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6-5 環境保護団体
 
 予想通り、環境保護団体は一般に京都議定書批准を支持している。環境保護団体の議定書支持と、ブッシュ大統領の批准不支持の姿勢を批判する代表的な声としてグリーンピースの声明を以下にあげる。
 ジョージ・W・ブッシュ大統領は3月末に米国が京都議定書から脱退することを声明したが、これは米国内外から激しい抵抗で迎えられた。環境保護団体はもちろんのこと、諸外国政府、科学者、宗教指導者、労組、その他公的人物がこの決定を非難した。米国は、21世紀の最も切迫した国際環境問題である地球気候変動に対処するために国際社会と連携する道徳的、政治的、法的責任を放棄したものとみなされている。
 大統領に気侯を破壊する委任権はない――グリーンピースは、ブッシュ政権の孤立政策は最終的には、国内的にも国際的にも失敗すると確信している。バーモント州のジェームス・ジェフォーズ上院議員がつい最近、共和党を離党したことは、ブッシュ大統領の京都議定書拒否、彼のエネルギー政策、そしてその他の超保守派アジェンダに対する反対の広さを物語っている。与党の穏健派からさえもが反対しているのだ。米国国民も議会も、国際気侯変動協議をぶち壊しにする権利をジョージ・ブッシュに委任した覚えはない。米国の世論と米国議会は断固として正しい方向に向かっている。ホワイトハウスもやがてこれに従うことになるだろう。
 米国込みでも米国抜きでも、気侯条約を批准せよ――右派のドラマがワシントンで展開している間にも、世界は気候変動との闘いから気を逸らしてはならない。まずは京都議定書を批准し、発効させることである。
 米国の代替策は代替ではない――米国の「代替策」が浮上したとすれば、それはうわべは強い言葉で飾っていても、温室効果ガス排出量削減の目標値と時間枠については軟弱なものであり、困難な選択を、将来さらに困難でより金のかかるようになるまで、また世界の気候システムに人類がもたらしているダメージの時計の針を戻すには手遅れになるまで引き伸ばそうするだろう。
 EUが気候条約の批准、実施を主導すべきである――グリーンピースはEUがブッシュのポーズに断固として譲らず、大多数の米国国民が気候を守るための国際措置を支援していることを認識するよう促すものである。ヨーロッパは真の指導力を示し、2002年9月にヨハネスバーグのRio+10サミット開催にあわせて施行されることとなっている京都議定書を批准する自国国民への約束を果たさなければならない。これを怠れば、危険な気候変動を防止に着手したがっている大多数のヨーロッパ人から強い批判を受けるだろう。
 EUは、気侯条約を完全施行し、条約の枠組み内で、温室効果ガスをさらに大きく削減するための次のステップの策定に取りかからなければならない。その一方で、ワシントンが正気に戻る徴候を待ちながら、その時には米国がそのプロセスに暖かく向かいいれられるようにするために。
 ブッシュを待つという選択肢はない――京都議定書は確かに、十分ではない。しかし、現在の文言に弱体化されたのは、主に米国の要求と企業の介入の結果である。EUと世界各国は、ワシントンの政治的風向きが変るまで待ってはいられないし、ワシントンから奇跡的な「代替案」が出るのを期待することはできない。現政権が続く限り、実現しない。ブッシュを待つという選択肢はない。
 
6-6 米国の京都議定書批准の可能性
 
 ブッシュ政権の姿勢と、議会の姿勢、そして利害関係者の京都議定書に対する反応から、米国が議定書を、少なくとも現行の形で批准するとは考えにくい。議定書を批准しないことは、多くの分野における外国政策に対するブッシュ大統領の一方的アプローチと一貫している。ブッシュ政権が京都議定書について変心する、または議会が議定書批准を決定すると考えるのは不可能である。
 一方、エネルギー省は米国におけるエネルギー使用からの二酸化炭素排出量は、年間平均1.5%の割合で増加し、2000年の15億6,000万トンから2020年には20億8,800万トン(炭素換算)に拡大すると予測している。







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