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3-2 石油精製
 
 環境上の制限と、経済的考慮の結果、1980年代以来米国内の精製所の数は減少している。1981年から1989年のあいだに、米国の精製所の数は324件から204件へと減少し、蒸留能力は日量1,860万バレル(251万トン)から1,500万バレル(203万トン)に減少した。1990年代に環境規則が強化されたため、現在では、精製所の数は153件にまで減少している。しかし、様々な改善の結果、残った精製所の原油蒸留能力は1990年代末以来向上している。
 
米国国内石油精製能力
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出典: エネルギー省
 
 今後、環境上の問題、法律上の問題から、米国内で新たな精製所が建設されるとは考えられない。しかし、既存の精製所の利用効率を改善することにより、精製能力は現在の日量1,680万バレル(227万トン)から、2020年には1,820万バレル(246万トン)へと1981年のピーク・レベル近くまで回復すると考えられる。
 
3-3 戦略的石油備蓄(SPR)
 
 戦略的石油備蓄はアラブ諸国の米国向け原油輸出禁止による石油供給の混乱に対応するためにフォード大統領が1975年に設立したものである。戦略的備蓄は、メキシコ湾岸の地下塩層内に掘られた貯蔵庫に最大10億バレル(1億3,500万トン)の石油を貯蔵するものである。塩層地下貯蔵庫の建設プログラムの終了時には、約7億バレル(9,450万トン)の貯蔵能力が創出された。1977年半ばに最初の原油がSPRに到着し、備蓄量は1994年には5億9,200万バレル(7,992万トン)で頂点に達した。戦略的石油備蓄から、初めての原油放出が行われたのは1991年1月であり、この時、イラクのクウェート侵攻中にエネルギー省は2,100万バレル(284万トン)の原油を売却した。次に石油備蓄放出が行われたのは1996/7年であり、連邦予算の赤字軽減のために2,800万バレル(378万トン)が売却された。
 米国の石油需要が成長し、また備蓄石油を一部売却したため、戦略的石油備蓄量は、1985年には輸入石油118日分であったのが、現在は50日分まで減少している。2001年11月に、ブッシュ大統領はエネルギー省に対して「石油供給の混乱に対して長期的に対処する能力を最大限にする」ために最大備蓄能力7億バレル(9,450万トン)を満たすように命じた。備蓄能力を最大限に満たしたとして、現在の日量1,160万バレル(157万トン)の輸入水準では輸入石油の60日分をまかなうことができる。2003会計年度予算には戦略石油備蓄に備蓄石油を追加するための1億8,100万ドルの予算が要求された。
 
3-4 天然ガス生産とLNG輸入
 
 天然ガスの生産と利用の歴史は2000年以上前に遡ることができる。中国でガス加熱蒸留装置を使い塩水から塩が作られたのが最初である。北米では天然ガスは19世紀には灯火用燃料として利用されたが、最終的に電気にその座を譲った。米国における産業用天然ガス利用は1925年にルイジアナからテキサスまで天然ガスを輸送する全長200マイル(322km)のパイプラインが建設されて始まった。それ以来、天然ガスのエネルギー源としての重要性は高まり、1958年に米国の天然ガス生産量は熱量(BTU)べースで石炭生産量を上回った。米国の天然ガスの約80%は現在テキサス、ルイジアナ、オクラホマ、ニューメキシコ、その他の州の陸上ガス田で生産されている。残りの20%はメキシコ湾オフショア産である。天然ガス総生産量に占めるオフショア産の割合は1980年以来20〜23%で推移している。
 石油と同様に、天然ガスを地下から採取するのは年々困難になってきている。米国のガス井の平均生産量は1971年に日量434,000cf(12,290m3)でピークに達して以来減少を続け、現在は日量150,000cf(4,248m3)となっている。
 
米国の天然ガス生産の生産性の推移
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出典: エネルギー省
 
 さらに、石油と同様に新たな天然ガス資源を求めて、メキシコ湾大水深海域の開発が進んでいる。天然ガスは、現在では水深7,000フィート(2,134m)を超える海域で生産されており、1,000フィート(305m)を超える大水深ガス田はメキシコ湾のオフショア生産全体の23%まで増加した。10年前には、1,000フィートを超えるガス田は実質的に存在しなかった。
 
オフショアガス生産の推移
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出典: エネルギー省
 
 天然ガスの出所としての液化天然ガス(LNG)輸入への関心も再燃している。前述のように、2001年には3カ所のLNG受け入れターミナルが、少なくともパート・タイムで運転されていた。これらのターミナルには101隻分の入荷があった。メリーランド州コーブ・ポイントにある第4のターミナルは、今後12ヵ月以内に再開が予定されており、4件のターミナルがそれぞれ受け入れ能力を拡大するための拡充を計画している。プエルトリコにある5番目のターミナルを入れると、米国のターミナルは225億cf(6億3,700万m3)の貯蔵能力、日量30億cf(8,500万m3)のピーク送出能力を有することになる。
 
米国とプエルトリコのLNGターミナル
場所 オーナー 貯蔵能力
(Bcf)
ピーク送出量
(MMcf/d)
運転中
Everett,MA Tractebel 3.5 435
Lake Charles, LA CMS 6.3 700
EIba Island, GA El Paso 4.2 675
Penuelas, PR EcoElectrica 3.5 186
予定
Cove Point, MD Williams 5.0 1,000
Total 22.5 2,996
出典: オイル・アンド・ガス・ジャーナル誌
 
 さらに、米国内で9件のLNG受け入れターミナルが計画段階にある。建設予定地はフロリダ、ノースカロライナ、カリフォルニア、テキサス、ルイジアナ州である。このうちのひとつであるエルパソのプロジェクトは、メキシコ沖で浮体式再ガス化施設を使い、日量4億cf(1,133万m3)のLNGをパイプライン経由で米国に送るものである。しかし、LNGプロジェクトは、特に2001年9月の同時多発テロ発生以来、安全性の点で市民から大きな反対を受けている。
 

Note:
Bcf−10億立方フィート;MMcf/d−日量100万立方フィート







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