日本財団 図書館


【千歳市サケのふるさと館】
住所:〒066−0028 千歳市花園2丁目インディアン水車公園内
■ヒアリング実施状況
日時:2002.12.7
場所:千歳市サケのふるさと館
■調査項目
 事業の概要と環境教育に対する思い/個人参加者の層と人数、情報源、環境への意識と学ぶこと/学校や団体との連携、ネットワーク/学校での授業との連携、前後の学習/リスクマネジメント/評価とフィードバック
■概要
 北海道の自然をうまく利用した施設であり、環境教育への利用価値が高い。もともと教育事業を行うことを前提にしており、数は少ないものの、学校との密な連携も行っている。総合的な学習の時間に関しては思ったほど問い合わせがない状況である。
■ノート
□展示の特徴とサケトピックス
 展示変えはあまりないが、季節性があるのでリピーターも楽しめる。例えば、一つの個体を大きくなるに連れて水槽を移動させたり、卵が艀化する瞬間を見たりすることも出来る。孵化する瞬間は、卵の数が多いため、産卵よりも見ることができる確率が高い。また、夏は北海道では見ることができない魚を展示し、秋はサケそのものだけではなく、そこにテーマを加味して展示している。一昨年は食をテーマにしたところ、反響が大きかった。
 サケの遡上は前・中・後期に分かれ、中期は数が多いがサイズが小さい。最近注目されている概念としてMDN:Marin Derived Nutrients(海洋由来栄養物質)と呼ばれるものがある。つまり、サケは海から窒素を陸に運んでくるのだ。通常川から海へ流れ放題になってしまう栄養分を、上流へ戻す役割をサケが果たしていると言える。更にそこにはクマやハエ等の昆虫の存在も関わっている。
□教育事業の位置づけ
 青少年教育財団が運営している。財団には水族事業部門と子ども会事業部門があるが、これまで共同事業は無かった。今年水族館から子ども会へ一人移動したので、これを機会に共同事業が展開出来ればよいと考えている。また、1994年の開館当初から、教育を視野に入れて活動しており、職員には学芸員の資格を義務付けている。
□学校への対応と教育事業
 千歳市の学校からの問合せに関しては、職員派遣等で出来る限りフォローするようにしている。市外の学校からの問合せの場合は、ふるさと館まで来てもらうようにしているが、最近では1時間圏内の学校まではフォローしようと考えている。学校への対応は6、9、10月に集中しており、特に総合的な学習の時間で扱っている場合、秋のことが多い。訪れる学校の数は、案内等できちんとした対応をしている学校は年間18校、少しの説明のみしている学校は年間53校で、延べ3,200人くらいの生徒に対応している。学校で一度見学に来て、その後親と再度訪れることも多い。道内の学校には単に案内することが多く、道外の学校だと主に修学旅行で利用される。
 ネイチャークラブ:クラブ活動で見学希望者と顧問の教員がふるさと館に訪れる。受精卵を配布して各小学校で飼育してもらい、最後に放流会を行う。ふるさと館は飼育方法のサポートなどをするのだが、教育というよりはイベント的な扱いである。
 恵庭市和光小学校とは3年前から交流を行っている。2年生がサケ祭りと題してサケについて調べて発表する取り組みをしている。ふるさと館は課題を用意して、それをもとに子どもたちが下調べを行い、実際に見学に来て、それでもわからないことに関しては質問コーナーを設けて質問してもらう。その後学校に戻り、まとめと発表会を行う。ふるさと館の職員も発表会に参加し、アドバイスなどをする。高学年になるとこの時の経験をもとに環境について学ぶ。この事業を始めたきっかけは、担当の教員から解説をして欲しいとのお願いがあり、すごく熱心だった。子どもたちからは、「なぜ雌雄があるのか?」というような質問まであった。子どもたちはサケのことについて勉強しているにもかかわらず、その枠にとらわれない。その後、教員が面白そうだからと発表会をしてふるさと館の職員を招待してくれた。しかし、年を追うごとに「昨年度のように実施したい」と、だんだん形だけになってきてしまっているのが残念だ。
 訪問の事前・事後の授業用の資料が欲しいという問い合わせが何度かあった。特にビデオ教材の問合せが急に増えたため、サモンシアターの映像を編集して貸し出している。現在3本用意しているが、順番待ちの状態で、東京や道内の遠方からの問合せも来ている。
□総合的な学習の時間
 総合的な学習の時間に関する近郊の学校からの要請は、今年になってから増えるだろうと予想していたが、今のところ特に無く、カリキュラム全体に関わるような相談も無い。しかし、生徒からの突然の電話は増えた(一度だけ事前に教員より断りの電話があった)。子ども達の質問から背景のカリキュラムがうかがえるが、履き違えたものも多い。しかし、闇雲に口出しも出来ない。教員の知識の範囲で子どもたちを導き、ふるさと館を教材として利用しているのだろう。特にサケは環境の指標として使われることが多いが、生物やヒトとの関わりの方が重要である。例えば、現在のサケはほとんどが人工孵化のものであり、サケがいるからその川はきれいだという証明にはならない。生徒が事前に独自にふるさと館に来て下調べをしていて、教員に質問したところ、教員の知識が追いつかず相談に来たこともあった。
□他園館等との交流
 他園館との交流は、日動水加盟園館同士の道ブロック大会が主である。北海道には標津と豊平と千歳の3箇所にサケに関する博物館があり、共催事業などは今のところ行っていないが、ノウハウなどは情報交換している。
