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(1)毎日の点検・保守整備
 機関室や機関を常に美しい状態に保つことにより、水、油漏れ、ボルトナットの弛み脱落などの発見が容易となる。
(1)始動前の点検
・燃料沈殿層及び油水分離器のドレンを排出する。
・各部の潤滑油量を点検する。不足の時は補給する。
・清水冷却量(リザーブタンク量)を点検、不足分は補給する
・クラッチ切着レバーを中立位置にする。
・空気だめの圧力を点検し、ドレンを排出する。
(2)暖気運転中の点検
・各部の温度計を点検しながら油漏れ、水漏れ、ガス漏れなどを点検する。
・ガバナリンクのピンなどの摺動部へ注油する。
・回転計、圧力計などの計器板を点検する。
(3)運転中の点検
・各種計器、警報灯、その他温度計などの数値を点検する。
・排気ガス色、異音、振動、発熱、機関回転音に注意する。
(4)停止または停止前の点検
・空気冷却器のドレンコックを解放し、ドレンを排出する。特に湿気の多い季節には忘れずに実施すること。
・始動空気だめの圧力を点検し、不足の時は充気する。
・燃料タンクの油量を点検し、補給する。(帰港時)
(2)1ヶ月ごとの点検と保守整備(約200〜500時間)
(1)海水こし器の清掃
(2)燃料及び潤滑油こし器エレメントの交換及び清掃
(3)防食亜鉛棒の点検及び交換
(4)機関潤滑油の汚れ、劣化、アルカリ価などの点検または交換
(3)6ヶ月ごとの点検と保守整備(約1000〜2500時間)
(1)噴射弁の調圧と、噴霧点検
(2)噴射時期の点検
(3)吸排気弁のバルブクリアランスの点検
(4)冷却水ポンプ(ゴムインペラ)の点検
(5)クラッチ潤滑油の点検又は交換
(4)1ヶ年ごとの点検と保守整備(約2000〜5000時間)
(1)シリンダヘッド燃焼室のカーボン落としと清掃
(2)吸排気弁及びシートの点検と摺り合わせ
(3)ピストンを抜き出して、清掃点検、リング溝、ピストンピン及びピン穴、リング等の点検
(4)連接棒小端軸受け、クランクピン軸受けの点検及び連接棒ボルト傷、当たり等の点検
(5)機関台、据付ボルトの点検とデフレクション計測と調整
(6)油冷却器、空気冷却器の点検と清掃
(7)空気始動弁の分解点検
(5)2ヶ年又は3ヶ年ごとの点検と保守整備(約4000〜15000時間)
(1)船舶安全法の中間又は定期検査に準じて分解点検整備を実施する。
 以上の内(1)及び(2)項は機関の運転者が日常実施すべき項目であるので、機関取扱者に対し、よく理解させて、実施するよう指導することが大切である。
 
2)整備インターバルの決め方
  整備のインターバルは、使用環境条件や取扱方などの諸条件を考慮して、各機種ごとに設定されるが、中低速機関の場合を例として、主要部品ごとの汚損状況と整備に関する基本的な考え方を次に示す。
(1)燃料弁
  燃料の前処理、すなわちフィルタ、清浄機、加熱温度の適否が燃料弁の寿命に大きい影響を与える。整備時期は、噴霧テストや開弁圧等のチェック結果と機関性能の低下状態、例えば排気温度の上昇、燃料消費の増加及び排気色の悪化等を勘案して決められる。
(2)排気弁
  シート部の吹き抜けを基準として、整備時期を決めることは適当でない。実例では、シート部のかみ込み深さが急激に増し、その修正寸法が大きくなって弁の寿命が短くなる場合が多い。また、使用開始後、500から1500時間程度でシートを摺り合わせ又は研削することは、初期の熱歪みをとることで好結果が期待できる。
(3)排気タービン過給機
 ころがり軸受け方式のものは、軸受けの耐用時間から整備インターバルが決められる場合があるが、しかし、低質油を使用する機関の場合は、燃料油中のNa(ナトリウム)とV(バナジウム)成分等による堆積物がタービンノズルとブレードに急速に付着し、その影響でサージングや、ロータ軸のアンバランスを発生し、軸受けの寿命を短くすることから、適切なインターバルで解放し、堆積物を除去する必要がある。
(4)ピストン
  ピストンリングの摩耗及びリング溝や油落とし穴へのカーボン堆積は、潤滑油消費.の増加をもたらす。また、ピストン爆発面と冷却面の堆積物は、ピストン頭部の熱応力を増大させる。
 したがって、このような不具合現象を抑えるため、ピストンの解放・整備は汚損状況と維持費等を勘案して適切なインターバルを決めて、実施するのが合理的である。
(5)主軸受けメタルとクランクピンメタル
 これらのメタルはゴミを嫌う。特にケルメットメタルやアルミメタルはこの傾向が強い。クランクピンメタルはピストン抜きの際に点検できる。主軸受けメタルは、メーカの指定する耐用時間がメンテナンスインターバルの上限となる。
 しかし、個々の使用条件によって、メタルのオーバレイの摩耗、ヘアクラックの発生等の状況は異なることから、それぞれ機関の傾向を把握するまでの間は、機関解放時に合わせて摺動面の定期的点検を行うべきである。
(6)シリンダライナ
  ライナの内面は、ピストン抜きの度に点検と摩耗度の計測ができる。又、海水冷却方式のようなライナ外周の点検は、腐食、浸食に対する防錆と補修、Oリングの交換が目的であることから、インターバルは、腐食のすすみ具合とOリングの寿命によって決まる。実際は、これらを勘案して1年毎、2年毎といった区切りでピストン抜きに合わせて実施されるのが一般的である。







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