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5.2.4.2 実験水槽における性能特性の計測結果
 5.2.3.1.1項と同様の計測方法で、水平−垂直合成アンテナの性能特性を計測した。2本試作し、それぞれについて、アンテナのフィーダ側を受信アンテナ方向に向けた場合と、グランド側を向けた場合の2方向について計測した。2本のアンテナをそれぞれHV1、HV2とする。
 結果を図5.2−17および図5.2−18に示す。比較のために計測した水平偏波ホーンアンテナによる結果と重ねて表示している。水平−垂直合成アンテナの結果は、水平偏波ホーンアンテナの場合に比べて、各Null点がわずかに近かった。またその点での受信強度の減少は水平偏波ホーンアンテナの場合に比べて同等か、場所によっては大きく減少する場合もあった。今回の計測では当初予想したような、Null点が水平偏波の場合に比べて遠方にずれる現象や、Null点での受信強度の減少が少ないという結果は明確には得られなかった。
 
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図5.2−17 試作した水平−垂直合成アンテナ(HVI)の計測結果
 
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図5.2−18 試作した水平−垂直合成アンテナ(HV2)の計測結果
 
 試作したアンテナのVSWR値は2.2〜2.4と高い値であったが、調整次第で改善できる余地が大きい。今後の改良次第で良い結果が得られる見込みである。
アンテナ試験結果
 試作した円偏波アンテナの中でヘリカルアンテナ及び「水平−垂直合成アンテナ」のアンテナインピーダンスと人体がアンテナインピーダンスに与える影響を試験した。SARTモジュールの入出力インピーダンスは50Ωで設計してあり、50Ωから乖離すると等価等方輻射電力や掃引周波数に影響を与える。
 
(1)アンテナインピーダンス
 測定結果を図5.2−18に示す。上の図がヘリカルアンテナで下の図が「水平−垂直合成アンテナ」の測定結果である。同じ条件でインピーダンスとSWRを同時に測定した。図5.2−19の上部がスミスチャート上のインピーダンスを示し、中央が50オームで左端が0オーム(短絡)、右端が無限大(解放)、また、上半分が誘導性(インダクタンス)、下半分が容量性(キャパシタンス)のインピーダンスになることを表す。
 図5.2−19の下部はSWRの測定結果を示し、縦軸の一番下の線がSWR1で50オームになっていることを表し、下から2番目の線がSWR2を表す。
 測定した周波数範囲は9.15GHz〜9.6GHzで図のMARKER1が9.2GHz、MARKER2が9.35GHz、MARKER3が9.5GHzの測定値を示す。
 測定結果はヘリカルアンテナ・「水平−垂直合成アンテナ」ともに現状のSARTモジュールと組み合わせて使用することに問題ないことを示している。
 
(2)人体の影響
 ヘリカルアンテナと「水平−垂直合成アンテナ」に長さ22cmのTYPE86のミニフレキシブルケーブルを接続して、アンテナが人体に密着した場合のインピーダンス変化を測定した。
 アンテナは救命胴衣の肩部に取り付けるので、アンテナを人体の肩部に沿わせた場合のインピーダンスを測定した。測定周波数等の条件は前項と同じである。
 測定結果を図5.2−20に示す。
 測定結果は前項の測定結果と比較して大きな相違はなく、肩部に装着してもインピーダンスの変化が少ない結果となった。
 アンテナを人体への近くに装着した場合には、インピーダンス以上にアンテナの指向性が問題となるが、これは、実海面試験用に試用する人間の頭部を模したダミーより大型の電波暗室で測定した。
 この結果は、図5.2−21〜図5.2−25に示すとおり、SARTアンテナの人間頭部による遮蔽の影響は、各アンテナについて、水平、又は垂直偏波の受信方式であっても、アンテナが頭部の影になる方位(0度)±30度は明らかに受信特性は劣るが、これを外れると遮蔽の影響は無く、180度の方位では、頭部が反射板となって受信特性が大きいことを示している。
 これは、SARTを救命胴衣へ装着するにあたって人間頭部の遮蔽の影響を十分考慮しておく必要があることを示している。
 なお、人体への影響の中で、電磁波による医学的な影響を考慮しなければならないが、この件については、国内関係事業者の調査、研究の成果に期待したい。







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