 建設省の石狩川河川局との交流事業を開催している。河川局は工学的なことには強いが生物的なことには弱く、河川局側から交流事業を行いたいとの問合せがあった。合同で観察会のイベントを開いている。予算があるため、バスをチャーターして川の上流と下流で生物調査と水質調査を行い、ふるさと館に戻って比較をする等の活動が可能となる。更に、フィールドにテントやトイレなども設置できる。参加者は一般公募により募集した30名で、先着順のため毎回定員オーバーになる。以前はこういった事業を展開しても参加者が集まらなかったが、4、5年目から集まるようになった。広報は広報誌「まなびい」、新聞、年間会員へのチラシ配布、メールなどによって行っている。参加者には親子、子どもだけなど様々なパターンがあるが、子どもよりも親の方が楽しんだりしているようだ。1回の実施にはやはり参加者数に限度があるが、数回実施することで対応できれば良いと考えている。
 
【旭川市旭山動物園】
住所:北海道旭川市東旭川町倉沼
■特徴
 学校教育との連携を3つに分類。1)単元の一部を園が受持つ。2)講師派遣。3)単元全体に関わる。2、3においては学習指導案を提出してもらい、より積極的に関わることで、単なる教材としての動物園利用に終らず、「教育」を提供することを目指している。
■ヒアリング実施状況
日時:2002.12.8
場所:旭川市旭山動物園
■調査項目
事業の概要と環境教育に対する思い
個人参加者の層と人数、情報源、環境への意識と学ぶこと
学校や団体との連携、ネットワーク
学校での授業との連携、前後の学習
リスクマネジメント
評価とフィードバック
■概要
 教育事業をきちんと体系立てて実施している。以前から学科・単元用のプログラムを用意していた。総合的な学習の時間には、ゆるいプログラムと教員との連携のシステムを整備することで対応している。また、教育の専門家を職員として雇用し、体制作りも進んでいる。
■ノート
□教育への思い
 海外の動物の展示だけではテーマパークに終ってしまう。見せ方を工夫することでこうはならないようにし、何か気持ちに残ることを伝えたい。感覚に訴える部分が大切で、単に「アムールトラを保護しよう」ではなくて、感覚に訴えることで「なぜ保護するのか」を伝えていければ嬉しい。保護活動にしてもなんにしても周囲からやらなくてはいけないと言われてやるものではない。いきなり「大切にしなくては」というところから入りすぎず、その意味を伝えることが重要である。標本を作るにしても、やはり生きものを殺さなくてはならない。それをどう伝えるかが問題。何か身近なことから入っていければよい。
□教育事業の概要
教育の柱1:一般来園者に対する教育事業。動物園を訪れてくれた人全てに何か一つでも学んで欲しい。パネル展などを通じて様々な情報を発信している。解説板などは予算をかけてすごいものを作ってしまうのではなくて、手作りでなるべく頻繁に更新することを目指している。最近リピーターが増えて、楽しんでもらえていることがうかがえる。
教育の柱2:団体を対象とした教育事業。事前に打合せをしてガイドを行う。2002年4月から150件をこなしてきた。冬でも開園していることが周知されてきたようだ。ガイドの規模や程度は様々だが、30分〜60分程度のものが多い。子ども動物園では動物に触れることで、ぬくもりや生命について感じて欲しい。しかし、スタッフ数の制限もあり、団体に対してはそれ以外の教育的なイベントはあまり実施していない。
教育の柱3:学校の授業に対応した教育事業。学科・単元用のプログラムをたくさん用意していたが、最近は総合的な学習の時間での取り組みばかりである。授業中に動物園を扱う場合、遠足等のイベントでなければなかなか動物園まで出てくることができないため、動物や剥製を持ってでかけるような出張授業を5〜6年前から実施している。打合せを行い、学校によって様々な形をとる。総合的な学習の時間であれば比較的自由に話が出来るが、教科・単元に対応する場合は授業の目的から外れないようにしなくてはならない。また、教員内での意思の統一や時間の調整も難しい。簡単にはいかないことがわかってきたため、臨時職員として教育大出身の人を採用し、専門的にやっている他、教育委員会に教育専門職員採用枠も申請している。
□学校との連携にあたって
 熱心な教員がいれば良いが、その教員がいなくなってしまった後、ただ形だけが残り、こなすことを目的としてしまっては意味が無い。こなすことを目的にしてしまうと、必要なくてもやらなくてはいけないことなってしまう。常にこちらから本質を見るよう働きかけていくことが大切である。教員にとってはモノとヒトさえあれば十分で、カリキュラムは逆に嫌がられてしまうこともある。しかしそれではいけない。コンセプトがあることが重要で、うまくそれを伝えないと総合的な学習の時間の中でも浮いてしまう。学習プログラムはゆるく作ることが大切で、指導案を見せてもらうことから、ゆるく作っておいたプログラムをその指導案に合わせていく事ができる。
 ゲストティーチャーで呼ばれる時は研究授業が多い。ある研究授業で、その後の研究会に出席した。その席でゲストティーチャーの意味を質問したが、県・道の指導主事でさえも答えることができなかった。学校とケンカをすることもよくある。例えば、ライオンの大きさを調べて何になるのか?礼をわきまえない質問の仕方も多い。このような体制を少しずつ変えていかなくてはならないと感じている。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION