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【柏崎市比角小学校】
住所:新潟県柏崎市
■ヒアリング実施状況
日時:2002.12.16 10:30〜16:30
場所:柏崎市立教育センター、比角小学校
■調査項目
総合的な学習の時間の現状と、教育に対する思い・意義
団体との連携、ネットワーク きっかけと経緯、課題
リスクマネジメント
成果 評価とフィードバック
■概要
 柏崎市では以前から体験学習を草の根的に実施してきた経緯があり、教員や地元住民もそれを行うことがあたりまえとなっている。そのため、PTAを含めて体験学習に対する理解が深く、様々な有意義な取り組みが行われている。
■ノート
#柏崎市立教育センター
□各種出版物の紹介
 童心社(絵本や紙芝居の出版社)から総合的な学習の時間に対応した書籍を出版した。図書館にいながら総合的な学習の時間の活動をイメージできるようなものを作りたかった。
 長岡市で出版予定の「みんなの道」は、単なる道路のPR冊子ではなくて、自分たちで組み立てられるようなものにする予定である。ポートフォリオ的手法で、様々な調べたことをファイリングしていくものを作りたいと考えている。
 情報提供手段としてwebやニュースレターなどが多いが、現状ではwebは使いづらいし、ニュースレターは子どもの目にはつきにくい。ネットワークは、柏崎市内は10Mb/sでつながっており、かなり環境的には整ってきたと言えるが、PC端末などのハード面でまだまだ厳しい。最終的には教員一人一人を繋ぎたいとは考えている。
□各小学校の取り組み
 総合的な学習の時間で農業をテーマにすることが多い。上越教育大学附属小学校で実施したプログラムに影響を受けている部分が大きい。以前から脈々と実施してきており、全国で実施されている川のプログラムのモデルになっている。3年生で農業を扱い、6年生では町づくりや社会の理解から国際理解まで扱う。
 上越教育大学附属小学校では、30年前から体験活動を大切にしてきたという経緯がある(知識偏重型の教育に乗り遅れたとも言える)。川を舞台に体験学習をずっと継続してきた。そのため1998年に総合的な学習の時間の実施が決まった時に、蓄積した情報を発信できた。その一つである「みんなで総合しよう」は、学校の報告書はこれまで文字ばかりで読み手を意識していないものがほとんどだったことに対応して、写真を入れてもっと見やすいものにした。
 大手町小学校でもずっと実施してきた。大手町小学校は生活科ができる時、研究開発校になった。移住者から大手町小学校に入るための住所の問合せが来る程有名である。
 その他、柏崎小学校5年生、荒浜小学校5年生が海を扱っている。
□総合的な学習の時間をよいものにするために
 地域によりスタイルの違いがある。柏崎での実践事例をそのまま実施するのは無理。例えば東京の小学校で牛を飼うことは出来ない。実践例から要素を抜き出して応用する必要がある。とにかく現場の子どもたちに良いものを与えるようにすることが大切である。最近では、学校による特色を出せたり、少しずつゆとりが出てきたりしている。
 現段階で良い総合的な学習の時間を実施するためには多くの時間が必要となる。手軽に質の高い総合的な学習の時間が実施できるようになれば嬉しい。
□助成制度と単元配列表
 総合的な学習の時間では年間の指導計画が大切で、単元配列表を作るようになってきた。学校教育全体のグランドデザインと言える。1枚の紙で全体が見える。逆に表の中の総合的な学習の時間の場所で、その学校における総合的な学習の時間の位置づけが見える。「やる気・元気」などの助成金制度でも、助成の条件として単元配列表を出す動きがある。100万円くらいが助成され、外部への謝礼・移動手段費(本来なら受益者負担)・新しい施設費として利用できる。以前は「チャレンジ21」という名称の助成制度だった。成果を提出し、評価をして2年で引き続き継続する学校が決められた。
#比角小学校
□3学年
 海の柏崎というテーマで取り組んでいる。歩いていける距離に海がある。海水浴には行くようだが、それ以外ではあまり行かないようだ。遊びながら学んで欲しいのだが、岩場で遊んだことがある子どもは少ない。海の生き物に触れない子や、どこにいるかわからない子も多かった。逆に親と十分な体験をしている子(女)も一人いた。
 どうやってスタートするかが大切である。今回は、学校近辺の散策から壊れた道路などに焦点を当て、また屋上から見えるものを観察することで社会に目を向けさせた。これに海を加えることで環境へと繋げていく。
 社会科の中で図書館を扱う時間がある。いくつかの時間をまとめて、ソフィアセンターヘ行って海のことを調べる。他教科との繋がりもある。また、夏休みの活動にも繋がる。
 親子学習でサケのふるさと公園へ行った。春にPTAから提案してくれた。PTAが2回公園へ打合せに行き、学校はPTAと3回打合せをした。公園は新しい施設で、以前からPTAが使いたがっていたようだ。事前に要望を伝え対応してもらった。時間に余裕があったためつかみ取りもやった。楽しいだけで学びはないかと思っていたが、触ることによる効果は大きいようだった。
