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3級舶用機関整備士指導書

 事業名 舶用機関整備士の資格検定事業
 団体名 日本舶用機関整備協会 注目度注目度5


3)ピストンピン
 ピストンピンは、ピストン頂面で受けた燃焼ガスの圧力を受け、これを連接棒を介してクランク軸に伝える働きをしている。このためピストンピンは、曲げと高い軸受け圧力を受けるので、表面硬度が高くでき且つ強靱な材料が要求される。一般には中空の肌焼鋼あるいは特殊鋼を表面焼き入れして使用している。
 ピストンヘの取り付け方法には、固定式と、浮動式があり、固定式は2・61図Aに示す如くピストンピンをピストンピン穴に一定の締め代を持って押し込み、キー及びボルト或いはテーパピンで固定し動かないようにしている。
 又浮動式は、運転中ピストンピンが自由に回転出来るよう何処にも固定せず同図B、Cに示す如くピストンボス両端にサークリップ又は押さえ板を取り付けて抜け出しを防止している。
 
2・60図 浮動式ピストンピンの形状
 
2・61図 ピストンピンの取付け方法
 
4)連接棒(ロッド)
 連接棒はピストンとクランク軸を連結し、ピストンが受けた燃焼圧力をクランク軸に伝えると共にクランク軸の回転運動をピストンの往復運動に変える働きをしている。連接棒は鍛鋼又はニッケルクローム鋼などの特殊鋼をI型断面の型打ち鍛造で造り十分な強度を持たせている。又大形では自由鍛造の丸形断面のものが多く使用されている。
 小端部には筒形メタルか鋼製裏金付きの軸受メタルを圧入し、ピストンピンの軸受けとしている。なお、最近の連接棒には、慣性質量を小さくし且つ小端部メタルの受圧面積を大きくするよう2・62図(A)及び(B)に示すように小端部の下側を大きくした台形のものが多く採用されている。
 大端部は2つ割に加工され、大端部軸受けメタル(クランクピンメタル)を介して、2本又は4本の連接棒ボルト(ロッドボルト)で締付けクランクピンに連結されている。なお、I断面の中心部には大端部から小端部へ潤滑油を送る油孔が加工されピストンピンやライナの潤滑、ピストン冷却などを行っている。大端部は従来は水平割り構造が多かったが最近の中高速機関はクランクピン径が従来のものより大きくなっており、整備時のピストン抜きが可能なように大端部は斜め割りとしている。
 なお、斜め割りにした場合、合わせ面にはスベリ力が働くので合わせ面にセレーション加工を施し対処している。
 
2・62図 連接棒小端部の形状
 
2・63図 連接棒大端部の形状
 
5)小端部メタル(ピストンピンメタル)
 ピストンピンと連接棒を結合する軸受けであり、一般には燐青銅製の筒形メタルを、精密加工した小端部穴へ圧入し、メタル圧入後にピストンピンとの適正な隙間を確保するため内径をリーマにより仕上げ加工している。なお、最近の機関には鋼製の裏金を持つ軸受けメタルも使用されている。
 
6)連接棒大端部メタル(クランクピンメタル)
 大端部メタルは大端部軸受内に納められ、クランク軸のピン部にキャップを介して取り付けられクランク軸を回転させている。
 メタルには、衝撃荷重に耐え摩耗の少ない材料が要求され従来は、厚肉のホワイトメタルが使われていたが、最近の機関には高出力化により、クランク軸の軸受部を焼入硬化しているため、耐圧荷重の高いケルメットメタルが使われている。
 ケルメットメタルは2・64図に示すように軟鋼製の裏金にケルメット(銅鉛合金)を鋳込み表面に初期なじみと異物の埋没性を良くするために柔らかい鉛錫合金(ホワイトメタル)又は、鉛インジューム合金を0.02〜0.03mmの厚さでオーバレイを施し薄肉三層メタルとしている。
 なお、最近は、耐食性、耐疲労強度がケルメットメタルより優れたアルミニウムを主成分としたアルミの3層メタルが使用されるようになってきている。
 これらの薄肉三層メタルは完成メタルと呼ばれ、必ず一定の締め代と張り代をもっており、取り出した状態では、軸受孔より直径がやや大きく軸受孔に挿入すると、合わせ面がわずかに飛び出している。この飛び出し量をクラッシュ量といい、主軸受キャップを規定のトルクで締め付けるとクラッシュに相当する量が圧縮されて、軸受内面に密着し規定の寸法(真円)になる。したがってメタルの内径計測は規定のトルクで締め付けた後行わねばならない。
 
(拡大画面:16KB)
2・64図 ケルメットメタルの構成
 
(拡大画面:23KB)
2・65図 完成メタルの形状
 
7)連接棒ボルト(ロッドボルト)
 連接棒大端部にクランクピンメタルを介してクランク軸のピン部を連結する重要なボルトである。連接棒ボルトにはピストン及び連接棒等の往復運動部分の慣性力による衝撃的な引っ張り応力とともに曲げの力も受けるため、ニッケルクローム鋼、クロームモリブデン鋼など強靱な高張力鋼が使用されている。
 ボルトの形状は、2・66図に示すように、ねじ部やボルト頭部の付け根に集中する応力を分散させるため、外径をねじ底部径と同じ太さまで小さくすると共に、キャップ合わせ部分はリーマ合わせとし、曲げに強く、ずれない形状にしている。
(ロッドボルトの交換基準について)
 ロッドボルトの折損はシリンダ・ブロックの破損等重大事故となるため外観上に異常がなくともメーカで決めている使用時間や、分解回数に達した時又ピストンや、クランクピンメタル等の焼き付き事故或はオーバラン事故等を起こした時には必ず交換し事故の未然防止を計る必要がある。
 
(拡大画面:19KB)
2・66図 連接棒ボルトの一例
 
8)クランク軸
 クランク軸はピストンの往復運動を回転運動に変えると共に機関出力の取り出し軸でもある。クランク軸は連接棒大端部と連結するピン部、軸を支えるジャーナル部及びこれらを結ぶアーム部から成り立っている。
 クランク軸は機関の最重要部品であり、衝撃的に作用する曲げやねじりに対し、十分な強度を有する炭素鋼やニッケルクロームモリブデン鋼等が用いられ鍛造によって造られている。
 ジャーナル部やピン部には高周波焼入れを施し耐摩耗性を向上させている。又ピン部への給油のためジャーナル部からピン部へ油穴があけられている。軸端には動力取り出し接手やフライホイールを取り付けるための加工が施されている。
 クランクアームには通常ピン部と反対側にバランスウエイトを取り付けて振動の軽減と円滑な回転をするようにしている。
 バランスウエイトは殆どが鋳鉄で造られ遠心力で飛ばないよう丈夫なボルトで締め付けられているが、小形高速機関には、クランク軸と一体で鍛造されたものもある。
(クランク軸の焼き付きについて〉
 クランク軸が焼き付いた場合はカラーチェックを行い焼割れを調査すると共に、硬さも調査する。ヘアクラック程度でアンダサイズメタルが使用出来る径まで研磨してクラックが完全に除去できれば使用可能であるがその場合も必ず硬さを再チェックすること。なお、焼き付いた場合は相手側のメタルハウジングが変形していることが多いので必ず調査し異常があればメーカに相談し修正又は交換する。
 
2・67図 クランク軸と関連部品
 
2・68図 クランク軸油穴







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