日本財団 図書館


【琵琶湖博物館】
住所:〒525−0001 滋賀県草津市下物町1091
■特徴
 内部に教員を迎え、多数の研究員とともに学校との連携方法を模索している。教科の単元に対応した学習プログラム集や、総合的な学習の時間を対象としたミュージアムスクールなど多くの事業を展開している。
■ヒアリング実施状況
日時:2003.1.15 場所:滋賀県立琵琶湖博物館
■調査項目
 教育事業の概要と、教育事業に対する思い・意義/個人参加者の層と人数、情報源、環境への意識と学ぶこと/学校や団体との連携、ネットワーク/きっかけと経緯、課題/学校の授業との連携、前後の学習/リスクマネジメント
 成果/評価とフィードバック
■概要
 組織内に教員を配置し、博物館と学校との連携について試行錯誤を重ねている。学校の遠方からの利用では、対応数の限界から、博物館が用意したメニューをこなすような利用法がほとんどさある。逆に近郊の学校とは出張授業など密な取り組みが行われている。常盤小学校のヒアリングでは、学校との連携に向けた体制作りに対する高い評価がうかがえた。
■ノート
□琵琶湖博物館に関して
 琵琶湖博物館は平成6年に開館し、体験型の博物館を目指してきた。標本をガラスケースの中に閉じ込めず、触って騒いでもらうことが大事であると考えている。最初から学校連携をすることが前提になっていて、教育事業は展開しやすい。教員からも博物館を作って欲しいという要望が出ていた。
□子どもたちに琵琶湖について教えるということ
 滋賀県のほとんどの小学校で琵琶湖について取り上げている。飲み水としての利用という点において海よりも実際的なのであろう。琵琶湖レジャー利用適正化条例の施行により、ブラックバスなどへの関心が高まっているという側面もある(http://www.pref.shiga.jp/d/leisure/)。
 琵琶湖のことを学ぶといっても、子どもたちは必ずしも喜んでいるとは限らない。マイナス面だけではなく、プラスの面(面白いこと)を教えていかなくてはならない。その題材としては生物が良いだろう。子どもたちは生物のことになると非常に面白がる。学校の興味を惹きそうで、なおかつ琵琶湖のことを学べるような題材が必要である。単なる体験だけや、変わった事を見せるだけではいけない。知的な部分だったり、知識だったり、少しの学びがあることが大事である。
□学校の現状
 学校は非常に忙しくて、今以上のことをできる隙間があるかどうか疑問である。指導要領にない=ニーズがない、知らないと考えた方が良い。いろいろやってみることから始めて、その中で面白いことが続いていく。総合的な学習の時間でも、とにかくいろいろやって、その中から面白いことを続けていくようになるだろう。
□博物館と学校対応事業
 基本的には博物館でメニューを用意してやってもらう。教員と一緒に作っていくと対応しきれない。訪れる学校団体8万人中、体験をやりたいという要望は1万人。その7割が県外からで、遠足や修学旅行を兼ねている。サービスメニューのような位置づけとなっている。メニューは琵琶湖らしさを出し、学校にない教材(顕微鏡など)も用意している。体験用の部屋が3室ある。
 学区内の学校であれば、出来る範囲でニーズに合わせてメニューを話し合って組む。例えば、琵琶湖の貝について知りたいということであれば、学芸員が話をしたりする。ミュージアムスクール事業では博物館職員が学校へ出かけて講義をした。予算があまりかからないし、学校のニーズもある。しかし、やはり多くの学校に対応することは人手的に難しい。
 理科の場合での利用の事例はあまりない。総合的な学習の時間の場合は、事前事後の学習までしっかりしている学校が多い(対外的にもしっかりやらないわけにはいかない)。最近では総合的な学習の時間のきっかけとして訪れる学校が多い。ミュージアムスクール事業での繋がりが続いている学校もある。同じ子どもが年に10数回訪れ、事前事後の学習まで関わっている。
 高校では用意してあるメニューでは物足りない。高校と博物館が協力して行っている。県内の高校では、夏休みに琵琶湖博物館で授業を受けると単位になる学校もある。