 浜の漁師に刺し網で獲れた魚を見せてもらった。7月から受け入れ先を探して、夏休みに入った後すぐに電話した。夏休み中に打合せをした。授業の流れまでは伝えなかったが、とにかく食べることも含めて体験させたいことを伝えた。本当は地引き網をさせたかったが、9月ではあまり獲れない。漁師としての収穫にはならないが様々なものが獲れた。海岸の生物との対比が出来る。その後大きな鍋を作って食べた。
 資料を調べる力がついていると思う。海に行く前にミニ図鑑を作った時は何をしてよいかわからない子が多かった。サケのふるさと館に行った後、ミニ図鑑を作ったときはサケに焦点を当てた雑誌をうまく見つけることができるようになった。
 親へのアンケートでは「自分の子が海のことを知っていることに驚いた」、「よく海に行くようになった」などの意見が聞かれた。時間の余裕があまりなく、振り返れないのが残念である。
 学習したことはファイルにまとめている。基本的にファイルは持ち帰らない。夏休みには持ち帰る。自発的にクリーンセンターや海の家の観察に行く子もいた。
 来年へどう繋げていくかが課題だが、学年が進むにつれ海から広がっていくものになると思っている。
□4学年
 ヨシヤブ川に関する活動をしている。現在の6年生が4年生の時から始めた。年度始めにやりたいことを子どもたちに聞いた。前の4年生がやっていたからということではなく、実際にヨシヤブ川を見に行き、以前の生徒が作ったゴミ箱などを見て、私たちもなにかやりたいということで取り組むことに決まった。
 サバエシ川上流でボランティアと遊んだ。ヨシヤブ川と違ってきれいだった。もう一度ヨシヤブ川に行くと、やはり汚かった。その後グループ毎に歴史・生物などの視点を決めて取り組んだ。同じ時間でもグループでやることが違う。もう一度川に行きたいという声もあったが行けなかった。遠足では川に沿って河口から上流までさかのぼった。地元公民館との交流や、河原でのコンサートなどの活動も行った。また、コイやサケの稚魚の放流も実施したが、後日再び訪れたら1匹もいなかった。
 生物に対する興味を持ち、釣り人に聞きに行ったりもした。ゴミの問題では回収した自転車の車輪やカッターナイフなどの処理に関して市役所に質問もした。PHのテストなどを自発的に行い、これらの活動を新聞にまとめた子どももいた。
 ヨシヤブ川では許可を得て、役所の人が二人いないと川に入れないという制約があった。天気が悪くて延期することが多く、晴れたからといってすぐに行くこともできず、結局ほとんど入れなかった。社会科との関連付けとして、フジキ堰のことについても学んだ。現在の5年生から話を聞いたり、報告会を行ったりした。以前調べた場所が舗装されたりもして、具体的な形になることで自信を持ったようだ。
□研究主任の先生
 ゆたかなかかわりを理念に、課題や方針、取り組みをまとめ指示している。低学年でも生活科で具体的なものを扱っている。総合的な学習の時間と同じ。スムーズに総合的な学習の時間に入っていける。1年間一つのテーマで取り組むことが子どもの気づきや思いを引き出している。子どもの描く学習ストーリーを重視する反面、教科的な様々なしかけも用意している。例えば豚を出荷する前に屠殺場のビデオを見せた。子どもから見たいという声があったわけではないが、大人の「見せた方がいい」という考えで見せた。このことにより出荷前の話し合いで言葉がつまる子や涙を見せる子もいて、思いを語るようになった。
 外部との連携はあまり考えていない。以前子どもエコプロジェクト?に参加したことはある。授業公開や資料により教員間での情報共有を図っている。「思い」の共有はあまりしていないが、逆に型にはまったものにしないことこそ総合的な学習の時間であると考えている。教員はみな一生懸命とりくんでいるようだ。夢や未知への挑戦であり、楽しいところも多いのだろう。総合的な学習の時間はチョーク一本でできるものではない。
 PTAの動きも盛ん。活動の提案や親子チャレンジなど。子どもたちだけでなく、自分達のためにやっている部分も大きいのだろう。
 教員は3〜7年で県内全域を移動する。新年度に入ってから学年で会議を持ち決定する。それで十分間にあう。教員も何年生になったら何をしようという思いを持っているのかもしれない。
 3年生は様々な対象、4年生は一つのものを多面的に、5年生は複数のものを関連付けて、6年生は多くのものから総合的にという全体の体験がなんとなく決まりつつある。なんとなく決まることに意味があるはず。子ども達にも来年何をやりたいという思いがあるようだ。
 総合的な学習の時間は1クラスを1人の教員が見る。学年で動く時には全員で全員を見る。担任の個性を出してもよいという動きがある。教科では習熟度別の方法を取り入れている。体験活動事例集では比角小学校の事例が取り上げられている。







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