場合、船齢が30年に達した船は交換されると仮定した。すなわち、同様の船が再度分析期間中に購入されるということである。
新造船、中古船ともに、減価償却は10年と仮定した。
ファイナンス変数
構成要素 |
レート |
コメント |
法人税 |
0% |
最初の8年間 |
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30% |
9年目以降 |
物価上昇率 |
3% |
1年単位 |
貨物輸送の増加率 |
5% |
2年毎 |
価格に対するローンの割合 |
80% |
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運転資本の金利 |
5% |
|
運転資本の現金支出に占める割合 |
20% |
|
残存価格 |
5% |
船の膨張資本コストの内 |
目標収益率 |
10% |
税引き後 |
|
この分析で使用されたファイナンス変数を表20に示す。
必要とされる運転資本は、年間現金支出の20%と推定した。これは、保守的な数字であり、掛売りの固定客の割合が高いと仮定した。固定客以外の顧客の場合は荷積みの前に貨物輸送の費用を支払うため、必要な運転資本額は少なくてよい。
目標収益率は所有主持ち株に対する収益率である。これは税引き後べースで計算されている。融資による税制効果は投資の決定に大きく寄与するため、これを資金モデルに反映させることは重要である。ただし、これは、税引き後の目標収益率が明示されている場合にのみ可能となる。
物価上昇率の影響が、この分析全体にわたって適切かつ確実に反映されるようにするため、残存価額は、スクラップ時点におけるリプレース船の額面価格の5%として計算した。
オペレーション変数
構成要素 |
|
値 |
維持可能な最大積載率 |
|
90% |
1年あたりの運航週数 |
|
50週間 |
予測貸物取扱量 |
|
1,000トン/時間 |
1寄港あたりの予測デッドタイム |
|
1.5時間 |
複合一貫輸送における陸上輸送距離 |
|
30キロメートル |
燃料消費方程式:燃料(トン/日)=A*dwt^B*speed^C |
|
|
|
A |
0.000844 |
|
B |
0.447264 |
|
C |
2.215504 |
保守コスト:(A+B*船齢)*船舶の費用 |
|
|
|
A |
0.00682 |
|
B |
0.00050 |
補助工事の維持費と比較した割合 |
|
10% |
対バース乗組員比率 |
|
1.5 |
1トラックあたりの平均積載荷重 |
|
15トン |
車体重量 |
|
6トン |
|
分析で使用したオペレーション変数を表21に示す。
ここに示された積載率は、交通量のより多い輸送方向における維持可能な最大積載率である。ただし、輸送量に季節変動のあること、輸送手段として船舶が必ずしも適切ではないこと、また予約のあった貨物が到着しないなどの理由から積載率が100%となることはない。復路の積載率は、復路における潜在市場の相対的な規模による。これについては、以下に航路ごとの分析を示す。
船舶は平均して1年あたり50週連航すると仮定した。従って、2年半ごとに5週間のドライドックが行われることになる。
貨物取扱率は毎時1000トンと仮定した。トラック(または、トレーラー)1台あたりの平均積載荷重を15トンと仮定すると、これは毎分1台強のトラックが運行する量に等しい。これは控えめな仮定であり、実際には大部分のRO-RO船は、より大きな積載荷重率及び荷揚げを実現できると考えられる。ただし、これは本報告書の結果に大きな変化を与えることはない。さらに、船舶輸送の場合、1寄港あたり、待機や遊休時間として15時間を仮定している。
RO−RO船を利用した複合一貫輸送における陸上輸送の平均距離は、航路の始点及び終点で、30キロメートルと仮定した。これは、前回の調査(「タイ国におけるモーダルシフトに伴う新規造船需要に関する調査」)で想定された数字よりも若干短くなっているが、「沿岸輸送システム開発に関する調査(MOTC、2001)」の数字と一致している。
船舶の燃料消費量と保守コストはともに船舶の特性、すなわち第1にサイズと速力、第2に船齢と関連している。その相関関係と変数を表21に示す。主エンジンは燃料油を使用すると仮定し、これには主エンジンの10%相当の燃料油を消費する補助エンジンが装備していると仮定した。
対バース乗組員比率、すなわち乗組員を船上のあらゆるポジションに配乗した場合に必要となる海事従事者の数であるが、これを1.5と仮定する。これは短距離の船舶輸送運行において妥当な基準である。
