日本財団 図書館


【青少年野外活動振興財団】
住所:札幌市白石区本通1丁目北3番46号
■特徴
 環境と人(主に子ども)をテーマに、野外をフィールドとした新しい教育の創造に力を入れている。
■ヒアリング実施状況
日時:2002.12.5 13:00〜14:30
場所:財団法人青少年野外教育振興財団事務所
■調査項目
 事業の概要と思い/学校との連携事業・教員とのネットワーク/NPOとのネットワーク/ユーザのアクセス方法/リスクマネジメント/評価とフィードバック
■概要
 現場型の財団法人として、様々な野外活動事業を展開している。ユーザは主に個人で、学校などの団体対象の事業は開始したばかりである。ヒアリングの中ではあまり教育的な内容の話を聞くことはできなかったが、フィールドで活動することを通して少しでも自然が良いものだと感じてもらえれば、個人単位で少しずつ環境に配慮する人が増えていくのではないかという思いを感じることが出来た。まさに草の根的な活動を行っている。
■ノート
□財団の概要
 財団には9名の常駐職員がおり、今年で14年目(現在のシステムになって10年)を迎えた。財団の主催事業に参加する個人ユーザは年間延べ4,000人にのぼる。費用は1泊2日で13,000円前後、日帰りで8,000円前後となっている。活動に関しては報告書を出すこともある。
□事業概要
川のアクティビティ:流水いかだ、箱めがね、流れに身をまかせる、水質調査などがある。まずは遊び場として利用してもらうことから、その遊び場を綺麗にしたいと思うようになってもらい、自然と環境について考えてもらえればよいと考えている。
海のアクティビティ:停留いかだ、箱めがね、磯遊び、ビーチコーミング、水族館作り、シーカヤックなどがある。北海道の海は水温が低いため、実施できる期間が短い。北海道の人々にとって、海は離れたところにあるものだという意識が強く、泳げない人も多い。
 体験活動プログラムには子どもだけで参加するのが基本で、参加者のほとんど(現在は60〜70%、昨年までは80%近かった)が個人である。但し、今年になって初めて学校や団体に対応する部署を作り、教育委員会や知り合いの教員への営業を行っている。ユーザは道内の人がほとんどで、webやチラシ、雑誌を見て直にアクセスしてくる人が多く、特に教育熱心で裕福な(医者、弁護士、本州からの移入者)家庭の子どもが多い。野外での環境教育プログラムに子どもを行かせるのが一つのステータスになっているようだ。親向けのプログラムは特に無いが、日本財団の助成で「母と子のキャンプ」というプログラムを実施したことがある。
 ファシリテート技術にはまだいろいろと問題があるが、とりあえず環境が大切なものだと気づいてくれれば、その子が親になった時に自分の子どもをフィールドに連れ出すことができるだろう。例えば、釣りのプログラムは非常に有効で、釣った魚をその場で食べることで、その魚が住む環境が汚いと嫌だと率直に感じることができる。
□リスクマネジメント
 ユーザからリスクに関する質問はある。海よりも川に関する質問が多い。プログラムの中では「いかだ」が実施する際に一番気を使うため、スタッフ1人につき子ども8人以内と制限しており、さらにそれ以外にも本部スタッフとディレクターをつけるようにしている。小さい子どものプログラムは無理ができないので逆に安全だが、高学年になるにつれて危険度が増すため注意が必要である。
□北海道の住民の環境への意識と財団の思い
 サバイバルの技術だけでなく、日常で活かせるものを提供したいと考えている。地元の人は北海道の自然の良さを認識していないため、北海道のアウトドアで活動しようとする人は道外の人が多い。また、生涯学習の一環で登山をする人は多いが、環境への意識は低い。山菜取りなども楽しみではなく、生活として浸透している。そのため、あえて環境教育を働きかける必要は無いとも言えるが、生活に根ざしている割に子どもたちには自然の良さが伝わっていない。プログラムから直接伝わるものはほんの些細なことだが、その周りには様々な意味がちりばめられている。それを日常に根ざしたプログラムの中から感じ取って欲しい。
 実際体験してしまえばいろいろなことがわかってくるのだが、野外の活動には「“何か”をすれば“何か”が身につくだろう」というあいまいさがある。参加者にとって魅力あるものにするためには、そのあいまいさに負けない魅力あるコンセプトを作ることが必要である。
 事業の評価は難しいが、「〜がしたい」というディレクターの思いだけではなく、「子どものために」ということを常に振り返り、刷り合わせていくようにしている。
