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【Nature Works】
■諸データ
住所:沖縄県読谷村
■特徴
 団体向けに自然体験プログラムを提供。どの程度学校との連携がなされているかは不明。
■ヒアリング実施状況
日時:2002.12.2
場所:NatureWorks事務所
■調査項目
事業概要と教育プログラムの実施状況
プログラム参加者の特徴について
学校との連携の現状
環境教育の意味・成果・課題と思い
■概要
 開発業者と地元との乖離が非常に大きな問題となっている。修学旅行や地元学校への対応も行っているが、イベント的なものが多いようだ。事業だけでなく、専門学校の講師や調査など様々な場面で活動している。
■ノート
 沖縄ではエコツーリズムは山で行う活動だという意識が強く、海は軽視されがちである。
 NatureWorksは、営業活動にはさほど力を入れていないが、秋は修学旅行の受け入れもある。地元の小中学校からの依頼もあるが大きな収入にはならない。少しでも海岸へ連れ出すことで海に親しんでもらうことを目的としている。海で体験学習をすることの教育的意味合いが認められてきたため、社会貢献だとして無償でやる業者が出てきた。しかし、無償でプログラムを実施すると、教育業界にそのような事業は無料で出来るものだと勘違いされてしまう恐れがある。
 LEAD(www.lead.org)の研修として、悪いところも見て課題を見つけ、自分達なりの解決法をさぐるというプログラムを行った。
 沖縄自然体験活動協会では、ガイドやボランティアの育成を試みている。沖縄県自然保護課リゾート局より認可を得て活動している。
 平成13年には、海の資源を利用したエコツーリズムプログラム開発検討調査に参加した。
 
【NAC/有限会社 ニセコアドベンチャーセンター】
住所:北海道虻田郡倶知安町字山田179−53
■ヒアリング実施状況
日時:2002.12.6 13:00〜15:30
場所:NAC事務所
■調査項目
事業の概要と環境教育に対する思い
個人参加者の層と人数、情報源、環境への意識と学ぶこと
学校や団体との連携、ネットワーク
学校での授業との連携、前後の学習
リスクマネジメント
評価とフィードバック
■概要
 ラフティングなどのフィールドでのアドベンチャーを数多く提供している。これまでは、学校の利用は修学旅行での活動がほとんどであったが、総合的な学習の時間のスタートを受け、最近では単なるアドベンチャーだけではなく、自分たちの活動するフィールドを守るという観点から冒険教育と環境教育をあわせた、OEP(Outdoor Educational Program)を実施している。本来はその前後の学習までを含んだ教育を行いたいと考えている。
■ノート
□事業の概要と野外教育活動の位置づけ
 OEP(Outdoor Educational Program)は冒険教育と環境教育より構成されている。環境教育では、アクティビティを、判断力や想像力など身に付けたい能力にあわせバリエーションを変えて実施し、ふりかえりを行う。
 ラフティングは体験型でやる場合1日250名まで対応することが可能だが、環境教育としてラフティングを行うとしたら丸1日は必要で、80名程度が限界である。オショロでシーカヤックも実施している。シーズンは6〜9月で、波も少なくどんな天候でも実施できるので、中止になるのは年間2,3回のみである。参加者は道内と道外が半々ほどで、高齢者の参加者も結構多い。
 環境教育では前後の授業も完全にカバーする試みを行っている。教員の仕事の部分までNACが代わりに行う必要があるかという疑問はあるが、そこまでやらないと意味がないのかもしれない。しかし、費用がかかってしまうのでペイできない可能性もある。
□学校での環境教育への意識
 修学旅行では、スキーやラフティングなどに5〜6万人程度が参加している。道外からだと小学校は少なく、中学校は仙台付近までの学校が、高校だと関西の学校まで来る。規模は大小あるが、年間100校程度をこなしている。札幌の小中学校や修学旅行で訪れる学校など、繰り返し来る学校があるが、毎年短い期間に集中してしまうため、同時に何校もこなさなくてはならず、プログラムを練る時間が無い。これには代理店の問題も大きい。修学旅行では単なる体験が主になっているため、徐々に体験から教育へ移行したい。総合的な学習の時間が始まってから、ようやく環境教育に対する興味が教員や代理店の中に芽生えてきた。現在学校が抱えている問題としては、「総合的な学習の時間をどうやって実施するか」「自分で判断する力をどうやって身につけるか」の二点がある。この能力は教師にも大学生にも今後必要になる力であり、徐々にその能力を教えるように変わらなくてはならない。
□環境教育の意味
 今のところ環境教育は学校向けにのみ実施しているが、今後企業や団体向けにも実施していきたい。とは言ってもやはり環境教育にお金を出して参加してくれる団体は少ないだろう。助成金をつけて低料金で実施できれば良い。企業に環境教育を行う意味も二つあり、「環境自体に目を向けてもらうこと」以外にも、「自分で考えて動いていけるという力」をつけて欲しいと考えている。
 日本では、川や山に人々が入ることを禁止し、いつのまにか開発を行うという信じられないやり方をしている。しかし、今さらこのようなやり方や、すでに出来上がってしまったモノ・考え方に文句を言っても、対立が深まるだけで何にもならない。少しでも環境に良いことを前向きに実施していくことが大事だろう。
□エコツーリズム
 エコツーリズムとはビジネスのために作られた言葉で、特にうたう必要が無い。北海道では、家族で自然にでかけ、お金をかけずに遊ぶ姿が見られるようになってきた。これは大変良い動きで、あくまでも何気なくやっていることが大事であるのに、そこにエコツーリズムという言葉を当てはめることで、一時のブームとなりかねない。
□リスクマネジメント
 以前ほどはリスクに関して敏感ではなくなったが、NACの考え方と実績をビデオを交えて説明することで、ユーザには納得してもらえている。また自然の中で遊ぶ以上、100%の安全は保障できないことや、体調によっては実施できないことを了解してもらうために誓約書の提出を求めている。
□ニセコで活動を行う意味
 ニセコはDestinationであり、それだけで行きたくなるというメリットがある。NACの活動は、ニセコに実際に住んでみて、どのようなことが足りないか、何ならできるかを肌で感じてから始まった活動であり、それをそのまま他の場所で展開することはナンセンスであろう。
 
