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米国における船舶のバリアフリー化推進に関する調査

 事業名 造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


2. 規制の策定
 
A. アクセス委員会
 
 アクセス委員会は、障害をもつ人々のアクセシビリティを専門とする独立連邦機関である。アクセス委員会の責務は次のとおりである。
・建築物の環境、交通機関、電気通信機器、電子情報技術のアクセシビリティに関する要求事項を策定し維持する。
・これらのガイドラインおよび基準に関する技術支援と教育訓練を提供する。
・連邦資金による施設にアクセシビリティの基準を強制する。
 
 アクセス委員会は、アクセシビリティの設計基準を策定する中心的機関が必要であるとの議会の認識により、「1973年リハビリテーション法(Rehabilitation Act of 1973)」に基づいて設立された。アクセス委員会は、この法律のセクション502の規定によって設立され、当初の名称は建築物・交通機関バリアフリー委員会(Architectural and Transportation Barriers Compliance)であった。その後数年のうちに、ADAなど様々な法律がこの委員会の任務に加わり、それに伴って組織構造が変更された。
 
 アクセス委員会は、各連邦機関の調整役を努めるとともに、公衆、特に障害を持つ人々を直接代表する組織として設立された。この委員会のメンバーの約半数は、連邦のほとんどの省の代表者であり3、残りの半分は大統領が指名した4年任期のメンバーで構成されている。委員会は毎年、委員長と副委員長からなる役員を選出する。この役職には大統領指名のメンバーと連邦メンバーが交互に勤める。アクセス委員会の会議は2ヶ月に1度、主としてワシントンDC地域で開催され、公開されている。
 
 また、アクセス委員会は約30人のスタッフで運営され、所在地は以下のとおりである。
 
1331 F Street, NW Suite 1000
Washington, DC 20004−1111
電話番号:202−272, 0080
Fax:202−272−0081
電子メール:info@access-board.gov
 
 アクセス委員会は、ほとんどの連邦規制と共通のプロセス、つまり法律に基づいてアクセシビリティの要求事項を策定し、パブリックコメントの機会を提供するというプロセスで作業を行っている。このプロセスは、アクセス委員会がアクセシビリティのガイドラインや基準を策定または更新するために諮問委員会や規制交渉委員会を設立する際の標準方式となっている。委員会は、通常、次のプロセスで規則を策定する。
・規則の要求事項について勧告を策定する諮問委員会を組織する。諮問委員会を設けることにより、設計者、産業界、障害を持つ人々などを代表する関係団体が委員会のガイドライン策定において重要な役割を果たすことができる(ガイドライン策定後、それに対するパブリックコメントが募集される)。
・諮問委員会の勧告に基づいて規則案を策定し、前文(討議)、図表、注釈を加えて、規制評価書を作成する。
・行政管理予算局(OMB)に規則と評価書を提出し、承認を得る。OBMは90日で審査を完了する。
・規則案を官報で告示し、パブリックコメントを募集する。コメント募集期間は発行日から30〜120日間である。この期間中に公聴会を開催する。
・寄せられたコメントを審査し、必要に応じて規則に変更を加える。
・規則と最終的な規制評価書をOMBに再提出する。OMBは90日間で審査を完了する。
・官報で最終的な規則を告示する。
 
 通常、アクセス委員会が「ガイドライン」を作成し、この「ガイドライン」に基づいて他の機関が「標準」を策定する。つまり、アクセス委員会のガイドラインは、強制力のある標準を策定するための最低基準といえる。
 
 1991年7月、アクセス委員会は建築物および施設のアクセシビリティガイドラインを発行し、さらに1991年9月には、交通機関のアクセシビリティガイドラインを発行した。アクセス委員会が作成した多くのガイドラインのうちでも、これら2つの文書は、ADAアクセシビリティガイドライン(ADA Accessibility Guidelines:ADAAG)と呼ばれている。
 
B. 旅客船アクセス諮問委員会(Passenger Vessel Access Advisory Committee:PVAAC)
 
 アクセス委員会は、交通機関のADAAGを発行した当初、旅客船の要求事項については、さらに調査と情報収集が必要として未定のまま残した。旅客船に関する詳細な調査と情報収集は1998年8月に開始され、これに伴いアクセス委員会は、旅客船アクセス諮問委員会(PVAAC)を組織した。この諮問委員会の任務は、新たに建造/改造される旅客船のアクセシビリティガイドラインに関する規則案の勧告を作成することである。
 
 PVAACは、旅客船所有者および運航者、旅客船設計者、海軍エンジニア、米国沿岸警備隊、障害者団体など、様々な関係者の代表で構成された。PVAACを構成する21人のメンバーの具体的な組織名と名前は次のとおりである。
・American Classic Voyages、Debra Contreras (副会長) 、イリノイ州シカゴ
・American Council of the Blind、Melanie Brunson、ワシントン, DC
・American Sail Training Association、Louis Linden、メリーランド州バルチモア
・American Society of Travel Agents、Wayne Nelson、ヴァージニア州アレクサンドリア
・BB Riverboats、Alan Bernstein、ケンタッキー州コヴィントン
・Boston Commission for Persons with Disabilities、Stephen Spinetto (会長) 、マサチューセッツ州ボストン
・Chesapeake Region Accessible Boating, Inc.、Donald Backe、メリーランド州アナポリス
・International Council of Cruise Lines、Ted Thompson、ワシントン, DC
・National Tour Association、Christopher Shepler、ミシガン州マッキノーシティ
・Paralyzed Veterans of America、Christine Griffin、マサチューセッツ州ボストン
・Passenger Vessel Association、John Waterhouse、ワシントン州シアトル
・Port of San Francisco、Richard Skaff、カリフォルニア州サンフランシスコ
・Princess Cruises、Janice Tuck、カリフォルニア州ロサンジェルス
・Rhode Island Tourism Division、Robert Gearing、ロードアイランド州プロヴィデンス
・Self Help for Hard of Hearing People, Inc.、Susan Finisdore、ワシントン, DC
・Society for the Advancement of Travel for the Handicapped、Laurel Van Horn、ニューヨーク州ニューヨーク
・Southeast Alaska Independent Living、Jerry Kainulainen、アラスカ州シトカ
・Southwest Disability and Business Technical Assistance Center、Carri George、テキサス州ヒューストン
・The Society of Naval Architects and Marine Engineers、David Chapman、ニュージャージー州ケープメイ
・Transportation Institute、Lawrence Evans、メリーランド州キャンプスプリングズ
・Washington State Department of Transportation、Tyler Cassedy および David Humphreys、ワシントン州シアトル
 
 PVAACは、2年の任期のあいだに10回以上会議を開き、最終的に2000年11月17日に作業を完了し、『旅客船アクセシビリティガイドラインについての勧告:最終報告書(Recommendations for Accessibility Guidelines for Passenger Vessels:Final Report)』をアクセス委員会に提出した。この最終報告書には、フェリー、カジノ船、クルーズ船、観光船など、多様な旅客船の設計上の配慮に関して、詳細なアクセス基準が記載されている。これは、ADAの対象のうち、旅客船の新規建造および改造に内容を限定した勧告書である。
 
 現在、アクセス委員会はこの報告書を検討し、ガイドライン案の策定を進めている。完成したガイドラインは、アクセス委員会が交通機関について発行したADAAGを補完するものとなる。
 
 1994年9月、アクセス委員会は ADAAG 審査諮問委員会(ADAAG Review Advisory Committee)を組織し、ADAアクセシビリティガイドラインの更新および改訂に着手した。2年後、この諮問委員会がアクセス委員会に報告書を提出し、これに基づいて最終的な規則案が策定された。1999年11月、この規則案が公表され、パブリックコメントが募集された。最終規則は2002年中に完成される予定である。
 
 PVAACは、『旅客船アクセシビリティガイドラインについての勧告:最終報告書』を作成するにあたって、ADAAG審査諮問委員会の報告書である「新ADAAGに関する勧告(Recommendations for a New ADAAG)』を手引きとして使用した。PVAACは、基本的にADAAG審査報告書に記載されている勧告を旅客船に当てはめ、船舶への適用が難しい規定に変更を加えて作成された。
 
 ADAAG審査諮問委員会の『新ADAAGに関する勧告(ADAAG-Review)』は、10章程度の文書であり、アクセス委員会のWebサイト(http://www.access-board.gov/ada-aba/commrept.htm)で入手できる。この文書の目的(この文書の第1章に記載されている)は、会場、施設、建物、および要素に対する障害を持つ人々のアクセシビリティに関して、その適用範囲(何に対するアクセシビリティを提供するか)と技術的な要求事項(どのようにアクセシビリティを提供するか)を提示することである。
 
 範囲に関して言えば、アクセシビリティガイドラインは、新しく設計または建築された建物や施設、および既存の建物や施設の改造部分のあらゆる領域に適用される。例えば、次のような領域が含まれる。
・バリアフリールート
・バリアフリーの脱出手段
・駐車場
・乗客の乗降ゾーン
・階段
・吹き上げ式水飲み器およびウォータークーラー
・洗面台
・トイレおよびバスルームの設備
・洗濯設備
・火災警報システム
・標識および掲示
・電話器
・交通機関
・補聴器システム
・現金自動預払い機および料金精算機
・補助シートの車椅子用スペース
・化粧室、試着室、ロッカールーム
・医療施設の患者用または居住者用の寝室
・短期宿泊客用の客室
・セルフサービスの収納設備
・テーブル、カウンター、作業台の座席
・販売およびサービスの窓口
・収納設備
・自動販売機および同様の機器
 

3
これらの省は、商務省、国防総省、教育省、保健社会福祉省、住宅・都市開発省、内務省、司法省、労働省、運輸省、退役軍人省、業務管理局、米国郵政公社である。







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