□教員の意識とそれに対応した事業展開
 確たる理念がある私立学校に比べて、公立学校では「何のために」学ぶかという理念を作りにくい。教員自身がなんとかしようとしているかどうかにかかっている。しかし、教員はプログラムの全体像が見えてこないと意見を出してくれない傾向がある。そのため、学校を対象にプログラムを実施する場合は、1年目は全てのことを野外活動財団に任せてもらって、教員に余計な手出しはさせないようにする。但しその際に、「2年目以降は教員自身でやってください」と伝え、プログラムをよく観察してもらう。2年目に、いざ自分たちでやるとなると、その活動の意味を考えなくてはならなくなり、意見が出やすくなる。教員自身が気づき、学びを得るというプロセスが大事で、実際にそのプログラムをやってもらうことを重要視している。
 プログラムの事前学習に使う資料の問い合わせはある。特に総合的な学習の時間の施行前後は、全く面識の無い学校からの問合せが多かった。
 
【北海道環境財団/北海道環境サポートセンター】
住所:〒060−0807 札幌市北区北7条西5丁目5番 札幌千代田ビル4F
■特徴
 市民・民間の主導による自発的な環境保全活動を促進し、環境学習の機会の提供や情報交流などさまざまな活動支援を行うため、北海道の出資により設立された非営利団体。情報収集や機会提供などを行っている。
■ヒアリング実施状況
日時:2002.12.6 15:30〜17:00
場所:環境サポートセンター
■調査項目
 事業概要と利用者層/北海道における環境教育の現状/これからの環境教育の展望
■概要
 北海道で活動する環境系のNPOなどに、情報提供やセミナー等の機会提供を行っている。環境教育に関する主催事業は行っていないが、別の団体との共催という形で取り組み始めている。しかし、北海道における市民の環境への意識は低く、道のりは険しいと考えているようだ。また、教員の意識やスキルに対しても問題意識を持っている。
■ノート
□設立の経緯
 1993年環境保護法の成立とともに、市民活動を軸に環境問題に対応していかなくてはならないとの機運が高まった。1996年に拠点が必要となり、北海道の100%出資で財団法人が設立された。
□事業の概要
 情報提供(図書、インターネット、NGO情報、イベント情報など)、会議室の提供、セミナー開催、体験学習会、助成金制度(観光保全に関する活動の促進)などを行っている。これらの事業が対象とするユーザの範囲は広く、個人から団体、企業、行政にまで対応してきた。今後対象を絞り込んでいかなければならないと感じている。体験学習などの共催事業では川をフィールドとすることが多く、利用団体の7割が身近な川や森を守る活動をしている。海を対象とした場合はビーチクリーン活動が多い。また、北海道はデンマークと比較されることが多く、実際に訪問するという事業も行っている。
□北海道住民の意識と環境教育の現状
 現在特に環境教育のNPOの盛り上がりがあるわけではないが、自然保護を目的とする団体は全体の7割に達する。それらの団体が徐々に環境教育の必要性を感じ、外に目を向けつつある。
 エコツアーは観光業、地域興しという場面で多少盛り上がりを見せているが、環境教育や行政の場面では静観されている。特に道東(釧路など)では牧場での体験や、農業体験、漁業体験、トレッキング、自然学校などを行う団体・企業が多く存在する。しかし、環境教育に本格的に取り組んでいる企業は少ない。環境系NGOへのサポートをしている企業はまれに見かけられるが、自主企画として環境教育を行っている企業は北海道電力くらいだろう。
□総合的な学習の時間に向けた事業
 環境学習フォーラム北海道と共催で、彼らのノウハウやテキストを活かし、環境教育プログラムの提供を行っている。1年目は3回実施したが、教員の参加は少なかった。もっと基本的なことを教えようというコンセプトで、2年目は対象を般に広げ、年間のスケジュール作りを題材としたセミナーを開催している。初心者向けなのでいわゆるプロの参加者はいないが、みな少しでも子どもに環境のことを伝えたいと考えている。今回もやはり教員の参加が少なかったが、将来的に学校は外部の講師を積極的に採用するようになるだろうという視点から、今回の試みは有効だと考えている。一般市民には教員や学校の仕組みを知ってもらい、教員には一般市民とのネットワークを作ってもらえる。1回目は講座を実施、2回目は北大で体験活動として実際のプログラム作りを実施した。3回目は2月頃実施の予定である。個人参加者はwebやメール(セミナーに参加した人へ送信)などで見て参加する場合が多く、ほとんどがリピーターであり、新聞等で情報を得て新規に参加する人は少ない。
