日本財団 図書館


第3章 計画課題の抽出
1 朝日町の現状等からの課題
(1)地域の生活を支えるサービス産業
 これまでの調査結果より、地域の生活に密着した起業化といった視点に立って、本町における今後の取り組み課題を整理する。
 
(1)職住近接を促す新たな就業形態を受け入れる環境づくり
 本町では、町内就業者において町外で従業するものの割合が高まっており、いわゆるベットタウン化が進展している。こうした傾向は若齢者層に強く、15〜34歳の就業者においては4人中3人が町外で働いている。こうしたことから、中高齢者層との若齢者層において暮らし方の相違が生じていると考えられる。
 また、朝日町内の雇用・従業の場が総じて減少傾向にあることから、町内における経済活動の場、雇用の場が少なくなっていると考えられる。したがって、新規の転入人口の増大によるベットタウン化によってのみ、こうした状況がもたらされたとは言えない。すなわち、農林業などの第1次産業、製造業を中心とする第2次産業の構造的な低迷と、産業構造の変換による第3次産業への就労構造の移行が、こうした状況を生み出す主な要因となっていると考えられる。
 さらに、職場が町外にあること、女性の社会進出、車社会の進展による日常生活圏の拡大などにより、住民各年齢層における生活様式の多様化や永住意識の乖離といった意識構造の分散化を招いていると考える。
 このように地域の生活構造が多様化する中で、少子・高齢社会の到来や、情報通信技術の発達、自然と接する暮らし方への要請などから、職場と住まいが至近距離または一体化した住環境整備づくりについての検討が求められる。
 
(2)地域密着型産業の育成
 職場が町外にあること、女性の社会進出、車社会の進展による日常生活圏の拡大などは、価値観の多様化ともあいまって、住民は近隣市町村に立地する大規模小売店舗などで消費することが多くなった。
 本町の商店街におけるような小売・サービス業は、消費者にものやサービスを売るだけの存在ではなく、まちや生活のさまざまな情報を伝えるメディアの役割も兼ねていたと考えられる。こうした、大型小売店舗などにはない機能や能力を改めて見直し、多様化する住民のニーズにきめ細かな対応もできる地域密着型産業のあり方およびその育成についての検討が求められる。
 
(2)成熟型社会のコミュニティ
 すでに触れたように、地域自治活動については、地区自治会はほぼ従来通りの活動が行われている一方で、性・世代別地域自治活動に関しては、全般として全町組織への組織率や加入率が低下している。今後、少子高齢化が進み、地域における問題解決に向けて、これまで以上に住民相互の助け合いが必要とされる中で、住民全員参加型を基本とする地域自治において、人々がつながりあい、いざという時に力を発揮できなくなりつつある可能性が指摘される。
 一方、グループやサークルの活動については、文化協議会加盟団体は増えており、幸若太鼓保存会のように活動内容を発展させている団体も見られる。すなわち、住民の活動の場は、地域自治から、グループやサークルの活動の方に比重がやや移ってきている傾向にある。このことから、旧来のような職住体の農村型共同社会だけをベースに考えることはすでに難しくなりつつあり、住民それぞれが異なる価値観や経済基盤の上に立ち、それぞれが自己実現を目指している“成熟型社会”におけるコミュニティのあり方とそめ活性化が必要となっている。
 こうした視点に立って、本町における今後の取り組み課題を整理する。
 
(1)グループやサークルなどが活発に生まれ、育つ環境の整備
 現代社会において、価値観が多様化し、社会が高度化・複雑化する中で、活動目的を限定し、活動の個性化、高度化、専門化を図ることができるグループやサークルなどの活動が活発に生まれ、活性化を促すようなしくみづくり、環境づくりを整えることが必要である。そのためには、世話役や牽引者の育成やその活動の支援、組織の維持・運営の支援などが求められる。また、そうした環境づくりにあたっては、NPOなど、ボランティア活動を行うグループも視野に入れることが重要であろう。
 
(2)従来の地域自治に対するさらなる活性化
 従来からの地域自治についても、さらに活性化が望まれる。ここでも、世話役や牽引者の育成やその活動の支援、組織の維持・運営の支援などが求められる。また、ボランティアとしての自覚もさることながら、住民相互の助け合いの輪づくりを念頭におけば、自治意識に芽生えた視点に立っことがいっそう重要であろう。
 
(3)地域自治とグループやサークルなどの活動との連携・協働の推進
 地域自治と、グループやサークルなどの活動という2種類のコミュニティが、生活者(地域住民)の立場から互いに連携を図り、各々の活動を発展させていくようになることが、1つの望ましい在り方であると思われる。そのためには、それぞれの存在や活動内容を互いがよく知ることができるようにすることや、互いに協力し合う意識を向上させることなどが重要であろう。
 
(3)あさひ文化の継承と育成
 現況に見るとおり、この「あさひ文化の継承と育成」プロジェクトは、これまで行われてきたことを、さらに一歩進めることを目指している。そのために、本町において今後必要となると考えられる取り組み課題を整理する。
 
(1)あさひ文化の継承のしくみづくり
 豊かな自然・歴史・文化を背景に、行政としても、町の自然・歴史・文化を知ることで、住民に町への関心や誇りをこれまで以上に持ってもらえるようにしたいと、近年特に教育・文化方面に力を注いできた。
 まず、盗掘などの対策の目的もあり、文化財悉皆調査を通じて、文化財保護体制整備に注力している。
 しかしその一方で、無形文化財の継承は、継承地区の住民に任せる形のままになっており、その継承が円滑に行われているのか、何らかの障害に直面したりしていないかなどを定期的に監視したり、適宜支援したりする十分な体制はつくられていない。こうした体制作りを進めていくには、まず文化振興ビジョン・計画の策定が必要であろう。
 
(2)住民の文化的活動の活性化
 朝日町内におけるスポーツを含めた住民の文化的活動は、まず生涯学習課を中心として、文化協議会、体育協会によって支えられている。あさひまつりに関しては、あさひまつり実行委員会中心で行われている。また、地区によっては地区文化祭や地区体育祭が行われている。このような、文化的な活動や催しは、自己実現・発表の場、住民間交流の場となっている。文化継承のしくみづくりや文化活動のいっそうの活性化には、受け手である住民の認知・理解の実態や、その関わり方に対する意識・ニ一ズをこれまで以上に把握し、反映させることが重要である。
 
(3)ゆかりの芸術家を中心とした交流の活性化
 朝日町ゆかりの芸術家については、作品の収集、幸若文化情報センターなどでの作品の展示が行われており、さらに朝日町総合文化祭や小中学校の総合学習を通じて、住民との交流が図られている。
 しかし、こうした交流の頻度は少なく、深さも十分とは言えない面もあり、将来に向けて、よりよい形にしていく努力が必要である。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION