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2-3 独立系精製会社
 
 このカテゴリーは、石油製品の精製、販売を行うが、原油生産事業の上流部門(探鉱・開発・生産)活動は行っていない会社である。独立系精製会社は原油を購入し、これを様々な製品に変えることにより付加価値を生み、価格設定と製品の差異化により競争する。米国の独立系精製会社の大手3社を次に概説する。
 
サノコ社(Sunoco)
 同社は、主として石油精製と化学製品製造を行っているが、コークス製造にも関与している。サノコ社の石油精製・販売事業には、燃料、潤滑油、石油化学製品のような石油製品全般の製造、販売、原油及び精製品の輸送が含まれる。同社の小売事業は、ガソリン、中間留出油の小売販売、米国東海岸及び中西部21州におけるコンビニエンス・ストアの運営が含まれている。サノコ社の化学製品事業は、商品(コモディティ)及び中間石油化学製品の製造、流通、販売を含む。同社はまた、石油精製品及び原油パイプラインを運営しており、石油精製品及び原油ターミナル事業も手掛けている。これらの事業は主に、米国北東部、中西部、南中央部地域で展開されている。同社の現在のマーケット・キャップは31億ドル、資本支出予算は5億1,700万ドルで2001年の3億3,100万ドルから増額となっている。サノコ社の本社はペンシルバニア州フィラデルフィアに置かれている。
 
ヴァレロ社(Valero)
 ヴァレロ社の精製事業は12の精製所からなり、総生産能力は日量約190万バレル(256,500石油換算トン)である。ヴァレロ社の精製品売上げ全体の約52%をガソリンが占めており、石油蒸留製品、ディーゼル、ジェット燃料が約30%を占める。アスファルト、潤滑剤、石油化学製品、その他の重産物が残りの18%をしめている。ヴァレロ社の精製所の大部分は外洋輸送施設にアクセスを有し、全てが一般輸送パイプラインで連結されており、米国及びカナダ東部のほとんどの主要地域に製品を販売することができる。ヴァレロ社はまた、自社の精製所で製造されたアスファルト、潤滑基油、石油化学製品(Commodity Petrochemical)等の多様な製品を販売している。製品はパイプライン、バージ、トラック、鉄道を利用して輸送される。ヴァレロ社は米国第二のアスファルト生産者であり、8つの精製所でアスファルトを生産し、全米20州でこれを販売している。現在のマーケット・キャップは12億ドル。昨年の資本支出予算は3億6,300万ドルであった。ヴァレロ社の本社はテキサス州サン・アントニオにある。
 
テソロ社(Tesoro)
 この独立系精製会社は、現在石油精製所をアラスカ、ワシントン、ハワイ、ノースダコタ、ユタ州で運営しており、精製品を米国の内陸中部、内陸西部、ハワイ、アラスカ、及び環太平洋諸国に販売している。テソロ社が運営する6つの精製所にはハワイ州、ユタ州最大の精製所と、アラスカで2番目の精製所、そしてノースダコタ唯一の精製所が含まれている。同社の6つの精製所の総原油処理能力は日量56万バレル(75,600石油換算トン)である。テソロ社の海洋事業部門は、広範な石油製品、化学製品及びサプライを販売、流通し、メキシコ湾で事業を行っている海洋及びオフショア探鉱、生産産業にロジスティック上の支援サービスを提供している。これらの事業はテキサスのメキシコ湾岸に所在する15のターミナル網を通して実施される。同社の現在のマーケット・キャプは1億7,400万ドル、資本支出額は9,000万ドルから1億ドルである。これには大型購入費用は含まれていない。同社はテキサス州サン・アントニオに本社を置く。
 
2-4 総合天然ガス会社
 
 このカテゴリーは、天然ガス部門で縦に統合され、生産/流通/小売の様々なレベルで事業を行っている企業である。場合によっては、天然ガス以外でも小規模な事業、たとえば発電所プロジェクト開発を行っている会社も含まれる。しかし、基幹事業は天然ガスの流通、マーケティングである。このカテゴリーに含まれる大手3社を次に概説する。
 
エクイタブル・リソーシズ社(Equitable Resources)
 同社はアパラチア地域で天然ガス生産、採取、送ガス(Transmission)10を行っている。エクイタブル社は米国で最古であり地理的に最大級の天然ガス生産地域であるアパラチア盆において最大の確認ガス埋蔵量を保有している。同社はまた、メキシコ湾及びロッキー山脈地域の石油・ガスの探鉱・生産資産の株式も保有している。エクイタブル社は、主としてアパラチア地域、太平洋岸中部地域で、卸売り、小売業者に天然ガス、原油、天然ガス液製品とサービスを提供している。パイプライン事業は、約2,800マイル(4,506km)の輸送、貯蔵、採取ラインからなり、5つの主要な州際パイプラインと連結している。エクイタブル社はまた総出荷日量約5億cf(1,420万m3)の能力を有する15の天然ガス貯蔵所を保有している。現在マーケット・キャップは22億ドル、2002年の資本支出予算は8,000万ドルである。同社は本社をペンシルバニア州ピッツバーグに置いている。
 
クエスター社(Questar)
 このエネルギー・サービス会社は、探鉱から小売まで一貫した天然ガス事業を手掛けている。同社の一事業部門は、エネルギー開発と生産、ガス採取と処理、ガス及び炭化水素液のマーケティング、リスク管理、貯蔵に焦点を当てている。別の事業部門は、州際の送ガス(Transmission)、貯蔵事業と小売用配ガス(Distribution)サービスに焦点を当てている。2002年年頭に、同社が保有する確認埋蔵量は天然ガス9,980億cf(282億6,000万m3)、石油及び天然ガス液3,110万バレル(約420万石油換算トン)であった。同社の小売市場は主にユタ州とワイオミング州である。現在のマーケット・キャップは18億ドル、2002年の資本支出予算は3億7,500万ドルである。同社の本社はユタ州ソルトレーク・シティにある。
 
キンダー・モーガン社(Kinder Morgan)
 同社は米国最大級のエネルギー貯蔵、輸送会社であり、30,000マイル(48,280km)を超える天然ガス及び製品パイプラインを運営している。米国天然ガスパイプライン社(Natural Gas Pipeline Company of America)を通して、同社は約10,000マイル(16,090km)の州際天然ガスパイプラインを運営しており、同パイプラインはシカゴの大都市圏まで繋がっている。キンダー・モーガン社は約8,600マイル(13,840km)の配ガス用パイプラインと地下貯蔵施設を利用して、コロラド州、ネブラスカ州、ワイオミング州で大規模な天然ガス小売流通事業を展開している。天然ガス部門のほかに、同社は10,000マイルを超える石油・石油製品パイプラインと32の提携ターミナル、そして年間約5,500万トンの石炭、石油コークス、その他の製品を扱う33のドライバルク・ターミナル施設を含む石油製品パイプライン・システムを運営している。さらに、同社は発電プロジェクトを設計、開発、実施し、独立系電力生産者として発電施設を運営している。これは主に、長期的な消費顧客のために発電プロジェクトを開発するサービス毎の請負事業である。顧客が商品の市場における便益とリスクを負い、キンダー・モーガン社に施設の開発、建設、場合によっては運営料を支払う。同社のマーケット・キャップは現在51億ドル、2002年の資本支出予算は1億4,600万ドルであった。同社の本社はテキサス州ヒューストンにある。
 

10
Transmission(送ガス):電力の送電にあたる。工場から高圧の大量のガスを貯蔵所、ガバナ・ステーションまで送ること。これに対して、Distribution(配ガス)は電力の配電にあたり、低圧のガスを一般家庭や商用ユーザーまで送ること。







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