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5)コンロッド及びコンロッドベアリング
(1)コンロッド(連接棒)
 コンロッドはピストンとクランクシャフトを連結し、ピストンが受けた燃焼圧力をクランクシャフトに伝える、すなわち往復運動を回転運動に変える働きをしている。また、燃焼による大きな繰り返し衝撃力に耐えられるようニッケルクローム鋼などの特殊鋼をI型断面の型打ち鍛造で造り十分な強度を持たせている。
(1)2サイクルエンジン
 小型船外機には一般に組立式クランクシャフトが採用されているので、コンロッドも2・291図に示すような一体形コンロッドが使われ、小端部にはニードルベアリングが使用されている。また、コンロッドベアリングにも飛沫式潤滑でも高回転、高負荷に耐えられるニードルベアリングが使用されている。
 中大型船外機には4サイクルエンジン同様に一体形クランク軸が採用されているので.2・292図に示すようにコンロッドの大端部は水平分割式で、コンロッドベアリング(分割型ニードルベアリング)を介してクランクピンに2本のロッドボルトで取り付けられている。
 コンロッドのスラストは4サイクルエンジンとは異なり、ピストンのピンボスとコンロッド小端部で規制し、大端部の冷却や潤滑を向上させるべくクランクシャフトとの間にスキマを設けている。
 
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2・289図 プレーンリングとキーストンリングの比較
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2・290図 表面処理
 
2・291図 一体形コンロッド
 
2・292図 水平分割式コンロッド
 
(2)4サイクルエンジン
 コンロッドは2・293図に示すような構造で、ピストンピンの取付が一般的に半浮動式が採用されているので、コンロッド小端部とピストンピンが軽圧入になり小端部の内径がピストンピンの外径より小さい構造となっている。一方、大端部は水平分割式を用いベアリングを介してクランクピンに2本のロッドボルトで取り付けられている。また、大端部にはピストン冷却とピストンピン、ピストン及びシリンダ潤滑用のジェットが設けられている。(2・60図(2)参照)
 
2・293図 コンロッド
 
(2)コンロッドベアリング(クランクピンメタル)
 4サイクルエンジンのコンロッドベアリングには、2・294図に示すように、初期なじみを良くするためケルメットの表面に、柔らかい鉛錫合金(ホワイトメタル)または鉛インジウム合金を0.02〜0.03mmの厚さでオーバレイを施したトリメタル(三層メタル)を使用している。
 
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2・294図 ケルメットメタル
 
 2サイクルエンジンのコンロッドベアリングには、一体型のニードルベアリングまたは半割型のニードルベアリングを使用している。
 
6)クランクシャフト
 クランクシャフトはピストンの往復運動をコンロッドを介して回転運動に変えると共に機関出力の取り出し軸でもある。クランクシャフトはクランクアーム、クランクピン、クランクジャーナル及びバランスウエイトなどで構成されている。
(1)2サイクルエンジン
 2サイクルエンジンでは、小型船外機用のクランクシャフトは剛性の高い炭素鋼の組立式で造られている。2気筒用クランクシャフトの場合、2・295図に示すようにクランクピンが180゜ずれた位置となるように中央部で圧入組立される。クランクシャフトを支持するジャーナル軸受けにはころがり軸受け(ニードル、ローラー、またはボールベアリング)がクランクジャーナル部に圧入組立される。また中央部には上下のクランクケース間の気密を保つためにラビリンスシールが組み付けられている。なお、両端はオイルシールにより保たれている。コンロッドベアリングとしてニードルベアリングが圧入された一体形コンロッドがクランクピンに組み付けられ、圧入組立されている。また、クランクシャフトのスラスト荷重(自重)は下端に設けられているボールベアリング(深溝型)によって支持されている。
 
2・295図 組立式クランクシャフト
 
 中大型船外機用のクランクシャフトは剛性の高い炭素鋼または特殊鋼の一体形鍛造で造られ、ジャーナル及びピン部は高周波焼き入れを施して硬さを高めている。クランクシャフト最下部のジャーナル部にはボールベアリング(深溝型)が組み付けられクランクシャフトのスラスト荷重(自重)を支持している。これ以外のジャーナル部には半割型または一体型(最上部のみ)ローラベアリングによって支持されている。
 各シリンダ間の気密を保つために、2・296図に示すように各シリンダ間に設けられたクランクディスクの外周の溝にシールリングが組付けられ、シールリングは自己の張力によってクランクケースに接触している。更にクランクケース内圧が加わるとラビリンスシールと同じ効果が生じ気密を保つ。
 
2・296図 一体形クランクシャフト
 
(2)4サイクルエンジン
 クランクシャフトは剛性の高い炭素鋼または特殊鋼の一体型鍛造で造られ、ジャーナル及びピン部は高周波焼き入れを施して硬さを高めている。2・297図に示すようにクランクシャフト両端部の上側にタイミングベルトドライブプーリと充電用のACGロータなど、下側にはフライホイールが取り付けられている。また、クランクシャフトはジャーナルによりメインベアリングを介してシリンダブロックにクランクケース一体のベアリングキャップで取り付けられている。
 メインベアリングは、コンロッドベアリングと同様のトリメタル(三層ケルメットメタル)を使用し、ベアリングキャップ(2・298図)はクランクケースと一体成型して剛性を高めている。また、ジャーナルの1ヶ所にはクランクシャフトのスラスト荷重(自重)を受けるためのスラストワッシャが設けられている。
 
2・297図 クランクシャフト及び関係部品
 
2・298図 ベアリングキャップ
 
(3)フライホイール
 フライホイールは各行程によって変化する回転力を慣性エネルギで平均化する働きとバーチカルシャフトヘ動力を伝達するもので鋳鉄で造られている。また、外周にリングギヤを設け、エンジン始動装置(スタータ)の回転を伝えている。







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