【Will Seed】
日時:2003年2月5日(金)
場所:埼玉県川口市立芝西小学校(対象:6年1組〜3組)
■概要
 株式会社ウィル・シード(以下WS)では、経済産業省平成14年度起業家育成促進事業の一環として、2002年12月より埼玉県川口市の小中学校約30校(約3,250名)を対象に、起業家教育プログラムを実施した。同プログラムはWSが独自に開発した体感型ビジネスシミュレーションゲームを活用しており、「楽しみながら、幅広い気づきが得られる」として、ソニー、マイクロソフトなど大手企業を中心に140社以上で研修導入されている。今回の「起業家教育促進事業」では、企業研修で活用している上記ゲームを子ども用にアレンジし、実施している。児童・生徒ばかりではなく、教員・保護者からもとても良い反響が得られている様で、NHKニュースを始め、様々なメディアで取り上げられている。実際のゲームの内容は性質上詳しく記述することは出来ないために、概要を述べるにとどめる。
<ゲームの概要>
・ゲームの最終目的は、「一番お金を儲けること」とされる。
・教室内に複数のグループに分かれる。グループは国として扱う。各国には資源・技術・資金などが渡される。その配分や内容は国によって異なる。
・進行役である講師(WSより派遣)が国連として、ゲームを進行する。
・各国は与えられた全てのリソース(ヒト・資源・技術・資金)を活用し、定められた形の数種類の製品を作り、銀行で換金する。
・ゲーム進行中、交渉や取引、協力や提携、妨害や情報収集などを行いながら、製品を作る。そして、換金する。
・そこに、色々なイベントが起り、起った問題を解決しながらゲームを進める。
<ゲームの特徴>
・グループ内での共同作業が発生するため、(1)人(マンパワー・能力)(2)モノ(資源・技術)(3)金(4)情報(5)時間と言った経営に不可欠な要素のバランス・マネジメントの重要性を体感する。
・チームごとの格差から情報収集、交渉力、関係構築力の重要性を認識する。また、状況が不利なチームからは、自由な発想が生まれ、有利なチームでは強み(特徴)有効活用の必要性が学べる。
・様々なアクシデント等の状況変化が発生するため、対応力や判断力、先見性等の各自の行動特性が明らかになる。また、金利や価格の変動により、市場経済の基礎や、時間認識、タイミングの重要性を体感する。
 至ってシンプルではあるが、非常に奥の深いゲームであった。
■考察
 このゲームの醍醐味は、非常に精度の高い擬似体験により、具体的な気づきが得られる点だと考える。ボードゲームやPCを使ったゲームでは得られない、自分の手と頭と感覚と言葉と、持てる全てを使ったとしても、そこにコミュニケーションが存在することで、思う通りには事が運ばない。ゲームを通して客観的な自己分析が行われ、また違いがあることの重要性にも気づかされる。
 そして、何よりも学校の中ではタブー視されていた「お金を稼ぐことを目標に真剣になる」という経験は、とても新鮮であるに違いない。また多様な活躍の場が設定されていることで、通常の教室では目立たない子どもが大活躍をし、教員や友達を驚かせる一面も多く存在するらしい。
 今回は起業家教育促進という目的で実施されたこのゲームではあるが、非常に汎用性のあるゲームである。印象では、人と人が関わることで起る問題に取り組む際には、非常に有効な導入ツールとして役立つ。総合的な学習の時間の導入として、一番始めの段階で活用することで、その後の学習がより身近なものとなり、より高いモチベーションで取り組むことが可能となると感じた。社会で営まれている経済活動の流れを体験することで、参加した児童・生徒一人一人に異なる興味と自己発見が生まれ、その興味を学習につなげることが可能となるのもこのゲームの魅力である。
 またこれらのことから、企業研修で成功を収めている背景には、ゲームを通して共通体験による共通言語が生まれることで、組織が活性化することがあるのではないかと推察する。
 体験型のゲーム、という手法が持つ大きな可能性を知ることができ、とても有意義な見学となった。また、海洋教育や環境教育の手法にもぜひ活かしたい手法であり、とても参考になった。
■課題
 もちろん課題や問題が無い訳ではない。結論からすると、WSから派遣される外部講師と教員の間に、通常の学習を土台にしたやり取りがされておらず、イベントとして消化されてしまうことが最大の課題だと考える。
・一連の学習活動にどう位置づけるか。
・ゲームの効果をどう日常生活と関連づけ、効果を持続させられるか。
・特に中高生での活用を考えると、職業観の醸成に大きく役立つことが考えられるが、学校現場にフォローする仕組みが整っていない場合は、一時的な盛り上がりで終る。
 など、学校の教員と外部講師の連携により、ゲームで得られた気づきやモチベーションをいかに日常の学習活動につなげられるかが、今後のテーマだと感じた。







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