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4-3 新エネルギー政策に対する反応
 
 予想に違わず、大統領のエネルギー政策に対する反応は、議会では党派ラインで、業界ではエネルギー計画が及ぼす利害により分れた。以下に、各種組織、個人の反応の主なものを概説する。
 
議会の反応
 ダイアン・ファインスタイン上院議員(民主党カリフォルニア)は、民主党のエネルギー計画批判を代表している。同上院議員は大統領のエネルギー計画が供給増に重点を置いており、省エネには十分応えていないと批判している。また同議員は、エネルギー計画がカリフォルニアにおける短期的なエネルギー危機について触れていないことを問題にしている。同計画が発表されたとき、カリフォルニア州はエネルギー危機の最中であった。ファインスタイン上院議員は環境問題に特別な関心を持った活動家とされている。
 
 メジャー石油会社をはじめとする供給側にとって、ブッシュ大統領のエネルギー計画はまさに夢がかなったといえよう。ブッシュ行政府が改善を助けることを拒んできた正常に機能していないエネルギー市場からとことん金を絞り取ろうとする電気・天然ガス売買業者により包囲されているカリフォルニアの州民や企業は置き去りにされている。
 この長たらしい計画が完成したからといって、今年の夏、カリフォルニアの電力が1キロワットでも増えることはないし、停電時間が1分でも短くなることはない。カリフォルニア州からテキサス州のエネルギー生産者の手にわたる金が減ることもないのだ。
 実際のところ、この計画は主に長期的エネルギー生産のバイブルであり、我々が危機を脱出することを助けるために必要とされる緊急の短期的措置については、パンフレット程度の記述もない。
 ブッシュ・エネルギー計画は主に石油、ガス、石炭、原子力の供給増に重点を置いている一方で、エネルギー効率化、回復可能燃料、省エネの価値については付け足し程度にしか扱っていないようだ。
 ガソリン価格が上昇する今日、燃費向上は、外国石油依存を制限し、消費者の節約になり、地球温暖化を抑えるために我々がとる事のできる最も効果的な措置である。
 私がオリンピア・スノウ上院議員と共同提案した法案のように、SUV車の法の網の目を塞ぐだけで、毎日100万バレルの石油の節約になり、石油輸入を10%減らし、2億4,000万トンの二酸化炭素が大気中に放出されるのを防ぐことができる。今こそ行動の時であり、いつまでも研究ばかりしている必要はない。
 
 下院エネルギー通商委員長のビリー・トージン下院議員は大統領のエネルギー政策の支持者である。彼はまた、米国エネルギー政策で提案された多くの措置を盛込んだH.R.4の提案者でもある。トージン下院議員はルイジアナ州選出であり、地元選挙区は石油・ガス部門と深く関係している。同下院議員は次のようにコメントしている。
 
 エネルギー政策報告書はエネルギー産業の願い事リストだという批判もあるが、エネルギー消費者の願い事リストと呼ぶ方が適切である。報告書は環境を保護し、効率向上を奨励し、回復可能エネルギーを促進し、今後全アメリカ人が手ごろな価格でエネルギーを購入できることを確実にする政策を満載している。
 本報告書が、我々がどのようにして我が国のエネルギーのニーズを満たそうとしでいるか、包み隠すことなく率直に語っているのは爽快である。報告書は回復可能エネルギー源や新たな汚染物質基準について語っているだけではなく、我が国の電力の半分以上の源である石炭についても論じている。エネルギー計画に反対している議員も、21世紀のエネルギー需要をどのようにして満たすかについての議論は石炭抜きでは有り得ないことを認めざるを得ないだろう。問題は、これをどのようによりクリーンに、より効率よくするかである。大統領提案はこれらの問題に答えている。
 原子力発電についても率直に論じている。カリフォルニア州で2基の大型原子力発電所が操業を再開し、電力の卸値が大幅に値下がりした。カリフォルニア州民に、原子力発電所を増設することに賛成かどうか今質問してみるがいい。
 正味、この報告書は我が国の長期的エネルギー問題に対して超党派で支持する可能性のある解決策が満載されている。政治的駆け引きは別にして、我々全員が同意するものがたくさんある。議論を醸している問題はごくわずかである。
 
 テキサス州選出のジョー・バートン下院議員も大統領のエネルギー計画の支援者の一人である。彼はエネルギー政策が今までお座なりにされてきており、新エネルギー計画は長期的エネルギー問題に対するバランスの取れたアプローチだと確信している。同下院議員の選挙区は、石油、ガス利害と大きく深く関っている。
 
 ワシントンでは「バランスのとれた」という言葉が連発されるが、ここでこそこの言葉を使うべきだ。これは真に包括的なエネルギー政策のバランスのとれた計画である。省エネ、エネルギー効率向上、回復可能エネルギー源、その他の代替エネルギーはすべて、我が国の国家政策にも盛込まれているように、エネルギー計画にも含まれている。石炭、原子力、水力、天然ガス、原油も今日現実の世界で存在するように、エネルギー計画にもその場所を確保している。
 我が国はエネルギー輸入国である。カリフォルニア州が電力の需給不均衡を徐々に正す必要があるのと同様に、我が国はエネルギー全体について同じことをする必要がある。我が国がエネルギーを輸入している国の多くは、カナダのように同盟国であり、よき友である。また、友好関係にあり、通常は問題が発生した際には我が国と協調する国もあるが、必ず協力する保証はない。さらに、イラクのような国は、我が国のエネルギー輸入依存を歓迎しており、これを利用して我が国を害そうとしている。今年の我が国のイラクからの原油輸入は一日あたり平均50万バレルであった。
 エネルギー政策はないがしろにされてきた。我が国のエネルギー供給はあるべき水準まで成長していない。週去数シーズンにそのつけが回ってきており、暖房用油、原油、ガソリン、天然ガス、そしでもちろん電気の価格が高騰したのである。
 この危機に際して、我々はエネルギー政策の要素をすべで明白にし、何一つ無視するべきではない。水力以外の回復可能エネルギー源は我が国のエネルギー源のごく小さな部分でしかなく、多くの場合その技術はまだ経済的に競争力がない。しかし、我々はこれを無視するべきではない。そして、実際、我々は回復可能エネルギー技術を奨励すべきである。
 原子力と水力エネルギーは消費者、環境保護団体、議員にとって2点のすばらしい長所がある。どちらも排気ガスを出さない。新しい原子力技術と、水力ダム発電の開発は、我が国のエネルギー安全保障の促進を助けるものであり、無視することはできない。水力発電で電力の3分の1以上をまかなっている地域もある。原子力発電は全米の電力の5分の1を供給しており、ニューイングランド地方、大西洋中部地域では30%以上をまかなっている。
 最後に化石燃料は発電、車両燃料、米国消費者向け製品の生産、サービスにきわめて重大な役割を果たし続けている。これらのいずれも除外するべきではなく、包括的計画で我が国の天然資源利用を怠るのではなく、追求すべきである。我が国は「石炭のサウジアラビア」と呼ばれてきた。このように授かりものを,無視するのは賢明な国家のすることではない。







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