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【3】港湾情報システムの概要
 シンガポール港では、ハード面の港湾設備の整備と共に、各種港湾情報システムを導入し、通関手続きのぺ一パーレス化を図るなどソフト面やサービス面からも港湾業務の効率化を図ってきている。
 主な港湾情報システムの概要は、以下のとおりである。
 
(1)PORTNET
 1989年に導入されたPSA独自のシステムで、海事関係者(船会社・代理店、運送業者、海貨業者、荷主等)を対象に、バースの手配、港湾関連申請書類等の提出、荷役関連情報の確認(出入港スケジュール、コンテナ貨物の搬出入、蔵置き、船積み情報等)等コンテナ・ターミナル運営に必要な情報交換・手続きを24時間リアルタイムで可能とする。政府のEDIシステムによる貿易ネットワークであるTRADENETとの接続により、貿易関連政府機関等への通関申請手続きも容易に行える。
 
 さらに、PSAコーポレーションはインターネットによるPORTNET−TMを開発し、1999年に全面供与した。これによって、既にパイロット・タグサービスの申込みができるようになっていた他、利用者が海外のオフィスに居ながらにして請求書等のやりとりや、下記(2)のCITOSとリンクして例えばPSAヤードにある冷凍コンテナの温度監視等も可能となった。
 
【TRADENET】
 貿易業者、税関、TDB(貿易開発庁)等を結ぶ通関システムで、航空貨物、港湾貨物及び陸送貨物のすべての貿易手続き(輸出入貨物の通関書類の申請、審査、認可等)のペーパーレス化を可能とする。本システムの導入により、通常1〜4日要した一般的な貿易手続き書類の処理時問が15分に短縮された。
 
(2)CITOS(Computer Integrated Terminal Operations System)
 ヤード内での効率的なコンテナ取扱い作業の計画・指示を行うPSA独自のシステムで、1990年に導入された。必要とするバース、ヤード、設備、マンパワーを計画し、ヤードの中央制御室より現場の機器類のオペレーターにリアルタイムで作業指示を行う。さらに、PSAは外国のコンテナ・ターミナル向けにCITOSのシステムをパッケージにしたCITOS−1を1997年に開発し、中国大連コンテナ・ターミナルで最初に導入されている。
 
(3)その他の港湾情報システム
“FLOW−THROUGH”CONTAINER GATE SYSTEM
 コンテナ運搬車がPSAターミナルのゲートを通過する際、TVカメラ、トランスポンダーやコンテナ番号自動識別装置等により、ペーパーレスで瞬時(約25秒)に通過することができるシステム。コンテナの積み下ろし位置も自動的にドライバーに通知される。1日に約8000台、ピーク時には1時間に約700台を取り扱うことができる。
 
【4】海外におけるターミナル共同開発プロジェクト
 PSAコーポレーションは、世界のハブ港を目指し、顧客のニーズに応えるべくサービス網を拡大するため、シンガポール港の運営等で培ってきた経験とノウハウを世界の港湾の開発・管理・運営に活用することにも力を入れており、1996年に中国・大連港のコンテナ・ターミナルの開発プロジェクトに参画したのを皮切りに、既に世界の10の港でターミナルの共同開発プロジェクトを展開している。2000年にはブルネイ、韓国の3つの港でプロジェクトが大きく前進した。また、北九州ひびき灘でも実現に向けた動きがある。これらのターミナルで2000年は、172万TEUのコンテナを取り扱った。
 
<PSAコーポレーションの海外展開プロジェクト>
国名 港・ターミナル コンテナバース数 ターミナル容量 コンテナ取扱量(2000年)
中国  大連コンテナ・ターミナル 4 150万TEU 979,300TEU(対前年比41%増)
福州港 3 34万TEU 328,000TEU(対前年比36%増)
イタリア  ボルトリ・ターミナル 4 87万TEU 743,900TEU(対前年比50%増)
ベニス・コンテナ・ターミナル 3 30万TEU 208,500TEU(対前年比8%増)
インド  ツチコリン・コンテナ・ターミナル 2 20万TEU 150,800TEU(99年12月供用開始)
ピパバフ港 1 20万TEU (99年第1期供用開始)
イエメン アデン・コンテナ・ターミナル 2 50万TEU 247,900TEU(99年3月供用開始)
ブルネイ ムアラ・コンテナ・ターミナル 1 6.1万TEU (2000年10月運用契約締結)
ポルトガル シネス・コンテナ・ターミナル 3(計画) 140万TEU(計画) (99年9月プロジェクト開始)
韓国 仁川南港コンテナ・ターミナル 3   (2000年11月ジョイントベンチャ合意)
日本 北九州ひびき灘 12(計画) 150万TEU(計画)  
 
【5】旅客ターミナルの概要
 PSAコーポレーションが運営するシンガポール・クルーズ・センター(SCC)は、1991年にオープンした初の旅客専用ターミナルで、ワールド・トレード・センターのサイトにあり、3バースを有する国際旅客ターミナル、近海フェリーターミナル(近くのインドネシアの島々及びマレーシア航路)、及び国内フェリーターミナル(シンガポールの南の島々への航路)から成る。さらに、1995年には、近海フェリーターミナル(インドネシアのバタム島・ビンタン島及びマレーシア半島東岸への航路)として、2バースを有するタナメラ・フェリーターミナルがオープンした。これらの他に、パシール・パンジャン・フェリーターミナル、ウェストコースト・フェリーターミナル等がある。
 SCC国際旅客ターミナルの旅客数は、オープン当初の1991年に13万人であったものが、1998年は105万人となり、SCCでは1998年12月、1日当り3,000人、年間150万人の旅客を扱えるように施設を増強し、270メートル級の大型クルーズ船の受入れが可能となった。2000年のSCCの寄港隻数は対前年比12.6%減の1,213隻であった。
 
<国際・国内旅客ターミナルの旅客数>
(単位;100万人)







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