 学校の博物館利用に関して子どもたちの保護者がどう考えているかはわからない。学校団体以外の親子への対応としては、第2・4土曜日に実施しており、いつも定員一杯になる。
□博物館と学校の連携の課題
 全体の利用者は減少しているが、学校での利用は増加している。このことからも学校が博物館に何かを求めていることがわかる。博物館の教えたいことと、教員の教えたいことが違う。その間に両方の立場を理解し繋ぐことができる人が必要である。特に中学校で学校の忙しさの問題が大きく、学校の現状がわかった上で、学んで欲しいことを伝えることが必要である。
 3年毎に教員は移動する。ヒアリングに答えていただいた職員は2002年4月に琵琶湖に移動した。学校にいる時は琵琶湖博物館の事業などを全く知らなかったため、もっと事業を広くアピールしなくてはならないと感じている。例えば、機関誌「うみんど」もこれまでは学校に5部しか送らていなかったため、学校にいる時には見たことがなかったため、教員の人数分送るようにした。学校に対する広報が下手だが、上手く広報するためには学校の内情を知らなくてはならないのだから、それはある意味当然である。現在中学校の理科教員1人と高校の理科教員が1人いる。これまでの体験プログラムは理科がメインだったが、社会についても実施するべきだろう。
 教員研修として決まったメニューはない。講義や実習など要望に応えて実施している。
 
【のと海洋ふれあいセンター】
住所:〒927−0552 珠州郡内浦町字越坂3−47(九十九湾園地内)
■特徴
 海(浅海、潮間帯、海岸)の自然に関する調査研究と普及啓発を行う「海の自然保護センター」。豊かな自然を活かしたフィールドでは、多彩な生きものたちとふれあい、観察することが出来る。「いしかわ自然学校」の“海のまなび舎”プログラムとして、「磯の自然観察会」、「スノーケリングスクール」、「いしかわの自然談話会」などを開催。
■ヒアリング実施状況
日時:2002.12.15 9:00〜11:30
場所:のと海洋ふれあいセンター
■調査項目
教育事業の概要と、教育事業に対する思い・意義
個人参加者の層と人数、情報源、環境への意識と学ぶこと
学校や団体との連携、ネットワーク きっかけと経緯、課題
学校の授業との連携、前後の学習
リスクマネジメント
成果 評価とフィードバック
■概要
 周囲の海岸の散策路などを有したビジターセンター。館内では図鑑的な資料等を配布している。学校は遠足での利用が多い。総合的な学習の時間で特に利用が増えたわけではないが、教員の相談に乗ったりもしている。
■ノート
□施設の概要
 平成6年に、海を対象とした自然保護施設として全国に先駆けて誕生した。その後、福井にも平成12年に同様の施設が作られた(昨年度ヒアリング済)。建物は石川県の予算で建設され、それ以外は内浦町の予算で建設された。運営は県から県民ふれあい公社に委託されている。公社はのとじま水族館、いしかわ動物園、昆虫館なども経営している。これらの施設間で、FAXでの情報のやりとりや、専門家内での人事交流はあるが、それ以上の繋がりは無い。
 今日は総務課職員2人、普及課職員1人で開館している。月曜日が閉館で、職員はその他1日ランダムに休みを取る。普及課は水産職として採用され、普及と研究の両方を行っている。海草専門、魚類専門、無脊椎動物専門の職員がいる。
 子どもたちだけで来るグループもある。自転車で来たりする。大阪や神奈川などから毎年キャンプに来る人もいる。リピート率は夏の調査で20%くらいであった。
□学校の利用状況
 中学校よりも小学校での利用が多い。小学校は県内が多い。但し、遠くても金沢辺りの学校までの利用で、南加賀だと遠くなってしまい小学生の利用は少ないが、高校生の利用がある。付近の金沢大学臨海実験所とあわせて訪れる場合がある。また、幼稚園も雨天時の代替施設としてよく利用する。学校の利用数は季節によって偏る。付近の自然の家に宿泊体験で宿泊し、自然体験活動の一環で訪れる場合も多い。
 利用の仕方は教員によってかなり違う。積極的に参加しようとする人もいれば、丸投げの場合もあり、後者の方が多い。館内に30分しかいない場合もあるにもかかわらず、様々なことをしようと欲張りすぎている。もっと余裕を持って来館して欲しい。
