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5.1.4.2 投下試験結果(試験日:平成13年11月20日及び11月21日)
 試験当日の天候は晴れ、風は無風ないし微風であった。
 IMOの規定に従い、高さ24mから投下したが、着水後の状態は正常であり、水面に30分放置後の救命いかだ膨脹状態もすべて正常であった。
 投下した救命いかだの着水する瞬間を写真5.1.4−2及び5.1.4−3に示す。
 
写真5.1.4−2 T社いかだの水面投下試験(円偏波SART)
 
 
写真5.1.4−3 T社いかだの水面投下試験(水平偏波SART)
 
(1)SART作動状況及び損傷等の異状について
 水面において膨脹後、いずれの場合もSARTは天幕に正常に固定され、天幕のたるみにより10〜20度傾斜する場合もあるが、ほぼ垂直を保持していた。(いかだ膨脹後のSART取り付け状態を写真5.2.4−14に示す。)
 SARTはいかだの自動膨脹と共に自動作動を開始して待ち受け状態になり、SARTテスターにより作動を確認したところ、正常に応答した。
 その後、試験品及び救命いかだを水面から回収してSART及び救命いかだの損傷等の異状の有無を目視により調査したが、いずれの場合も、SART、救命いかだ本体及び艤装品に損傷は認められなかった。
 SARTの固定にプラスチックフランジ(径100mm及び120mm)を使用した場合及びプラスチックフランジを使用せず、ゴム布製袋で固定した場合の両者ともに外観状況に差はなく、いずれの方式も問題がないことが確認された。
 SART本体及びバッテリーケース内に数ccの浸水が見られたが、これは、本体と電源部を接続する電源コード引き込み部の防水が不完全であったためと考えられ、パッキン等の使用により、対処可能であり問題はないと考える。また、救命いかだ収納用コンテナ(FRP製)にひび割れ(特に着水面)が発生したが、これは通常の投下試験時と同様の程度であり、SARTに損傷を与えることはなかった。
 各投下試験時の損傷等の状況を表5.1.4−1に示す。
 
表5.1.4−1 投下試験後結果
膨脹式救命いかだ SART SARTの固定方法 作動状況、損傷等
      SART 救命いかだ
自動復原型救命いかだFRN−R25型(F社) 円偏波アンテナ 天幕頂部にゴムフランジ及び収納袋で固定 膨脹時に自動作動を開始した。正常に応答した。 正常に膨脹し、本体、艤装品に異状はなかった。 コンテナにびび割れ発生。
  水平偏波アンテナ 天幕頂部にゴムフランジ及び収納袋で固定 膨脹時に自動作動を開始した。正常に応答した。 正常に膨脹し、本体、艤装品に異状はなかった。コンテナにびび割れ発生。
自動復原型救命いかだTRS−25SR型(T社) 円偏波式アンテナ 天幕頂部にφ120mmプラスチックフランジ及びマジックテープで固定 膨脹時に自動作動を開始した。正常に応答した。 正常に膨脹し、本体、艤装品に異状はなかった。コンテナにびび割れ発生。
  水平偏波アンテナ 天幕頂部にφ100mmプラスチックフランジ及びマジックテープで固定 膨脹時に自動作動を開始した。 正常に応答した。 正常に膨脹し、本体、艤装品に異状はなかった。 コンテナにびび割れ発生。
 
(2)衝撃力について
 SART本体に取り付けた加速度ピックアップによる衝撃力の測定は、最初の水面投下時にリード線が破損したため2回目以降のデータ取得ができなかった。
 F社製救命いかだに取り付けた円偏波式SARTの場合の衝撃力測定結果を図5.1.4−4に示す。水面着水時にX、Y、Z軸共に100Gを越える衝撃力を受け、X軸最大値で約230Gを記録した。
 SART本体が実際に受けた衝撃力は3軸をベクトル合成することにより得られ、この場合、最大約250G(作用時間約20ms)となる。
 各投下試験における簡易ショックセンサーによる衝撃力測定結果を図5.1.4−4に示す。
 
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図5.1.4−4 加速度ピックアップによる衝撃測定結果
(FRN−R25、円偏波SART)
 
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図5.1.4−4 簡易ショックセンサー衝撃値
 
 簡易ショックセンサーは、感圧紙に記録されたマークの大きさにより衝撃力を読みとるものであり、構造上、受けた作用時間の大小によりマークの大きさが異なる。この場合、加速度ピックアップにより得られた作用時間20ms程度が、他の部分にも作用したと仮定し衝撃力に換算した。
 ゴム布等の柔軟な物体に貼り付けて測定したためと考えられるが、結果に大きなバラツキが生じていて、SARTの固定方法(プラスチックフランジの有無等)の差等についての明確な傾向を掴むことはできないが、SART付近及びコンテナにおいて、センサーの容量を超える80G以上の衝撃力が記録された。
 
 2種類のいかだ艤装用SARTを試作し、膨脹式救命いかだ(以下「いかだ」という。)に搭載した状態で水面落下試験を実施した。
 基本構造、自動作動、いかだへの固定方法等様々な側面より検討すると、各要件に対して大きな問題はなく、総合的に満足のいく結果が得られたと考える。
 各評価については以下のとおり。
 
 今回、SARTをいかだに艤装するにあたり、耐衝撃性や収納時の折りたたみ易さ等を考慮して、本体(アンテナ及びモジュール部)と電源部を分離したが、分離することで付加された電源コードの損傷や絡み等は発生していない。また、いかだの折りたたみ収納も通常の方法(SARTを艤装していない状態)で可能であったことから、いかだ艤装用SARTの基本構造に基本的に問題がないことが確認された。
 
5.1.5.2 自動作動について
 確実な作動や、他の索等の絡みを排除するために、電源スイッチは、本体ではなく電源部底部に引き抜きスイッチを付けたが、救命いかだの自動膨脹に伴い、総ての投下試験において、正常に作動することが確認された。救命いかだの整備や、コンテナに収納中の誤作動を防止するため、スイッチ引き抜き力を現在使用しているキャノピー灯の引き抜き力より増加し、2,600g及び2,800gの2段階で試作されたものを試験に使用したが、これらの引き抜き力で実行上問題のないことが確認された。
 
5.1.5.3 救命いかだへの取り付け方法について
 SARTの救命いかだへの取り付け方法については、いかだ膨脹時のSARTアンテナ位置や姿勢の安定性、水面投下時の耐衝撃性、折りたたみ収納時の作業性、定期整備時の取り外し易さ等、様々な側面からの検討が必要であった。
 最終的に、前述の基本設計を基にして、天幕中央支柱部にプラスチックフランジ(径100mm又は120mm)又はゴム布製袋使用の3方式について試験を実施したが、姿勢の保持性、耐衝撃性等において、特に差のない結果が得られたため、いずれの方式も採用可能であると考えられる。
 また、SART艤装に伴う、いかだの折りたたみ方法についても特に変更の必要がないことが確認された。







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