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2-6 エネルギー商社
 
 このカテゴリーの企業は、天然ガスと電力部門で垂直統合されており、ガスや電力をスポット市場や先物取引市場で売買する能力を有するのに加えて、ガス、電力を輸送する能力、ガス貯蔵能力を有するものである。エネルギー商社の事業は、現在の市況、そして予測される市況に応じて、ガス資源と電力生産を最も効率よく管理することで成り立っている。エネルギー商社の存在は、エンロンにより有名になった。ほとんど全てのエネルギー商社が当局の監査を受けており、株式市場でもエネルギー商社株は軒並み下落している。代表的なエネルギー商社7社を次に概説する。
 
ダイナジー社(Dynergy)
 同社は発電事業を行うと同時に、電力、天然ガス、石炭、その他のエネルギー製品を商業ユーザー、産業ユーザーに販売しているエネルギー商社である。発電事業部門では、ダイナジー社は運転中、建設中、または開発中の41件、総発電能力18,833メガワットの発電プロジェクトに関与している。これらの施設の約61%はガスのみを燃料とする発電所であり、残りの施設は石炭、重油、または石炭、燃料油、天然ガスを組み合わせて利用している。同社の中流事業は天然ガスの採取、処理そして天然ガス液の精留、貯蔵、ターミナリング、輸送、配送、マーケティングからなる。同社の送配電(ガス)部門は、イリノイ北部、中部、南部のかなりな部分の家庭用、商用、産業用ユーザー向けの電力及び天然ガスの小売サービスを提供している。同社はまた、多数の電力・ガス会社、市、電力取引会社に送電サービスを提供している。同社のマーケット・キャップは現在9億ドル、2002年の資本支出予算は12億ドルであった。しかし、ダイナジー社は経営上の問題に加え、エンロン事件の余波を受けたことで、同社の株式は2001年11月に1株あたり47ドルで取引されていたが、現在は1.50ドル水準まで下落している。今後1年以内に、同社が破産に追い込まれる可能性は高い。ダイナジー社は本社をテキサス州ヒューストンに置いている。
 
エルパソ社(El Paso)
 同社は天然ガス輸送、採取、処理、貯蔵事業(天然ガス・石油探鉱)、開発、生産事業(エネルギー及びエネルギー関連商品)、製品のマーケティング事業、発電事業(エネルギー・インフラストラクチャー施設開発と運営事業)、石油精製事業、化学製品製造事業、石炭採鉱事業を主に手掛けている。エルパソ社の事業はパイプライン、エネルギー取引、生産、油ガス田サービスの4つの部門に分けられている。これらの事業部門は、多様なエネルギー製品及びサービスを提供する戦略的事業ユニットである。パイプライン事業部門は、米国内外に約60,000マイル(96,560km)の天然ガス・パイプラインを所有、または権利を保有している。米国内では、同社のシステムは国内の主要天然ガス供給地域とメキシコ湾岸、カリフォルニア、北東部、中西部、南東部の5大消費地域を結んでいる。同社の米国パイプライン網はまた4,300億cf(121億8,000万m3)の貯蔵能力を有し、顧客に様々なサービスを提供するために利用されている。同社はジョージア州エルバ島に2001年に再開された液化天然ガスターミナルを所有、運営している。2002年の生産用資本支出予算は17億ドルであった。同社のマーケット・キャップは77億ドル。本社はテキサス州ヒューストン。
 
ウィリアムス社(Williams)
 ウィリアムス社は天然ガス、石油製品の輸送、販売、及びその他のエネルギー関連事業を手掛けている。ウィリアムス社の事業には、価格リスク管理サービス;エネルギーおよびエネルギー関連商品の購入、販売、そして輸送または送電(ガス)の手配;天然ガスの輸送・貯蔵;石油・ガスの探鉱、生産、マーケティング;海外のエネルギー・プロジェクトヘの直接投資;エネルギー及びインフラ開発ファンド、ソーダ灰採鉱事業へ投資;天然ガス採取、処理、加工事業;天然ガス液輪送;石油製品輸送と関連ターミナル・サービス;軽炭化水素/オレフィンの輸送;エチレン生産;エタノールとその副産物の生産とマーケティング;石油製品の精製;小売マーケティング;石油製品ターミナル・サービス;アンモニア輸送とターミナル・サービスがふくまれている。同社は3,800兆BTU(9,576万石油換算トン)の貯蔵能力、最大配送日量約170億cf(4億8,140万m3)の総全長約27,500マイル(44,260km)のパイプラインを所有、運営している。2002年の資本支出予算は32億ドル、現在のマーケット・キャップは15億ドルである。同社の本社はオクラホマ州タルサに置かれている。
 