 事前・事後学習の具体的な相談もある。穴水小学校が総合的な学習の時間の中で海岸を調査する時に、調査内容や調査方法の相談を受けた。また、松浪中学校が選択理科の授業で漂着物の調査を行うときに、単に集めるだけでなく、グリッドをきって集め、重さを計量したり四季を通じての変化を見たりするようにアドバイスした。
 基本的には来館してもらうが、どうしてもということであれば出張してその学校近辺の海について解説することもある。総合的な学習の時間に対するプランはある程度あるが、あまり押し付けるわけにもいかず、やはり学校側にやりたいことがハッキリしていないと動けない。なかなか海をテーマにしてもらえないため、祭りなどを入口にして少しでも海のことを知ってもらいたいと考えている。
□フィードバック
 利用後に感想を送ってもらうことはあるが、積極的な調査は行っていない。
□学校と連携したプログラム
 柳田村の小学校でヤマメを卵から飼育して、孵化させ、放流まで行うというプログラムを実施した。ヤマメは減少しているが、減少していること自体は表に出さず、放流した稚魚が戻ってくるような川にしたいと思ってもらえるように努力している。海と山とを繋ぐプログラムが重要である。
 学校からの副読本などの問合せは無い。総合的な学習の時間で質問をさせて欲しいという問合せは多い。その場合、あらかじめ質問を用意しておいて、来館するという形式をとることが多い。
 職場体験は年に2回、計5名を対象に、3日間実施している。
□地元の子どもたちと海
 金沢工業大学の敷田麻美教授との共同研究を行った。海と流域の政治的研究で、塩谷(海)と山中(山)での聞き取り調査を行った。どちらでも1年に2、3回の頻度でしか海に行かない人が多かった。海の近くに住んでいても危険だからと海に行かない。実際に体験をさせていても、15分くらい何をしてよいかわからない子も多い。遊べる海岸が少なく、護岸で海に出にくい。海水浴場は五色ヶ浜などの砂浜があるが、水着で泳げるのは7月20日から8月15日くらいまでと短い。
 総合的な学習の時間により来館学校数が増えたということは無い。総合的な学習の時間では様々なテーマが取り上げられるため、海に関することはその一握りに過ぎないのだろう。
□マリンレジャー
 マリンレジャーは釣りがほとんどで、ダイビングスポットは少なく、輪島沖25kmの七つ島や木の浦などのみである。木の浦では最近国民宿舎にタンク充填施設ができた。一時期はダイバーが魚などを獲ってしまうことが多かったため漁業者の反対が強かったが、輪島のダイビングショップの人が努力してできるようになった。シーカヤックは同好会でやっているところがあるが、ショップ等はない(以前あったが閉店した)。マリンレジャーはあまり活発ではないと言える。
□いしかわ自然学校
 いしかわ自然学校の環として、内浦湾主催のエコロジーキャンプに協力した。自然学校をつくるためのインタープリターセミナなども実施している。スノーケリングはその技術自体が目的ではなく、スノーケリングを使って生物のことを知ってほしい。参加者層は高齢者から学生まで幅広い。
□ポランティア組織
 ボランティア団体「海もぐら」の事務局がセンター内にある。55名くらいが在籍しており、いつでも動けるメンバーも10数名いる。スノーケリングにこだわらず、釣りをしたり、自主的に計画をたてて動いたりしている。来年度あたりから学校への対応もやりたいが、学校の利用は平日が多いため難しいだろう。
□プロゲラムの課題
 打合せ不足での問題が多いが、実施してしまえばなんとかなる。但し、危険をともなうためある程度の打合せは必要である。スノーケリングの場合、4〜6人で1グループとなり、1人の指導者がつく。そのため学校の1クラス全体に対応するのは難しい。丸投げでなく、教員が実施できるようになるのが理想的であるが、県から教員に対する指示をすることは押し付けになりがちで難しい。研修センターで総合的な学習の時間の研究プログラムの一つとして、海に関するプログラムが企画された。かなりの人数が集まった。







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