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3級舶用機関整備士指導書

 事業名 舶用機関整備士の資格検定事業
 団体名 日本舶用機関整備協会 注目度注目度5


2.2 エンジン運動部
 エンジンの運動部分は、ピストン、連接棒、クランク軸、主軸受、ハズミ車、ダンパ、及び、その付属部品で構成されている。
 
1)ピストン
 ピストンは、シリンダライナ内を往復運動して、燃焼室内で発生した燃焼圧力を、頂面で受け、連接棒を介してクランク軸に回転力を与えるとともに、クランク軸の回転力により連接棒を介してシリンダ内の燃焼ガスの排出、新しい空気の吸入、並びにシリンダ内の空気を圧縮する役目をしている。
 ピストンは、燃焼室の一部を形成するピストン頂部と、リングが装着されるリングランド部、ピストンピンを支持するピストンピンボス部、ピストンにかかる側圧を支えるスカート部によって構成されている。
 ピストン頂面は、高い爆発圧力と高熱にさらされるとともにシリンダ内を高速で往復運動するため、軽くて高温強度に優れ、且つ熱膨張が少なく熱伝導の良い材料が要求される。
 小形高速機関では、アルミニウムを母体とした比較的熱膨張係数の小さいY合金やローエッキス合金を金型鋳造して造られる。中大型機関では、2・51図に示す如く従来は鋳鉄一体形で造られていたが、最近では機関の高出力化に伴い、熱膨張係数が小さく、耐熱強度、保油性、なじみ性に優れたダクタイル鋳鉄(球状黒鉛鋳鉄)の一体形ピストンが使用されている他、頂部を耐熱強度に優れた鍛鋼で造りスカート部を鋳鉄等別の材料で造って、ボルトで締め付けた組み合わせ形が採用されている。
 
(拡大画面:100KB)
(A)一体形
 
(拡大画面:67KB)
(B)組合せ形
2・51図 ピストンの断面形状
 
 ピストン頂面の温度は、高過給機関ほど高くなり、この温度が材料の耐熱限度を越えると、亀裂発生等の事故を起こすので、潤滑油によりピストンの裏面を、強制的に冷却する必要があり冷却形ピストンが使用されている。その代表例を2・52図に示す。
 最近の高速高出力機関には、2・53図に示すように、シリンダブロックに設けた固定ノズルによってジェット冷却する方式が主流となっている。又アルミピストンのトップリング溝部には、耐摩環(リングトレーガ)を鋳込みリング溝の摩耗に対処している。
 ピストンの形状は、高熱を受ける頂部外径は、熱膨張を考慮して、スカート部に比べ幾分小さく加工されている。また、ピストンピンボス部は、ピン方向の膨張量が大きいため、ピストンピン方向を短径とし、その直角方向を長径とした楕円形に仕上げ、機関運転時熱を受けた時点で真円となるように作られている。(2・55図
 またピストン頂面は、燃焼室の一部を形成しているため燃焼方式により、2・54図に示すような形状に加工されている。
 
(拡大画面:33KB)
2・52図 ピストンの冷却方式
 
2・53図 空洞付ピストンの固定ノズルによるジェット冷却方式
 
直接噴射式
 
予燃焼室式
 
渦流室式
2・54図 ピストンの頂部の形状
 
2・55図 ピストンの外形
 
2)ピストンリング
 ピストンリングは2〜5本の圧縮リングと、1〜2本のオイルリングで構成され、圧縮リングは高温高圧の燃焼ガスをライナとピストンとの隙間より逃がさないように気密を保つとともに、ピストンが受けた熱をシリンダに逃がす役目をしている。
 ピストンリングの本数は、ピストンの往復運動に伴う摩擦損失を低減するため、従来の圧縮リング4〜5本、オイルリング1〜2本の組合せから、最近の高速機関では圧縮リング2本オイルリング1本の組み合わせが一般的となっている。
 ピストンリングには、耐摩耗性に優れた特殊鋳鉄が使用され、リングの1カ所を切り、張力を持たすように作られており、常に自己の張力でシリンダ壁に密着しているが、2・56図に示す如く燃焼行程及び圧縮行程では更に燃焼ガスの圧力及び圧縮時の圧力がリングの上面と背面に加わるため、いっそう強くシリンダ壁に密着してガス漏れや圧縮漏れを防ぐと共に、オイル上がりを防ぐ役目もしている。
 オイルリングはライナスカート部にはねかけられた潤滑油を、クランクケース側にかき落として余分な潤滑油が燃焼室に入るのを防ぐとともに、ライナ表面に適度な油膜を作り焼き付き防止の働きをしている。リングの表面には通常パーカライジング処理が施されているが中にはリングの摺動面や上下面に耐摩耗性のある硬質クロームメッキを施したもの或いは、初期なじみをよくするために摺動面に軟質メッキを施したものが作られている。
 リングの断面形状及び、合い口形状には多くの種類のものがあり、機関メーカでは、機関の仕様に合わせて独自の組み合わせで使用している。代表的なものを2・58図2・59図及び2・57図に示す。
 
2・56図 ピストンリングの作動
 
(拡大画面:8KB)
2・57図 ピストンリングの合い口形状
 
2・58図 オイルリングの断面形状
 
 最近の高速機関では、上部のオイルリングにコイルバネの入ったエキスパンションリングを使用し、ピストンピン下のオイルリングを省略して、ライナとの摩擦損失を少なくしたものが多く使用されている。
 
2・59図 圧縮リングの断面形状







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