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(3)水平偏波と垂直偏波を合成した場合
 円偏波は、偏波面が回転しながら進行する電波であるから、水平偏波と垂直偏波の位相をずらして合成すればよい。
 電波の受信強度をベクトルで表すと
Er=E0+ρ・E0・e−j(φ+b) (3−5)
 水平偏波の受信強度をErHとし、ベクトルで表すと、
ErH=E0+1・E0・e−j(π+b) (3−6)
 垂直偏波の受信強度をErVとし、ベクトルで表すと、
 水平偏波と垂直偏波を合成した受信強度をErCとすると
 (3−8)式に関して、直接波と反射波の干渉による直接波との電界強度の比Fを求めると、
 従って、水平偏波と垂直偏波を合成したレーダ方程式は
となる。
 この理論値と、円偏波の実測値を図5.2−10に示す。両者の干渉パターンはおおよそ一致しているといえる。
図5.2−10 円送信水平受信の理論値と実測値
(注)干渉パターンの比較用で、理論値と実測値間の差異の補正は行っていない。
 
5.2.3.2.1 胴衣装着用SART電池の検討項目
 胴衣装着用SARTに使用する電池は、「SARTが使用される海域の水温等の環境条件に対して充分な電池容量があること」とともに、次の項目について検討した。
(1)電池交換が容易な構造であること。
(2)使用する電池は胴衣装着用SARTを普及させるために特定の電池メーカに限定されるものでなく、汎用性に富み簡単に入手可能なものであること。
(3)安価であること。
 
 現行SART電気部受発信モジュールの消費電力は次のとおりである。
 
(1) 待ち受け時 平均電池電圧5.35V平均消費電流46mA
消費電力 5.35×0.046=0.246Wh
(2) 連続送信時 平均電池電圧5.2V平均消費電流105mA
  消費電力 5.20×0.105=0.546Wh
 
 胴衣装着用SARTの消費電力量予測は表5.2−6のとおりである。
 
表5.2−6 連続送信時間4hの場合
待ち受け時間 連続送信時間 電池の所要電力量 備考
12h 4h 2.952Wh+2.184Wh=5.136Wh  
24h 4h 5.905Wh+2.184Wh=8.089Wh  
 
 汎用市販電池の特性は表5.2−7のとおりである。
 カメラ用等に一般に市販されている国産二酸化マンガンリチウム電池の特性(代表的な国内電池メーカのカタログから抜粋)
 
表5.2−7 汎用市販電池の特性
型名
JIS形式
公称電圧(V) 公称容量(mAh) 連続標準電流(mA) 連続最大電流(mA) 使用温度範囲(℃)
CR123A 同上 3 1,300〜1,400 5〜20 1500 低:-20〜-40
高:+60〜+70
2CR5 同上 6 1,300〜1,400 5〜20 1500
 
 
 電池周囲温度に対し、これら電池から取り出せる電力量は表5.2−8のとおりである。
 
表5.2−8 電池から取り出せる電力量
型名 周囲温度 備考
20℃ 0℃ -20℃
CR123A 3.3Wh 2.6Wh 2.0Wh CR123Aは終止電圧2V、2CR5は終止電圧2V、連続電流45mAとして算出
2CR5 7.2Wh 5.8Wh 4.3Wh
 
 以上の検討結果から、胴衣装着用SARTの性能要件としての連続作動時間(24h待ち受け4h作動)を満足させるためには、現状のSART電気部受発信モジュールをそのまま使用すると約8.1Whの電力量が必要であり、0℃(性能要件は−1℃)でこの電力量を満足する電池の組合せとしては、CR123Aが4個又は2CR5が2個必要となる。
 CR123Aを4個又は2CR5を2個使用すると小型軽量から大きく逸脱する結果となる。現状のSARTモジュールの24h待ち受けに必要な電力量の5.9Whの中で、受信状態を示す発光ダイオードの点灯のために必要な電力量は1.9Whを占めているが、現状の連続点灯を間欠点灯に変更して電力量を削減することが可能である。
 また、現状のSARTモジュールの電池電圧を安定化するためのDC/DCコンバータの効率は約75%であるが、これの効率を上げることも可能である。
 これらの検討を重ねた結果、胴衣装着用SARTの電池は2CR5(6V)を1個使用するか、またはCR123A(3V)を2個直列に接続して使用することにしたが、最終的には、試作されるSARTの全体構造を決めるうえで、コンビニエンスストア等でも入手が容易なCR123Aを2個使用することに決定した。
 
 救命胴衣装着用SARTで使用する電池と同様に、
(1)電池交換が簡単にできること
(2)市販されていること
(3)安価であること
が、低廉な携帯型SARTを普及させることの要件と考えている。
 
 携帯型SARTのマイクロ波モジュール(受信用ビデオアンプ内蔵型)は、送信時に約2mA、受信時には約1.6mA(ともに電源電圧は6V)である。
このほかに制御回路の消費電流が加わるが、C-MOSの集積回路を使用した低消費電力回路では約10mA程度である。つまり、受信待ち受け時、連続送信時にも約12mAの電力を消費することになる。
 救命胴衣装着用のSARTに使用するCR123Aを2個直列とする方法で十分すぎる程である。もっと小型の電池で24h待ち受け、4h連続送信が可能となるが、CR 123Aは大量生産されており、価格が極めて低廉である利点があり、今後は、電池の価格およびサイズや重量との総合的な評価で電池を検討することになろう。ここではCR 123Aを2個直列にした電源で検討することとした。
 
 市販されている救命胴衣は、用途により数種の種類があるが、一般的に普及している製品としては、固型式の作業用救命衣(小型船舶用救命胴衣兼用)の背抜き型と膨張式がある。
 この2種類の救命衣に装着する方法については、2形式のSARTについて検討し、SART取付けの一例は、図5.2−11〜図5.2−13に示す。
 
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図5.2−11 胴衣装着用SART取付けの一例
作業用救命衣(背抜き、固型式)
 
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図5.2−12 胴衣装着用SART 取付けの一例
作業用救命胴衣(膨張式)
 
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図5.2−13 携帯型SART取付けの一例
作業用救命衣(背抜き、固型式)







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