船舶輸送の場合、“貨物トラック”をそのまま積載して輸送を行うことになると仮定した。従って、船の積載荷重容積(トラックで運ばれる貨物の正味重量)は、トラック自体の重量を考慮して、実際の船舶の総積載量よりも少なくなる。一方、荷主は貨物の正味重量に基づく輸送料金しか支払う意思がない。これらの要因を考慮に入れて、トラック1台あたりの平均積載荷重とトラックの平均重量を試算する必要がある。これらを正確に算出するには、使用されるトラックの種類やその割合、すなわち、6ホイール、10ホイール及び18ホイールトラック並びに動力ユニットなしで移動するトレーラーのそれぞれが、使用されるトラック全体に占める割合についての詳細な分析が必要である。表21は中間予測であり、ここでは18ホイールトラックの結合装置から分離されたトレーラーの割合が相対的に高くなると予測している。
為替レート
この分析で使用された為替レートは、2003年1月1日の「ファーイースタン・エコノミック・レビュー(Far Eastern Economic Review)」誌に掲載されたレートである。表22を参照。
通貨 |
為替レート |
1米ドル |
43バーツ |
100円 |
36バーツ |
|
燃料
本分析の対象となった船は、舶用ディーゼル油(MDO)と燃料油(IFO)の2種類の燃料を使用している。舶用ディーゼル油は、硫黄の含有量が高いことを除いて、自動車のディーゼル燃料と非常に類似している。燃料油は、通常大型船舶で使用されている重油である。
各種燃料の費用及びその密度を表23に示す。
燃料タイブ |
USD/トン |
密度(kg/l) |
IFO |
$140.00 |
0.95 |
MDO |
$300.00 |
0.92 |
|
価格とコスト変数
この分析で使用された価格及びコスト変数を表24に示す。
乗組員 |
価格及び費用 |
コメント |
士官 |
30,000 |
バーツ/月 |
船舶部員 |
10,000 |
バーツ/月 |
保険 |
1% |
船舶価格に対する割合 |
代理店手数料 |
3% |
収入に対する割合 |
一般管理費 |
10% |
収入に対する割合 |
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道路コスト変数
項目 |
料金 |
コメント |
最低料金 |
127.6 |
1トンあたりのバーツ料金 |
距離レート |
0.73 |
1トン1キロメートルあたりのバーツ料金 |
トラック/トレーラー費用 |
250 |
1日あたりのバーツ料金 |
|
各航路におけるトンあたりの道路輸送手数料は、ETOが発行した料金表に線形回帰相関表を適用することによって算出できる。これによると最低料金は127.6バーツ/トン、1トン1キロメートルあたり0.73バーツが追加される。これにはトラックからの荷物の積み下ろし料金が含まれている。
この相関表は、分析を行った各路線の道路輸送費用を試算するために使用した。RO−RO船の運航が開始された際に港間の複合一貫輸送における陸上輸送費用を試算するため、同じ相関表を使用している。しかしトラックに貨物を載せたままトラックごと輸送する場合には、荷積みと荷揚げは1回しか行われない。従って、船舶輸送の前後に陸上輸送として荷積みと荷揚げを2回行うものとしてコストを計算すると、費用を過大評価することになる。その為、複合一貫輸送における陸上輸送費用は、港までの区間と港から目的地までの距離の和に等しい片道輸送費として計算した。
荷主もまた、貨物を積み込んだトラックあるいはトレーラーの固定費を払う必要がある。「沿岸輸送システム開発に関する調査(MOTC、2001)」では、トレーラーの固定費を1日あたり144バーツと見積もっている。船齢に比例した減価償却と利息によるコストは1日あたり、6ホイールのトラックで約800バーツ、10ホイールのトラックで約950バーツ、18ホイールのトラックとトレーラの組み合わせの場合には12,000バーツと見積もられている。これら1日あたりの値を各トラックタイプの予測積載荷重で割り、各輸送手段の予測割合を計算することにより、これらの費用をまかなうためには貨物1トンあたり1日27バーツが必要であることがわかる。
港湾のコスト変数
RO−RO船の運航が確立しておらず、RO−RO船が使用する可能性のある港湾設備の中にはまだ整備が完了していないものもある状態で、港湾コストを試算するには、何らかの仮定が必要である。船舶に適用される港湾手数料は、バンコク港の港湾手数料に基づくものであり、これには頻繁寄港割引料金が合まれる。貨物料金や埠頭使用料には、荷役コストを含む必要があり、算出するのは困難である。RO−RO船の荷役コストは在来型のコンテナ船よりかなり低くなると思われるため、1トンあたり50バーツと仮定して試算した。
項目 |
値 |
コメント |
港湾手数料 |
10 |
1GRTあたりのバーツ |
割引き |
50% |
頻繁寄港割引き |
バース利用 |
8 |
バーツ/100GRT/時間 |
貨物費用 |
50 |
バーツ/トン |
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