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5.1.6 考察と提言
(注1)IMOの設計設備小委員会(DE)では、RoRo旅客船救命いかだにSARTをどうのうように搭載するかについて審議が行われ、現在、2002年最終化を目指し搭載要件が議論されている。
 これを踏まえて、本調査研究では、SARTのより安全・確実な救命いかだへの搭載方法を検討した。
 この中では、コンテナ内にSARTを収納しておき、遭難者により取り付け・作動させる方法もあるが、これは、海難時の厳しい環境条件を考慮した場合、遭難者自らが同様の作業を行うことは極めて困難、また不確実であることを勘案し、より安全、確実なSARTの搭載方法としてSART主要部を救命いかだ天幕に恒常的に装着し、救命いかだの投下と同時にSARTが自動作動する方策を確立することが出来た。
(注2)また、この中で、現行の水平偏波方式のSARTに比べ、捜索船のレーダ等からの探知距離を相当に向上させることができる円偏波SARTを含めたことは、SARTの安全・確実な搭載方策に加え、遭難者の迅速な救助活動に寄与することができるものである。
 これらを踏まえ、2003年1月開催のCOMSAR7にSART性能要件の見直しに関する提言を行った。
 
(注1)
 RORO旅客船救命いかだのSART搭載要件に関するIMO第45回設計設備小委員会(DE45、2002年3月)及びIMO第75回海上安全委員会(MSC75、2002年5月)における審議の動向、また、結果の概要は次のとおりである。なお、巻末に関連資料を添付した。
 
IMOにおけるRORO旅客船の救命いかだに対するSARTの搭載要件について
 RORO旅客船の救命いかだに対する低出力ホーミング装置の搭載については、RORO旅客船の安全に関する審議が開始された当初(1995年)のSOLAS/CONF.3/46 Resolution 6にその方向性が規定されている。その後、低出力ホーミング装置の性能要件についてはCOMSAR小委員会で検討され、SART(A.802(19)に性能要件が規定されてる)が当該装置として採用された。
 SARTの救命いかだに対する搭載比率、搭載方法についてはDE45小委員会(2002年3月)から審議が開始された。
 搭載比率については、オーストラリアからの25人用以上の各いかだにSARTを搭載するとの提案に対し、すべての救命いかだに搭載すべきとの独、ポーランド、オランダ等の意見、また、全てのいかだではなく、何台かおきでもよいとする英国等、必ずしも意見の一致をみなかったが、すべてのいかだに搭載するとの意見が大勢を占めたため、その案文で原案が作られた。
 作動方法については、乗艇員の負担を減らすため、いかだの膨脹と共に自動作動すべきとの意見と、無人のいかだからの誤発信をなくすために手動作動にすべきとの意見が対立したが、手動作動の支持が大勢を占めた。その結果、SOLASIII章26規則改正案(DE45/27ANNEX11)が作成され、MSC75(2002年5月)でさらに審議されることになった。
 MSC75における審議では、すべての救命いかだにSARTを搭載することは過大ではないかとのフィンランド、英国等の意見が強く、その結果、いかだ4台に1個のSART搭載との改正案が作成された。(MSC75/24/Add.1 ANNEX 27)
 これらについてMSC76(2002年12月)において採択された。
 
(注2)
 円偏波SARTの有効性に関するIMOへの提言(SART性能要件の見直し)を行い、審議結果の概要は次のとおりである。なお、巻末に関連資料を添付した。
 
(COMSAR7での審議の概要)
海上無線通信システム及び技術の開発(議題11)
 決議A.802(19)レーダートランスポンダー(SART)の性能基準の見直しについて、我が国から提案し、審議がなされた。性能基準の改正は新規作業項目でありMSCでの承認を得ることが必要であること、ITU規則でも水平偏波を規定しており、これを変更する必要があること、あらゆる環境下(波浪条件等)での試験を行う必要があることの指摘がなされ、新規事項と扱われることとなった。
 MSCへの作業計画の提案は、MSC78(2004年春)への提出となるが、本件提案の実現に当たっては今後継続して提案の説明を各国に対し行っていくことが必要である。
 なお、今会合において、我が国より、本提案に至るまでの実験の内容・結果のプレゼンテーションを行い、さらに実験に使用した実機及び写真パネル展示を行なったところ、会合参加者は大いに興味を示していた。
 
 以上、救命いかだ艤装用小型軽量SARTの調査研究報告書の要点を記述したが、詳しくは、平成13年度「膨脹式救命いかだ及び救命胴衣艤装用の小型軽量SARTに関する調査研究中間報告書(平成14年3月)」を参照されたい。







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