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(2)柏市と麗澤大学の事例
ア. 麗澤大学の概要
 麗澤大学は、昭和10(1935)年に廣池千九郎が「道徳科学専攻塾」を現在の柏市光ヶ丘に設立し、その後、東亜外事専門学校、千葉外事専門学校等を経て、昭和34(1959)年に麗澤大学外国語学部として開学された。創立以来一貫して「世界で信頼と尊敬を受け、国際社会に貢献し得る真の国際人の育成」を目指した教育を推進している。
 麗澤大学の組織の概要は、以下のとおりである。
 
図表4−3 麗澤大学の組織概要
名称 麗澤大学
設立 昭和34(1959)年
学部及び入学定員数 外国語学部300人 国際経済学部340人
教員数 専任教員127人※事務職他78(うち教員12)人(平成14(2002)年4月1日現在)
学生数 3,272人※(平成14(2002)年4月2日現在)
アクセス JR常磐線快速で、上野駅から約35分の南柏駅。
資料: 麗澤大学「麗澤大学 2002 総合案内」 麗澤大学ホームページhttp://www.reitaku-u.ac.jp/indexs.htmより作成
大学組織としては、大学院と別科を含み、それらを含めた数字である。
 
イ. 柏市の概要
 柏市は、千葉県の北西部に位置する。東は手賀沼、大津川をはさんで我孫子市、沼南町に接し、北は利根川を境に茨城県守谷町、利根運河を境として野田市に接する。また、西南は流山市と松戸市に接し、東葛飾地域のほぼ中心に位置している。東西の距離は約10.5km、南北の距離は約15.0km、面積は約73km2である。
 交通としては、東西にJR東日本・常磐線、営団地下鉄・千代田線が通り、南北に東武・野田線が通っている。道路は、東京・茨城方面への国道6号線や常磐自動車道、埼玉・千葉方面への国道16号線が通っており首都圏の放射・環状両方向の交通幹線の交差部に位置している。
 柏市の概要については、以下の表のとおりである。
 
図表4−4 柏市の概要
名称 千葉県柏市
人口 327,868人(平成12(2000)年10月現在)
世帯数 121,077世帯(平成12(2000)年10月現在)
市内の大学等 東京大学、気象大学校、麗澤大学、日本橋学館大学
特色 交通の要衝にあり、文化・アミューズメント機能が集積し、商業も発達している。スポーツ資源を活用したまちづくりを進めている。
資料: 柏市ホームページhttp://www.city.kashiwa.chiba.jp、「都市データパック2002年版」より作成 
 
ウ. 連携・協働事業の概要
(ア)連携・協働の経緯
 柏市と麗澤大学の間では、長年にわたり教育についての研究会を実施し、意識の共有化を図ってきており、何十年もかけて形成された人間関係(人脈)が、麗澤大学周辺の風土に影響を与えている。地域における人間関係の密度が濃いことが、連携・協働事業を始める契機ともなり、また事業を円滑に進めることを可能にしている。
 柏市では、早期から情報関係のシステム作りに力を入れていた中で、麗澤大学が地域でのインターネットを活用したネットワーク形成のアイデアを市に提案し、それを基点として両者の合意のもとに事業が開始され(平成9(1997)年)、平成13(2001〉年には事業推進の母体として特定非営利活動法人の柏インターネットユニオン(KIU)が設立されるまでとなった。
 また、KIU事業の他にも、近年で市内の高校から麗澤大学へ国際関係の講座を開講して欲しいとの依頼があり、それに応える形で国際理解特別事業を実施している。柏市長と麗澤大学学長による協定書も締結されている。
 
(イ)個別事業
 具体的な連携・協働事業の内容としては、以下のとおりである。
 
【大学と市】
・KIU(柏インターネットユニオン)事業の実施
・国際理解特別授業の開講(高校)
【大学】
・図書館開放
・ゴルフ場開放
・コミュニティ・カレッジ、文化講演会
 
(ウ)本連携・協働事例の特徴
 連携・協働事業が成功した要因として、人脈という信頼関係が形成されてきたことの影響は大きい。さらに、本事例で特徴的であるのは、麗澤大学と併存する財団法人モラロジー研究所により連携・協働事業に資金提供がなされていることである。財団法人モラロジー研究所は、麗澤大学を経営する学校法人廣池学園と同じ創立の理念を有する公益法人で、道徳科学専攻塾が行っていた学校教育と社会教育の2つの機能のうち、社会教育を担うものであり、元来が地域貢献型の活動を志向する組織である。財団法人モラロジー研究所の存在が、地域のインターネットを充実する活動に大きく役立っている。
 また、大学自体が社会貢献を強く意識しており、自発的に内部から地域の役に立つ活動をしようとする動きがあることも本事例の特徴である。関係者は、市が連携・脇働を主導したのではなく、大学からの自発的な提案を受入れる形で進んできたことが、事業が継続している要因であると述べている。
 さらに、大学が地域において連携を行うことにより、メリットを得られる事業の組立が重要である。例えば、KIU事業では、ボランティアの学生は、地域の小中学校にネットワークを敷設するという具体的な活動により、自分の地域貢献活動の有効性を感じることができる。同時に、ボランティアに参加した優秀な学生をリクルートしたいという企業もあるなど、参加した学生が誇りを持てる環境が準備され、市が魅力的な教育風土を形成し、学生のやる気を十分に引き出していることも、成功要因の一つである。
 今後の課題としては、事業をどのような方向性で拡大していくかがあげられている。インフラ整備は、ほぼ充実してきたので、今後はハード面からソフト面へ事業内容を発展させる必要があるほか、資金援助の継続可能性もふまえ、今後どのような形で活動を続けていくのかを検討していく必要もある。







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