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(2)インタビュー調査結果概要
 本調査では、日立市において地域と高等教育機関との連携・協働事業の参考となる事例を抽出し、先進事例団体へのインタビューや郵送調査を行った。結果概要については図表4−9のとおりである。まずインタビュー先の各事例を紹介し、続いて郵送調査の結果をまとめている。さらに、これらの事例から導出できる連携・協働事業推進のための条件や留意点などを整理した。
 
(1)浦安市と明海大学の事例
ア. 明海大学の概要
 明海大学は、昭和45(1970)年に「城西歯科大学」として埼玉県板戸市で開学され、昭和63(1988)年に千葉県浦安市に「外国語学部」「経済学部」を設置したのを契機に、大学名を明海大学と変更した。当初から地域に開放された大学であることを目指し、門や柵を設けないオープンスタイルのキャンパス形態をとり、地域の人の構内通行も可能にしている。また、さまざまな国籍、年齢層の人が集い、国際的にも社会的にも開かれた大学を目指している。
 明海大学の組織の概要は、以下のとおりである。
 
図表4−1 明海大学(浦安キャンパス)の組織概要
名称 明海大学
設立 昭和45(1970)年
学部及び入学定員数 外国語学部372人 経済学部526人 不動産学部335人 歯学部120人
教員数 教育職262人 事務職他174人 医療職107人 (平成14(2002)年12月現在)
学生数 7,292人 (平成14(2002)年5月現在)
アクセス JR京葉線快速で、東京駅から約17分の新浦安駅。
資料: 明海大学「2002年度 大学概要 明海大学」、明海大学ホームページ
http://www.meikai.ac.jp/index.html、明海大学「明海大学2003」、Yahoo大学情報ステーション http://edu.yahoo.co.jp/gambare/daigaku/kantou/prv/2760/campus.htmより作成
 
イ. 浦安市の概要
 浦安市は、東京湾の奥部に位置する。東と南は東京湾に面し、西は東京都江戸川区と対峙し、北は市川市と接している。東西の距離は6.06km、南北の距離は6.23km、その面積は16.98km2である。
 浦安市の概要については、以下のとおりである。
 
図表4−2 浦安市の概要
名称 千葉県浦安市
人口 134,406人 (平成13(2001)年3月現在)
世帯数 57,076世帯 (平成12(2001)年3月現在)
市内の大学等 明海大学、順天堂医療短期大学
特色 東京都に隣接したベッドタウンであり、近年では東京ディズニーランド等により国際的な観光都市としても急発展している。
資料: 千葉県浦安市「人が輝き躍動するまち・浦安 浦安市勢要覧2000」、千葉県浦安市「浦安データガイド2000」、浦安市ホームページhttp://www.city.urayasu.chiba.jp/、「都市データパック2002年版」より作成 
 
ウ. 連携・協働事業の概要
(ア)連携・協働の経緯
 明海大学では、開学当初から地域に開かれた大学づくりを目的とし、浦安市も住民が急増する中で新しいまちづくりを進めていくため、両者の意図が一致し、大学や行政の個人を基本にまちづくりに関する連携を強化していった。
 そのような中で、平成12(2000)年9月に浦安市長と明海大学理事長とが会談し、地域の相互協力の必要性について認識を一致させ、平成12(2000)年12月に合意書調印式を行い、個々のみではなく組織としての連携・協働に取組が強化されることとなった。さらに、連携・協働事業の推進体制として、「浦安市・明海大学連絡協議会」も設置した。
 包括連携だけではなく個々の事業についても協定が結ばれ、平成14(2002)年7月15日には「明海大学浦安キャンパスメディアセンター(図書館)の市民開放事業に関する協定書」が、平成14(2002)年10月8日には、「明海大学学生の社会貢献活動の推進に関する協定書」が結ばれた。
 浦安市と明海大学とは、大学設立当初から数々の連携・協働事業を行ってきたが、協定書の締結や推進体制などの環境整備により、さらなる活動の拡大が期待されている。
 
(イ)個別事業
 具体的な連携・協働事業の内容としては、以下のとおりである。なお、事業の詳細については、本報告書資料集を参照いただきたい。(以降、他事例についても同様である。)
 
【大学と市】
・浦安キャンパスメディアセンター(図書館)の市民開放
・市事業へのボランティアの参加制度
・国際交流(留学生のホームビジット受入れ、イベント開催)
・市役所でのインターンシップ
・市職員による大学での講座に講師派遣
【大学】
・大学キャンパスの開放
・会議室等場所の提供、陸上競技大会等のためのグラウンド開放(市主催等の公的催し)
・オープンカレッジ
・出張講座
・教員の市民大学への講師派遣
 
(ウ)本連携・協働事例の特徴
 連携・協働事業が成功した要因として、市長と理事長とによるトップ同士の合意形成の影響力が大きい。市長と理事長のビジョンがそれぞれの機関に共有されたために、連携・協働事業を円滑に進めることができた。また、包括協定のみならず、個別事業についても引き続いて協定を締結しており、具体的な連携・協働に関する仕組みづくりが重なっていったことも重要な成功要因である。
 また、明海大学では、地域への開放や地域貢献を強く意識しており、学校全体が地域を意識していることで、教員や学生も連携・協働事業に参加しやすくなっている。
 さらに、浦安市の特徴として、平均所得が他の地域と比較して高いため、地域活動をするためのゆとりを持つ人が多く、地域の問題解決やイベントに積極的に関わろうとする人材が多いという点も見逃せない。
 本事例での今後の課題としては、大学施設の安全確保と意識の高い学生の保持があげられている。大学では、キャンパスを開放し多くの人が出入りするため、学生の安全確保や校内施設の破損などへの対応が問題になっている。
 浦安市では、連携推進のための仕組みを積極的に整備しているが、それだけでは学生の高い意欲を保持することは不可能であり、連携・協働事業を拡大する流れの中で、環境整備とともに優秀で積極的な学生の参加システムの組立てが重要である。







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