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5.3.3 目標市場における達成可能なシェア
 それぞれのサービス目標市場の規模の推定結果は下記の通りである。
 
サービス 一般貨物 バルク貨物
チュンポーン〜バンコク 5.2% 6.7%
スラータニー〜バンコク 42.2% 30.7%
ソンクラー〜バンコク 48.8% 37.3%
チュンポーン〜東部沿岸地帯 8.5% 19.8%
スラータニー〜東部沿岸地帯 12.6% 33.9%
ソンクラー〜東部沿岸地帯 8.2% 60.0%
 
 ここで注意すべき点は、これらの推定値は、長期的なモードシフトにおける概略であり、短期的に達成可能な目標ではないことである。さらに、この日標を達成するためには、解決すべき多くの問題もある。しかし、表に示した推定値は、存在するビジネスチャンスの規模を示している。
 
沿岸輸送の選択肢
 現在活動中の船舶は、伝統的なバージシステム、外洋航行バージシステム、在来船、そしてRO−RO船の4つのカテゴリに分類することができる。過去の一般貨物に関する調査や、沿岸輸送の発展を妨げてきた要因に関する分析から、この4つのカテゴリの船舶の将来性は次のように結論づけることができる。
 
1. 伝統的なバージシステム
 伝統的なバージシステムは、タイの国内貨物輸送においてこれまで同様、今後も非常に重要な役割を果たし続けるであろう。同国の内陸水路は、陸上輸送の重要な代替手段である。また伝統的なバージシステムは、特に東部の沿岸航路のように、悪天候の場合でも安全な投錨地が確保できる場所では、短距離の海上輸送用として、今後も使用され続けるであろう。
 しかし前章で述べたように、伝統的なバージシステムにはいくつかの制約がある。バージは特に外洋では非常に速力が低下し、荒天時の外洋航行は不可能である。また大部分のバージは、高品質の貨物が取扱いができるように設計されていない。
 これらの要因をまとめると、今後伝統的なバージシステムを沿岸輸送送の拡大の手段として活用していくことは非常に困難と思われる。バージの将来の役割は、主に内陸水路と短距雌の沿岸航路において、時間的な制約のないバラ積貨物の輸送に制限されることとなろう。
 
2. 外洋航行バージシステム
 伝統的なバージを荒天時に運航することは危険であるものの、世界には荒海の中を安全に航行できるよう設計されたバージシステムが数多くあることが知られている。これらのバージはコンテナとバラ積貨物の両方の輸送に使われ、アントワープ/ロッテルダム間のシャトルサービスから北米と南米を結ぶ大陸間航路まで様々なルートを運航している。
 これらのシステムは数多くの点で伝統的なバージ運航とは異なっている。最も重要な点はその動力である。外洋航行バージの運航に経験のあるバージ事業者によると、積載荷重3,000〜5,000dwtに対し、適切な馬力は3,000〜2,000psである。またバージは、海洋で安定した航行ができ、かつ浸水防止のために乾舷が適切に設計されていなければならない。
 このように高出力なバージを使用することにより、沿岸輸送サービス市場を大きく拡大する可能性がある。運航速力の優れたバージは伝統的バージと比較して、輸送時間を大きく短縮することができる。一方、信頼性の高い外洋航行能力が備わることにより、極端に悪い気象条件を除いて、1年中絶え間なくバージを運航させることができるようになる。同時に、人件費があまりかからず比較的建造費が安いため、従来のサービスと比べて費用対効果の優れた代替手段といえる。
 
3. 在来船
 在来型の一般的な貨物船は、全体の総航行時間に対して荷物の積み下ろしに時間がかかるため、短距離の輸送には向いていない。これは特にコンテナ以外の貨物を輸送する場合に端的であるが、タイの沿岸輸送の大部分はこのコンテナ以外の貨物になるものと思われる。従って、タイのように道路輸送が実用的な手段となっている地域では、在来船は一般の小型貨物の輸送手段として利用されることはないと思われる。また、バラ積み貨物では、貨物量が少ない場合は通常、在来船の方がバージより輸送費が高い。
 
4. RO−RO船
 一般的に、RO−RO船は一般貨物の短距離輸送に適した代替手段である。RO-RO船は荷揚げや荷積みが早いため、船舶を多数所有しなくても頻繁に輸送を行うことができる。また、コンテナ以外の貨物の輸送の場合にもRO−RO船は貨物を道路トレーラーに乗せたまま輸送することができるため、貨物の取り扱いが減り、船舶輸送の間に貨物を損傷する可能性を最小限に抑えられるという利点があり、貨物取扱いには非常に有利である。
 
5.まとめ
 タイにおいて沿岸輸送を発展させる最良のアプローチは、他国での導入で既に優位性が証明されている、外洋航行可能な高性能バージシステム及びRO−RO船の2種類のサービスの導入であると思われるが、同国において高性能バージシステムもRO−RO船も現在はほとんど利用されていない。潜在市場の各分野においてこれらが導入された場合のメリットは以下の通りである。
高性能バージは、バラ積み貨物あるいはその他の比較的単価の低い大量貨物の輸送に適している。積荷には袋入りのものや単体の貨物(discrete pieces of cargo)もあるが、これらの貨物をまとめてバラ積貨物と呼ぶこととする。
RO−RO船は、決められた運送時間又は配送時間内に届けることが極めて重要な高価な小型小包など、一般的な運送業務に適している。これらの貨物はまとめて一般貨物市場と呼ばれる。現在のところタイでは、このタイプの貨物はほぼ全てが道路輸送されている。従って、同国が沿岸輸送においてRO−RO船をうまく導入することができれば、渋滞の緩和や大気汚染、および道路維持費用の減少等、大きな外的利点がもたらされる可能性が高い。







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