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3.3 冷却装置
 船外機の冷却装置は燃焼及び燃焼ガスによってシリンダ、シリンダヘッド、ピストン、バルブなど各部の温度が高温になり焼き付きを起こす恐れがあるため、航走する水域の水(主に海水)を直接ロワーユニットの冷却水取り入れ口からウォーターポンプにより吸い上げ冷却水として循環させて、各部を冷却し適温に保つ装置で、2・304図に示すようにウォーターポンプ、ウォータージャケット、ウォータージャケットカバー、サーモスタット、プレッシャリリーフバルブ及びホースなどで構成されている。また、シリンダヘッドのウォータージャケット内にはアノードメタル(一種の防食亜鉛)を設けて、ウォータージャケット内の腐食を防止している。
 
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2・304図 冷却系統
 
 冷却水はギヤケースに取り付けられているメッシュのスクリーンで異物を取り除き、バーチカルドライブシャフトで駆動されているウォーターポンプで吸い上げられ各部を循環する。また、冷却水が吸い上げられるとロアーケースに設けられているパイロットリリーフ(検水孔)から少量の冷却水が排出され、運転中の水上がりの状況が判る構造になっている。(点検用として使われる。)
 始動後など、冷却水温が低い時はサーモスタットが閉じているため、冷却水はシリンダ及びシリンダヘッドのウォータージャケット内を循環するが、冷却水温が上昇してくるとサーモスタットが開き冷却水はウォータージャケットカバーを通りオイルパンとエキゾーストパイプに吹きかけながら排気ガスと共にプロペラボス部から排出される。または排気ガスと共に直接水中に排出される。また、中大型機種の冷却系統にはプレッシャリリーフバルブ(コントロールバルブ)が設けられ、水圧調整をしエンジン保護をしている。
 
1)ウォーターポンプ(海水ポンプ)
 ウォーターポンプは回転式容積変化型であり、2・305図に示すようにポンプボディ内にゴム製インペラが偏心して組み付けられており、2・306図のようにギヤケース上部に取り付けられバーチカルドライブシャフトによって駆動される。インペラが回転するとインペラ翼とポンプボディに囲まれた空間の容積が変化するため負圧が発生し、吸入口から海水(航行水域の水)をこの空間に吸い込み、さらにインペラが回転するとこの空間は小さくなり吸入された海水が加圧されて吐出口から送り出される。インペラは海水中の異物を噛み込んだり摩耗するので定期的に交換が必要である。
 
2・305図 ウォーターポンプ
 
2・306図 取付位置
 
2)サーモスタット
 サーモスタットは温度によって自動的に開閉する切換弁で、一般にペレット内にワックスと合成ゴムを封入したワックスペレット型が用いられている。これにより冷機時(冷却水温が低い時)はエンジンから排出側への水路を閉じ、冷却水をエンジン内部で循環させ早く適温にしている。適温になったら排出側への水路を開き、新しい低温の冷却水を取り入れ冷却水温をコントロールしている。
 サーモスタットの作動は2・307図に示すように冷却水温が高くなると固体のワックスが液体となって膨張し合成ゴムスリーブを圧縮してピストンを押し出す。しかし、ピストンはケースに固定されているためスプリングを押し縮めてバルブを開くことになる。冷却水温が低くなるとワックスが固体となって収縮し、合成ゴムスリーブは元の状態に戻り、バルブはスプリングによって押し上げられて閉じる。
 
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2・307図 サーモスタットの作動
 
3)プレッシャリリーフバルブ(プレッシャコントロールバルブ)
 中・大型船外機の冷却系統には一般に2・308図に示すようなプレッシャコントロールバルブが取り付けられている。プレッシャコントロールバルブはウォーターポンプとパワーユニットの中間に設けられ、低い冷却水温、サーモスタット閉弁時、急加速など冷却系統内の水圧が上昇(0.15〜0.16MPa)した場合に開弁して余分な水量を逃がすことによって水圧調整を行っている。この働きによって最高圧が押さえられるので過大な水圧からエンジンを保護し、水漏れ、サーモスタットの誤作動等を防止している。
 
2・308図 プレッシャコントロールバルブ
 
4)フラッシュバルブ
 水道ホースを簡単に取り付けて、エンジンの停止時にエンジンカバーを外さずにエンジン冷却水通路を効果的に洗浄できるようにフラッシュバルブを設けている機種もある。
 フラッシュバルブはワンウエイ構造となっており、水道の水圧(0.03MPa)によって自動的に開閉するようになっている。







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