デューク・エネジー社(Duke Energy)
 デューク社はエネルギー及びエネルギー・サービスの総合商社である。同社は米国内外で電力と天然ガスの配送、及び管理事業を行っている。7つの事業部門を通して、同社はノースカロライナ州中西部、サウスカロライナ州西部で電力の発電、送電、配電、販売を行っている。デューク社は電力、ガス会社に、通常規制を受けない価格で電力を販売する商用発電所の建設に事業の焦点をあてている。同社は北米、特に大西洋岸中部、ニューイングランド、南東部州の顧客向けに天然ガスの輸送、貯蔵サービスも提供している。天然ガスの採取、処理、輸送、マーケッティング、貯蔵、及び天然ガス液の生産、輸送、マーケティング、貯蔵も手掛けている。2002年の資本支出予算は当初68億ドルを予定していたが、ビジネスが停滞しているため62億ドルに縮小された。マーケット・キャップは現在約162億ドル。同社はノースカロライナ州チャールストンに本社を置く。
 
カルパイン社(Calpine)
 同社は、米国、カナダ、英国において、発電施設の開発、購入、所有、運転と電力の販売に従事している独立系電力会社である。カルパイン社はまた再生可能な地熱エネルギーの生産も行っている。同社はカナダと米国に1兆3,000億cf(368億1,000万m3)相当の天然ガス確認埋蔵量を保有している。同社は64基の発電所の所有権を保持しており、その純発電能力は合計12,090メガワットである。また現在、純発電能力合計14,142メガワットの24件のガス火力発電所を建設中であり、純発電能力合計15,100メガワットの34件のプロジェクトが最終開発段階に達している。建設中の発電所が完成すれば、同社は全米21州、カナダ3州、そして英国に86基、純発電能力26,232メガワットの発電所の所有権を保有することになる。2002年の資本支出予算は約50億ドル。現在のマーケット・キャップは13億ドル。本社はカリフォルニア州サンノゼ。
 
マイラント社(Mirant)
 マイラント社は、発電、送配電施設の買収、開発、建設、所有、運転を行い、電力・ガス会社及び産業ユーザーに広範なエネルギー関連サービスを提供している。多様な子会社を通じて、同社は米国、カナダ、カリブ海諸国、南米、アジア、ヨーロッパで発電資産を所有、またはコントロールしている。2002年年頭に、同社は世界で22,000メガワットを超える発電能力を所有またはコントロールしており、約6,800メガワットを開発中であった。北米では、同社は日量約39億cf(1億1,040万m3)の天然ガス生産、日量64億cf(1億8,120万m3)以上の輸送、600億cf(16億9,900万m3)以上の貯蔵能力のアクセスを握っている。同社は、サザン・エネジー社という名称であったが、2001年1月にマイラント社に社名を変更した。2002年の資本支出予算は約20億ドルである。同社のマーケット・キャップは9億6,400万ドルであるが、同社もエンロン事件の影響を受け、2001年夏に45ドルで取引されていた同社の株は現在2.50ドル水準まで下落している。同社はジョージア州アトランタに本社を置く。
 
アクィラ社(Aquila)
 アクィラ社は主に非規制市場で電力及び天然ガスを販売している。この事業が同社の年間売上げの95%を占める。アクィラ社は発電施設から電力を購入し、これを主に電力会社、市、協同組合(Cooperatives)、その他のマーケティング会社に売却する。アクィラ社の電力マーケティング及び市場取引事業は、電力供給の様々な段階における電力取引、電力供給の集約、送配電の手配を含む。アクィラ社はまた多様なサプライヤーから天然ガスを購入している。その購入方法は、一日契約、月契約、可変ロード、またはベースロード契約、そして、変動価格、固定価格契約と多岐にわたる。同社は、需要の季節変動やその他の変動に合わせるための様々な条件を含む契約の下で天然ガスを販売している。アクィラ社は系列パイプライン会社、非系列パイプライン会社と短期、長期、確定契約、中断可能契約など多様な条件で輸送契約を結んでいる。同社はまた全米8州とジャマイカの14の独立発電プロジェクトに関与しており、テキサスの天然ガス・パイプライン、オーストラリアの電気・天然ガス配送ネットワーク、米国の石炭ターミナルと取り扱い施設の50%株を保有している。2002年の資本支出予算は6億4,300万ドル。マーケット・キャップは現在7億6,600万ドル。本社は、ミズーリ州カンサスシティ。







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