 教員は自分の時間やお金を使ってまで、総合的な学習の時間のためにセミナーに参加することはない。教育委員会を後援とし、トップダウンを狙って営業をかけてもうまくいかない。本当は学校管理者サイドの考えが変わらないといけないが、とにかく交流の場を設けることは大事である。
 教材の提供は非常に喜ばれている。以前は行政イベントでの使用が多かったが、最近学校での使用が増えてきた。
□総合的な学習の時間の現状
 総合的な学習の時間に正面から取り組んでいる学校はやはり少なく、教員の個性による部分が大きい。そのため総合的な学習の時間の実態はなかなか見えてこない。またそれに対する市民の声も聞こえてこない。実施前年度に当たる昨年度でも問合せは思ったほど多くなかった。施設(特に道東)からの問合せは多かった。というのも、総合的な学習の時間を利用して見学に行くだけの学校が多いのだろう。総合的な学習の時間の中で環境を扱おうとしたとき、教員が必要とする労力は大きい。そのため、老人ホームに訪問したり、地元に住む外国人と交流したりする活動が多いようだ。総合的な学習の時間で環境を扱うことになっても、環境であれば何でも良いではなくて、ある程度の誘導が必要だが、そのためには教員の知識や意識を高めることが必要不可欠である。
 
【社団法人日本ネイチャーゲーム協会】
住所:〒160−0022 東京都新宿区新宿5−18−20 ルックハイツ2F
■特徴
 アメリカで生まれたネイチャーゲームの指導員を育成している。講師の派遣または紹介、大会及び講習会・研修会の開催、規則の制定、教材・教具の開発などのほか、学校教育におけるネイチャーゲームの導入に関する調査等の調査研究活動の実施、出版物の刊行や助成及び顕彰活動を行うとともに、国際交流活動も実施するなど幅広い事業を行っている。
■ヒアリング実施状況
日時:2002.11.6 13:00〜14:00 場所:社団法人 日本ネイチャーゲーム協会 事務所
■調査項目
海に関する(海をテーマとする・海で行うなど)ゲーム・教材を提供しているのか?
ネイチャーゲームが、教育効果を持つために必要なことは何か?
ネイチャーゲームは学校の教員にとって取り入れやすいものなのか?また、教員が実施することでどれほどの教育効果が得られるのだろうか(一般の方が実施する場合との違い)?
教員から協会に対しての要望などはないか?
■概要
 ネイチャーゲーム協会の会員には多くの教員が在籍している。それに対して協会も学校内で使用できるような教材の提供をしている。しかし、そのような十分すぎるサポートが果たしてよいかということには疑問を感じているようだ。過度のマニュアル化は総合的な学習の時間の意味を無くしかねない。学習に入るためのきっかけ作りとして利用されるべきである。また、教育者のサポートとしての人材派遣も企画されている。
■ノート
 ネイチャーゲームは、アメリカでジョセフ・コーネル氏により作られた。書籍「Sharing Nature with Children(子どもたちと自然をわかちあおう)」がきっかけとなり評判となった。ネイチャーゲームには194のアクティビティがあり、そのうち8割がコーネル氏発案のものである。日本で独自に生まれたものもある。「ネイチャーゲーム」は商標登録されており、日本ネイチャーゲーム協会はライセンス契約をして指導員の養成にあたっている。現在ネイチャーゲーム協会の指導員は約8,000人いる。多くの指導員が、それぞれに地元で小さなグループを作り活動している。また、ネイチャーゲーム協会の研修は受けていないが、書籍等で勉強し独自に活動しているグループも多いようだ。
 ネイチャーゲーム協会登録の指導員には、幼・小・中・高の教員が多い。学校内で使ってもらうための教材も準備している。数年前に文科省からの委託事業で、ネイチャーゲームを核にしてその前後の調べ学習までも含んだ事例集を作成したが、やはりマニュアルを作ると総合的な学習の時間の意味がなくなるという矛眉があった。そこで、これまで気に留めなかったことを疑問に思うことのきっかけとしてネイチャーゲームを使ってもらおうという方針となった。しかし実際は、書店に陳列されている様々な本を見るとマニュアル化が進んでいる。総合的な学習の時間の意味自体が薄れてきているのかもしれない。CONEのリーダーが教員をサポートできるような体制作りを考えている。







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