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 SARTの胴衣への装着方法の基本設計にあたり、5.2.2要求される性能・要目の中でSARTの装着性に関し基本的な要件を定めているが、ここで検討課題とされたSARTの形状、救命胴衣への取付け方法を検討した結果、SARTは次により装着することにした。
(1)胴衣装着用SART本体(電池及びアンテナを含む)は、胴衣の上ポケットに収納し、アンテナはポケットの上部から引き出される。図5.2−11(上図)
(2)胴衣装着用SART本体(電池を含む)は、胴衣の腹部の裏面浮力材を一部切り取って収納し、アンテナは胴衣の肩部に装着する。図5.2−11(下図)
(3)胴衣装着用SART本体(電池を含む)は、胴衣の上ポケットに収納し、アンテナは胴衣の肩部に装着する。図5.2−12
(4)携帯型SART(電池及びアンテナを含む)は、胴衣肩下部の専用ポケットに差し込まれる。図5.2−13
(5)SART本体とアンテナはフレキシブルケーブルで接続する。
(6)フレキシブルケーブルは、救命胴衣への装着性、また、作業性の観点からより柔軟性を有するものとする。
 これに加え、SART使用時の電源のON/OF操作を簡単にするため、磁力により作動するリードスイッチを内蔵させ、磁石を引き抜くことにより電源がONとなる方法を採用した。
 
 SART本体とアンテナ間を接続するには損失の少ない伝送路が必要である。9GHz帯の周波数を伝送するのに適している伝送路には、導波管・セミリジットケーブル・フレキシブルケーブルがあるが、胴衣装着用SARTの伝送路には柔軟性がより求められるのでフレキシブルケーブルを使用することとした。
 市販されているフレキシブルケーブルの中で、胴衣装着用SARTには救命胴衣への装着性、また、作業性の面から表5.2−10に示すものを使用することとした。
 表のなかで86TYPEのものをSART本体と救命胴衣の肩部に装着するアンテナ間の結合に使用する。
 なお、141TYPEはSART本体とアンテナを一体化する場合に使用することにした。
 
表5.2−10 フレキシブルケーブル特性表
  86 TYPE 141 TYPE 備考
インピーダンス 50Ω 50Ω  
減衰量(1m当たり) 3.0dB/10GHz 1.8dB/10GHz  
絶縁抵抗 108MΩ以上 108MΩ以上  
使用温度範囲 -65℃〜+200℃ -65℃〜+200℃  
最小曲げ半径 6mm曲げ1回 11mm曲げ1回  
(内側) 20mm/50回以下 40mm/70回以下  
外径寸法 2.1φ 3.45φ  
 
 これまでの実験および調査から、携帯用SARTのアンテナとして「水平−垂直合成アンテナ」の有効性が高いことが予測される。そこでアンテナを試作し、その特性を計測した。比較のためにダイポールアンテナとヘリカルアンテナも試作した。
 
 ダイポールアンテナ、ヘリカルアンテナ、水平−垂直合成アンテナについて、外観を写真5.2.−3〜5.2−5に、(注)VSWR 値および重量を表5.2−11に、アンテナパターンの測定結果を図5.2−14〜5.2−16に示す。
 
表5.2−11 各アンテナのVSWR値と重量
  ダイポールアンテナ ヘリカルアンテナ 水平−垂直合成アンテナ
VSWR値 1.4 2.3 2.4
重量 1g以下 5g 4g
 
 指向性の点では、ヘリカルアンテナと水平−垂直合成アンテナが良い結果を示しているが、高さの点では、水平−垂直合成アンテナが有効であるといえる。
 しかしいずれもVSWR 値が高い。実用化されているアンテナのVSWR 値は1.2以下程度である。試作アンテナでは2.2〜2.4に留まっており、まだ改善の余地がある。
 
(注) VSWR:Voltage Standing Wave Ratio
電圧定在波比
 伝送路においてインピーダンス不整合により反射波が発生している場合、伝送線路上の進行波電圧と反射波電圧によって生じる電圧振幅の最大値と最小値の比で、次式で表される。
VSWR=(1+Γ)/(1−Γ)
ここで Γ:電圧反射係数
反射波電圧/進行波電圧で定義される。
 例えば、50Ωの出力インピーダンスの送信機に50Ωの入力インピーダンスのアンテナを接続すれば、インピーダンスは整合しているので反射波はない。この場合、VSWR=1となる。
 
(1)ダイポールアンテナ
(2)レードームで覆った状態
写真5.2−3 試作したダイポールアンテナ
 
(1)ヘリカルアンテナ
(2)レードームで覆った状態
写真5.2−4 試作したヘリカルアンテナ
 
マイクロ波用ケーブル
写真5.2−5 試作した水平−垂直合成アンテナ
 
図5.2−14 試作したダイポールアンテナのアンテナパターン
 
図5.2−15 試作したヘリカルアンテナのアンテナパターン
 
図5.2−16 試作した水平−垂直合成アンテナのアンテナパターン
 







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