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7)バルブ及びバルブ機構
(1)2サイクルガソリンエンジン
 2サイクルエンジンの基本は給排気バルブ(弁)を持たず、ピストンの往復によりシリンダの各孔(ポート)を開閉する。いわばピストンがバルブの役目をしている。
 
2・299図 リード・バルブ
 
 2サイクルガソリンエンジンの吸気方式には基本形のピストンバルブ式、改良型のロータリバルブ式及びリードバルブ式があるが、現在では性能面(吸入効率の向上)より殆どの2サイクルガソリンエンジン船外機ではリードバルブ式が採用されている。リードバルブ式は2・299図に示すような特殊ステンレス鋼製(厚さ0.2mm)、樹脂製等のリードバルブがクランクケースの側面に取り付けられ、クランクケース内の圧力変化によって開閉し吸気作用を行う。すなわちピストンが上昇行程に移りクランクケース内に負圧が発生すると同時にリードバルブが開かれて混合気の吸入が始まり、ピストンが下降行程に移りクランクケース内の一次圧縮が始まっても混合気流入の勢い(慣性)が勝っている間は吸入し続け、更に圧縮が高まり吹き返しが起きようとすると即時にリードバルブが閉じてこれを防止する。従って、吸気タイミングはクランクケース内の圧力変化に即時対応して自動的に決まるので吸入効率が向上し、特に低・中速域で大幅なトルクアップを図ることができる。
 
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2・300図 ポートタイミングダイヤプログラム
 
 リードバルブが実際に開閉するタイミングはエンジンの運転状態(吸入負圧の強さ、流入の勢い、排気及び掃気の慣性効果)により変動するので、ハッキリ図示することはできないが一例を2・300図に示す。
 2サイクルガソリンエンジンの掃気等の作動については、3・1「2サイクルガソリンエンジンの特長」の項で説明しているので、ここでは省略する。
(2)4サイクルガソリンエンジン
 バルブ機構はクランクシャフトの回転をカムシャフトに伝え、カムシャフトに設けられたカムにより適切な時期にバルブを開閉して、燃焼室への混合気の導入及び密閉、更に燃焼ガスの排出を行うためのもので、2・301図に示すように、バルブ、バルブシート、バルブガイド、バルブスプリング、ロッカアーム、カムシャフト、タイミングベルトドリブンプーリ、タイミングベルト及びタイミングドライブプーリなどで構成される
 
2・301図 バルブ機構
 
 バルブは燃焼室を直接開閉するもので各シリンダに混合気を導入する1〜2本のインテークバルブと燃焼ガスを排出する1〜2本のエキゾーストバルブがあり、カムシャフトのカムにより適切な時期に開閉される。また、高温、高圧にさらされながらバルブシートとの衝撃が繰り返されるので、耐熱性及び耐摩耗性に優れた特殊鋼で造られている。なお、シリンダヘッドを潤滑した潤滑油が燃焼室へ下がるのを防止するために、耐熱性及び耐油性のステムシールがバルブガイド先端に取り付けられている。
 バルブスプリングはカムで開けられたバルブをスプリング力で閉じさせるもので、スプリングリテーナ、スプリングシート及びコッタで取り付けられている。
 バルブシートはバルブフェースと密着し燃焼室の気密を保持する部分で、耐熱性及び耐摩耗性が要求されるため特殊鋼製のリングが圧入されている。
 ロッカアームはカムの動きをバルブに伝え直接バルブを開けるもので、ロッカアームシャフト及びその支持台でシリンダヘッドに取り付けられている。またバルブステムとロッカアームのスキマ(バルブクリアランス)を調整するアジャストスクリューが組み込まれている。OHC式の一例を2・302図に示す。
 
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2・302図 ロッカアーム
 
 カムシャフトは炭素鋼の鍛造製でカム面には高周波焼き入れを施している。また、回転時の慣性エネルギを軽減するために内部を中空にして軽量化を図ったものもある。
 タイミングベルトはクランクシャフトドライブプーリの回転をタイミングベルトドリブンプーリに伝えるもので、2・303図に示すようなゴム材で内部に抗張体を設けたコグベルト(歯付きベルト)である。なお、ドライブ及びドリブンプーリはバルブの開閉時期及び点火時期を正しく伝える役目をしており、カムシャフトドリブンプーリはクランクシャフトドライブプーリの1/2の回転速度で回転する。
 
2・303図 コグベルト







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